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月いちさん
himekyonさん
村上春樹を読むのは久しぶりだったけど、結構おもしろかった。
村上春樹はいうまでもなく、大人気作家で、
大人気作家の常であるように、「村上ワールド」というものがしっかりある。読者は主人公に自分を投影して、その世界に棲むことにすごく快感を覚えられるしくみになっている。
その期待はめったに裏切られない。
これは音楽で言うと松任谷由実に似ている。
違う作品から同じ快感を得ることができるんだ。
逆にいうと冒険は少ない。
どの作品も必ず金太郎アメのような共通点があると思う。
たとえば。
ほとんどの場合「僕」が主人公で、そのキャラも一緒だ。
「僕」はきまってちょっと風変わりで、賢い。
全ての人に理解はされる男じゃない。
でも才能ある人物や、美しい女性にはなぜかモテル。
非常にウイットにとんだおしゃれな会話が得意だ。
めったに感情をみださなくって、さりげなく優しい。
そしてそんな僕は、あるきっかけで、とても不思議な冒険に出かける事になるのだ。
時代の設定もほぼ共通で、ベースは1970~1980年代前半ぐらいだ。
だからパソコンや携帯電話、ましてやmixiやi-podなどはぜったい出てこない。
登場する車やバイクは古臭いし、音楽はクラッシクかせいぜいジャスだ。でもこいつらがなぜかとてもオシャレに聞こえる。
そして最大の特徴。
無駄にセックスシーンが多い(笑)。
しかも妙に投げやりなセックスシーンが多い。
「そして荷造りをしたその後で、僕らはセックスをした。」
???そんだけか????
僕はこのセックスシーンはあまりスキじゃない。
何でここでセックスシーンが必要なのかなぁ?
(どうせなら、もっとしつこく書けよ・・・)
読んでるほうは中途半端に心が乱れるじゃん(笑)。
70年代というのは、こんなに冷めてセックスできたかなぁ?と不思議に思うくらいだ。
一時期、僕にとってこういうワンパターンがとても気持ちよかったけれど、ある日突然飽きたりもした。
それはたいてい、自分が「僕」になりきれないと気づいたからだ。
「すべての人に受け入れられはしない」男にはなれるけど、
「才能ある人や美人にもてる」男になんかなれないからだ。
そんなわけで、ここ数年読んでいなかった。
「海辺のカフカ」も上記の大半があてはまる小説だ。
「ライ麦畑でつかまえて」に出てきそうな僕の話と、猫と話せる不思議な能力を持つ「ナカタ」さんの話の2本立てでストーリーは展開していく。
この一見無関係な2つのストーリーがだんだん繋がっていくところがおもしろい。この2元構成の展開は「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」でも見事だったけれど、今回も結構よくできていると思う。
「ナカタ」さんの話はすべて「・・・した。」と過去形で書いてあるのに対し、「僕」の話は「・・・する」という現在形で書いてある。そうすることによって不思議な不安定感が行間に漂ってくるのが気持ちよかった。
まあ、「羊をめぐる冒険」や「ダンス・ダンス・ダンス」ほど引き込まれる作品ではないけれど、なかなかよかったんじゃないだろうか。
だって、昔の村上春樹をもう一度読見直し、もいちど「村上ワールド」に溺れてみようかな、という気持ちになったのだから。