Привет с России

【音の無い世界 その7】




2005-07-20 19:49:19


この街で出歩く度に聾者に出会い、手話に関する情報を求めて1年以上が経過(もっと正確に言うと2年近く経った頃)、友人達との集まりに行った際に突然Ю者の目の前に現れたイワン。彼は私が手話に関する情報を求めており、聾者と話をしたがっているとどこからか聞いたようだった。 この国の人々はお喋りが大好きなので、なんでもすぐに口コミで広まってしまう。秘密はヒミツでないのだ。童話で「王様の耳はロバの耳」という話があったが、この国の民の場合は穴を1つ掘るだけでは足りないだろう。各自ドラム缶数本を準備してしっかり封印して地中深くに埋めておかないとヒミツの話を秘密として留めておく事なんて出来ないのではなかろうか。 だからЮ者の事も少しずつ時間をかけて友人からそのまた友人へと口伝えに広がり、ついにはイワンの元へも情報が伝わったようだった。

イワンに我々の住む家の地図と住所を書いたメモを渡し、一旦は友人宅から自宅へと帰った。帰宅後、ヴィクトリヤと先程のイワンとの出会いについて話していると暫くして呼び鈴がなった。



「Кто там ? (クトー タム) どなた?」


玄関の向こう側に向かってそう呼びかけたが何の返答も無い。
なんだろう???
覗き穴から見ると誰かが立っている。ドアを開けてみよう。


イワンだった。


彼は私と別れた後、自宅へ戻ってすぐに家族に話し、通訳者として健聴者の娘アーニャ(当時小学生)を連れてやって来たのだった。これには私とヴィクトリヤは驚いた。別な機会に会うという意味でメモを渡したつもりだったからだ。これは健聴者と聾者の会話において度々生じる意味の取り違いによるものだから、仕方が無い。ヴィクトリヤは突然の訪問客に少々戸惑っていたが、客をこのまま玄関に立たせておく訳にはいかない、仕方がないから中へ案内しようという事になった。


リヴィングへと彼らを案内し、4人で座ってみた。




シーーーーーン・・・・・・





さすがにヴィクトリヤはその沈黙に耐えられなかった。



ヴィクトリヤ:「Ю者、何かイワンに言いなさいよ。あなた彼に何か聞きたい事とかあるでしょう? ほら、ほら・・・」

Ю者:「えっ、ど、ど、ど、どうしよう。何を聞けば良いかナァ。目の前にしたら何を聞けばいいか分かんなくなっちゃったよ(-_-;)」



無言で私達の顔をジィーーーーーッと見つめるイワンにとうとうギヴアップしたヴィクトリヤはイワンにではなく、側にちょこんと座っている健聴者のアーニャに話しかける事にした。学年や家族構成などなど・・・。アーニャは最初とても大人しく、蚊の鳴くような小さな声で受け答えしていたが、暫くするとヴィクトリヤと打ち解け、彼女が家の中に飾っている絵や本を見せてもらって遊び始めた。


一方Ю者とイワンは・・・


さすがにこのまま沈黙を続けていたのではいけない。お見合いみたいじゃないか。えぇーぃっ、ここは気合だーっ!!(意味不明)頭突きをする牛の如くЮ者は体当たりインタビューにも似たイワンとの会話に挑戦した。彼は私の日本手話など解るわけがない。明らかに私の話す口の動きを見て、何を言っているのか察知して、応答していた。そしてその際に私の質問で使われた単語を手話で表し、自分の返答もまた手話で示してくれた。それでЮ者はそれらをすぐさまノートに記録していった。実はイワン、聾学校時代に読唇術と健聴者の発声をしっかり叩き込まれていたので、健聴者とも会話が可能なのだ。ただし、彼は聾者なので自分の発音をチェックできない。だからSとShの違い、LとRの違い、アクセントの無いO(アと発音されるルールがある)とアクセントのあるO(この場合はオーと発音される)の違いなど正確に発音出来ない為、かなり聞き取りにくい。だから健聴者が彼の発言を聞いていると段々しかめっ面になってしまうのだ。だがそれでも他の聾者に比べればイワンは優秀な方だった。長年地元のろうあ協会の書記を務めてきたのだから。


この日の訪問で、イワンはЮ者に正確な指文字を教えてくれた。聾学校を訪問後、校長から頂いた教科書の指文字一覧表を自分なりに解釈して覚えようとしていた私の指文字はやはり間違いが多かった。イワンはさらにこの絵の描き方が分かりにくいから健聴者が迷うのも当然だとも言っていた。・・・なるほど。



彼はろうあ協会の書記だったので、この町に住む殆どの聾者の所在を把握している。聾者同士の独自のネットワークがあるので、その辺の繋がりについて聞くと結構面白いものだ。イワンはЮ者にこれから少しずつこの街の聾者が使っている手話を教えてあげると約束してくれた。そしてその為には語彙を増やす必要があるので、次回良い物を持ってきてあげようと言ってこの日はアーニャと帰宅した。



長年この大きな都市に住んでいながら一度も聾者と接した事がなかったヴィクトリヤはアーニャととても仲良くなり、またイワンともすぐに打ち解けた。彼女にとって手話を覚えるのは難しそうだったが、口を大きく開けてはっきりと話せばイワンがそれを読み取って返答してくれるので安心したようだった。この日からЮ者とヴィクトリヤの予定表に手話のレッスンという予定が新たに加えられた為、その後更に忙しいスケジュールをこなす事になる・・・。



・・・続く。


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