華の世界

華の世界

第六章(1)

振り向けば夕暮れ

第六章:四年前

__ 一月、ダイナーの誕生日だった。でも、僕は香港にいるから、祝いができない。
__ 国際電話をかけることにした。
__ ダイナーの反応は激しかった。彼女の声から分かる。
__ 「ごめん、プレゼントがなくて」と僕は言った。
__ 「いいの。この電話がいいです。ありがとう」
__ 「僕、一ヶ月後戻るから」
__ この時、男の声が聞こえた「ダイナー、写真撮るぞ、早く来い」
__ ダイナーは「電話代が高いよ。あなたが戻った時、まだ話しましょう」と言った。
__ 僕は電話を切った。
__ さっきの声、誰?
__ 彼女の父親?それとも、ほかの人?
__ 考えすぎだよ。たとえ彼女の新しい恋人であっても、僕は何もできない。
__ 僕は何も考えないことにした。

__ 二月、僕はまたオーストラリアに行った。
__ 今年は最後の年だ。年末の試験が終わったら、三年間の大学生活も終わる。
__ 寮はもう一度配置された。僕は寮の大門に着いた時、永華が見えた!
__ 「お前か!」
__ 永華は笑った「縁があるね。また一緒だぞ」
__ 「サイアク」
__ 「なんだ?この反応は?」
__ 「もう一年間一緒に住んでいたじゃん?ふざけるに決まっているだろう」
__ 「それより、正雄と家偉は?」
__ 「僕よりさきに着いたじゃん?僕に聞いても分からない」
__ 「また一緒ならいいな」
__ 「でも、同意しない人がいる」
__ 「誰?」
__ 「麗姫」
__ 「あっ、もう卒業したね。今韓国に?」
__ 「そうだと思う」
__ 永華は「チャンスがあったら、あそこに行きたいね」と言った。
__ 「麗姫に会うため?」
__ 「それもあるけど、一度行ってみたいから」
__ この時、慣れた声が聞こえた「おい!何やってんだ?」
__ 正雄だった!
__ 「またお前らか?」
__ 永華は「いつ来た?」と聞いた。
__ 「着いたばかりだよ」
__ 僕は「どこに住む?」と聞いた。
__ 正雄はため息をついた。
__ 永華は聞いた「なんだ?まさか女五人と一緒に住む?それはいいよ。まさか全員ブス・・・」
__ 「黙れ!」と正雄は言った。
__ 僕は「まさか全員ブスより悪い状況か?」と聞いた。
__ 「そうだ」
__ 永華は「じゃ、どんな状況?」と聞いた。
__ 正雄は僕の後ろにある寮を指して「そこ」
__ 僕と永華は一緒に「またここ?」と言った。
__ 正雄は頷いた「またお前らと一緒だ。本当にサイアクだ」
__ 僕は「お互いさま」と笑った。
__ 永華は「早く入ろうよ。ここ暑い」と言った。
__ 僕たちは寮に入った。永華は「兄弟は?」と正雄に聞いた。
__ 正雄は「僕には兄弟がないよ」と言った。
__ 「家偉よ。いつも一緒じゃない?」
__ 「あいつか?あいつはカノジョとアツアツだから、僕は敬遠している」
__ 「そうだったら、お前が先に来たんだ」
__ 「そうだ。あいつは明日来るって言っていた」
__ 永華は「またここに住むかな・・・」と言った。
__ 僕が一番気になるのはもちろん家偉じゃなくて、ダイナーだ。
__ 彼女は僕と同じ寮に住むかな・・・

__ 家偉は翌日着いた。僕たちの思うとおり、同じ寮に配置された。
__ 「学校の人もけっこう怠けているね。完全に去年と同じだ。違うのは第四棟から第五棟に移っただけだ」と僕は言った。
__ 家偉は「でも、麗姫はもう卒業した。代わりに誰が来る?」と言った。
__ 「事務所に聞けば?」と永華は言った。
__ 正雄は「また賭けるか?」と聞いた。
__ 「何を?男か女か?」
__ 家偉は「今回はやめよう」と言った。
__ 永華は「そうだよ。どんなに人であっても、これからの一年間、ずっと一緒に住んでいるから」と言った。
__ こいつ、変わったな。
__ 五人目は女だった。しかも、僕の知り合いだった!
__ 一年生の時、同じ寮に住んでいたインドの女だった!
__ 名前は何だっけ?インド人の名前は覚えにくいから、ちょっと思い出せない。
__ 彼女は僕に「偶然ですね!」と言った。
__ あいさつした後、彼女は部屋に入った。
__ 永華は「最後の一人は、ダイナーかな?」と言った。
__ 「ダイナーじゃなかったら、ある人は怒るよ」と家偉は言った。
__ 僕のことを言っているんだ。でも、これは事実だ。
__ 僕はますます緊張している。
__ もちろん、たとえダイナーがほかの寮に住んでいても、僕は彼女を訪ねることができる。でも、一緒のほうが便利だ。
__ ダイナーはやっと戻ってきた。しかも、僕たちと同じ寮に住むことになっている。本当にほっとした。
__ 僕は彼女を抱きしめた。彼女はぜんぜん変わっていない。相変わらずきれいだ。
__ 「会いたかったよ」と僕は言った。
__ 「あたしも」
__ 正雄は「おい、抱きしめるのはあとにしろよ」と言った。
__ 僕は「行こう」と言った。
__ ダイナーの部屋は僕の向かい側だ。ドアを開ければお互いに見える。
__ 「羨ましいな」と永華は言った。
__ ダイナーは「みんなも一緒ね!」と言った。
__ 家偉は「本当によかった」と言った。

__ ダイナーが着いた後、新しい学期も始まった。
__ 今回、小説をあまり持って来なかった。香港へ帰る時、荷物の重さを考えなきゃ。
__ ダイナーは僕の本棚を見て「全部読んだことあるわ」
__ 「新しい本を買ってない?」
__ 「あるよ。中華街で何冊買ってきた。でも、家に置いたわ」
__ ダイナーは本棚に並んでいる本を指して「あたし、これが好きだ」
__ 「あげる」
__ 「本当?」
__ 香港まで持って帰るなら、ダイナーにあげたほうがいいかもしれない。
__ 「好きだったら、全部持って行ってもいいよ」
__ 「なんか悪いよ」
__ 僕は首を振った「いいえ。荷物が重いから」
__ 「そうね。もうすぐ別れるね」
__ 「まだ三月じゃん。時間がたっぷりあるよ」
__ ダイナーは黙った。
__ このような分かっている別れは一番辛いんだ。
__ それと比べると、紫華のほうがさっぱりだった。

__ 今年、ダイナーの一番変わったことは、いつも週末は家に帰ることだ。
__ 金曜日に寮を出て、日曜日に戻る。
__ 僕は「去年、君はめったに家に帰らなかったな」と言った。
__ 「ええ、お父さんにたまには家に帰れと言われたから」
__ 「お父さんは僕のこと、知っている?」
__ ダイナーは首を振った「いいえ。話していない」
__ 「週末に、君はいないから、僕はとても退屈だ」
__ 「ワーレン、あたし・・・」
__ 僕は彼女の頬を軽く撫でた「冗談よ。気にするな」
__ 「七月の時、あたし、家に帰らない。二週間ずっとあなたと一緒にいる」
__ 「本当?」
__ 「本気ですよ」
__ ダイナーはいつも帰宅するおかげで、永華たちはよく彼女に中華料理を買ってくると頼んでいる。
__ もちろん僕も。
__ 六月、試験が来た。ダイナーは帰宅する回数を減らした。寮で勉強している。
__ 寮の中に、ダイナーと永華のほか、みんな三年生だ。あのインドの女の子も三年生だと思う。
__ 三年生の試験は前のより少しきつい。失敗は許せないから。このせいで、夜なかなか寝られない。
__ 今学期には、規模の大きいレポートをしなければならないことになっている。
__ このレポートを完成するには、二週間もかかる。ちょうど七月の休みの期間だ。
__ ダイナーはがっかりした「そうだったら、どこへも行けないじゃない?」
__ 「ごめん。どんなに遠くても、シドニーが限界だ」
__ 「ま、いいわ。一緒にシドニーで遊んだことがないから」
__ そうね。僕たちはシドニーへ行ったことがあるが、一緒に行くことはまだない。
__ 僕たちは電車でシドニーに行った。
__ 「まず食事。お腹が空いた」とダイナーは言った。
__ 「また麺か?」
__ 「もちろん」
__ 店を見つけて、椅子に座って、ダイナーはすぐ「餃子と太い麺」と注文した。そして、僕に「あなたは?」と聞いた。
__ 僕は彼女の心を読んだ「じゃ餃子を一碗ください」
__ 僕たち、互いの好物を注文した。
__ 食事後、僕たちはシドニーの町を散歩した。
__ 最初行ったのはシドニータワーだった。
__ 高いところからシドニーの景色を見下ろすと、気持ちがいい。
__ ダイナーは大きなガラス窓にもたれて「もしあたしが落ちたら、あなたどうする?」と聞いた。
__ 僕は彼女の腰を抱いて「すぐ救うに決まっているだろう」
__ 「飛べる?」
__ 「いいえ」
__ 「じゃ、どうやって救ってくれる?」
__ 僕は「君と一緒にいられるなら、どこでも行くから」と言った。
__ ダイナーの頬は赤くなった。僕を押そうとした。
__ 僕は彼女の腰を抱いているから、二人とも転ぶところだった。
__ 「幸い、僕たちはタワーの中にいる」と僕は言った。
__ 「あなたのせいよ」
__ 僕は遠くのハーバーブリッジを指して「あそこへ行こう」
__ 僕たちは大橋に着いた。
__ ダイナーは「頂上へ行こう」と言った。
__ 僕は彼女をひいた「階段二百もあるよ!」
__ ダイナーは「だめなの?」と言ったとたん、一歩目を踏み出した。
__ 僕はしかたなく、彼女の後ろに従った。
__ さすが長い階段だった。僕たちは喘いでいた。
__ 「来なければよかったのに」と僕は言った。
__ 「じゃ、あなた降りて」
__ 僕は彼女の手を握って「さあ、一緒に行こう。きっと登れるよ」
__ 僕たちはやっと頂上まで登った。
__ 「疲れた」とダイナーは言った。「どうしてエレベーターがないの?」
__ 「政府に聞けよ。きっとお金が足りなかったから」
__ 大橋の頂上から見下ろすと、海が見える。
__ ダイナーはちょっと震えた。
__ 「怖い?」
__ 「ここには窓がない。しかも風が強い」
__ 「初めて登った?」
__ 「いいえ。何年前登ったことがある。でも、はっきり覚えていない」
__ 僕は彼女を抱いた「大丈夫だ。僕がいるから」
__ 「ね、マフラーは?」
__ 「旅館に置いた。持って来なかった」
__ 「寒くなった」
__ 「帰ろう」
__ 僕たちは階段を降りて、一番下に戻った。
__ ハーバーブリッジのそばはオペラハウスだ。
__ ダイナーはあの変わった形の建物を指して「見て、汚い」
__ 白い壁には、所々に黒い染みがついている。
__ 「最近、大雨がないから」と僕は言った。
__ 「あっ、忘れていた!」とダイナーは突然言った。
__ 「何を?」
__ 「写真、まだ撮っていないよ」
__ 「でも、ここは近すぎる。効果はあまり良くなさそうだ」
__ 「じゃ向こうの公園へ行こう」
__ 公園から見れば、オペラハウスはちょうどハーバーブリッジのそばにある。「葉書の写真はここから撮るにちがいない」と僕は言った。
__ 僕は写真を何枚撮った。
__ 「卒業した後、モデルでもなれば?」
__ 「誰が雇うの?」
__ 「誰が君を拒んだら、目が悪い人だ」
__ ダイナーは「一緒に撮られたことがない」と言った。
__ 僕は通行人に頼んで、二人の写真を撮ってくれた。
__ ダイナーは「さっきの人、手が震えたわ」と言った。
__ 「君の顔を見ると、誰だってコントロールできない」
__ 「よく撮れなかったら、どうする?これは貴重な記念品だよ」
__ 僕は急に笑えなくなった。
__ そうだ。今回は僕たちの最後の旅行かもしれない。
__ 「ほかの人に頼んで、もっと撮ろう」
__ 写真をたくさん撮った。ダイナーは「疲れた」と言った。
__ 「どこかで少し休もう」
__ 「波止場で」
__ 波止場の前の広場に、人がおおぜいいた。席どころか、立つところさえなかった。
__ 「どうする?」とダイナーは聞いた。
__ 「フェリーに乗ろう。きっと席があるから」
__ 「どこへ?」
__ 「どこでもいい。またフェリーで帰ればいい」
__ 僕たちは北岸へのフェリーに乗った。
__ 「どこに座る?」とダイナーは言った。
__ フェリーの中には、乗客が十数人しかいなかった。どこでも席がある。
__ 「後ろ」と僕は言った。
__ 「どうして?前のほうが景色がいいのに」
__ 「後ろからフェリーと周りの景色が見える。前なら波に打たれる」
__ ダイナーは分からなさそうな顔をした。でも、僕に従って、後ろに座った。
__ 実は、僕はフェリーに弱いんだ。船酔いが怖い。後ろのほうが穏やかだから。
__ もちろん、これは言えない。
__ 北岸に着いて、ダイナーは「ここ、きれいだわ」と言った。
__ 確かに、北岸の建物は都心より少ない。居心地がいい。
__ ダイナーは「ここに住めればいいな」と言った。
__ 「卒業して、就職した後、お金がたくさんもらったら、ここに住めるよ」
__ 「あたし、まだ一年半もあるよ」そして、悲しそうに「でも、あなたは半年だけ」
__ 僕は何を言えばいいか分からない。
__ 「ね、覚えてる?」
__ 「何を?」
__ 「去年あなたが香港へ帰る時、あたしが言ったこと」
__ 僕は思い出そうとしたが、思い出せない「忘れた」
__ ダイナーはため息をついた「新しいカノジョを探すこと」
__ そういうことか?完全に忘れちゃった。
__ 僕はずっと彼女と再会することを待っていたから、ほかの女を探すわけがないだろう。
__ ダイナーは僕が黙っているのを見て「探してないか」
__ 僕は彼女の手を握って「できないんだ」
__ 「でも、あたし・・・」
__ 「君はどうだ?」
__ ダイナーは僕を見つめた。そして、「何もない」と言った。
__ 何かを隠しているだろう。
__ 僕はこの話題をあまり話したくないから「まだ疲れる?」と聞いた。
__ ダイナーは「もういいよ。帰りましょう」と言った。


(つづく)

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