めりーごーらんど

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ドイツ旅行



その頃は、今と違って海外旅行は目玉が飛び出るほど高い時代でした。
私の母方の伯父は外交官で、私が大学生の頃は、ハンブルグの副領事をしておりました。
夏休みにその伯父から「休暇にスイス旅行をするけれど、一緒に行かない??」と誘いがあったのです。
私としては、とてもうれしい話で、すぐにでも返事をしたかったのですが、お金の事もあり、まずは両親に相談。
「1人で行くのも心細いでしょうから、おばあちゃん(母の親)を誘ってみたら?」とスポンサーからの話で、早速おばあちゃんに電話。
当時72歳のおばあちゃん、好奇心のかたまりのような人。
両親の提案を断るはずもなく、「行く、行く!」と。

伯父に手紙を書くと「おばあちゃんの年ではスイスは無理なので、日を変えて2人でドイツにいらっしゃい」ということになりました。
(本当は、スイス、行きたかったなぁ)
パックツアーでは、伯父の所で泊まることもできないので、初めての海外旅行を「フリーツアー」にすることになりました。
つまり、自分で移動、自分で、決められたホテルの中から選んで予約をするツアー。

飛行機は、アラスカ経由で16時間の旅。
おばあちゃんは、というと、次々でてくる機内食が食べきれず、もったいないと、まわりの席の人たちに「食べてもらえないか?」と頼んでいるのです。
若かった私はとても恥ずかしくて、ちょっと他人のふりを(笑)
おばあちゃんの一言「座ってばかりいるのに、食事をしろ!と次々出てくると、なんだか、ブロイラー(鶏)になったみたいだわ」

アラスカに給油のために着いた時、私は「腰が痛い!」というおばあちゃんを残して、あちこち見学に。
飛行機に戻ってから「ホッキョクグマの剥製、すごかったね」と隣の人に言われ、おばあちゃん「私、見とらん!あんたが置いていったからだ!」と私にかんかんになって、怒り始めました。(だってぇ~おばあちゃん、座ってるって、自分でいったくせにぃ~)

ようやくハンブルグに到着。
伯父が迎えに来てくれており、ほ~っ。
あちこち伯父、伯母、いとこ達に連れて行ってもらい、楽しく何日かを過ごしました。
夏のドイツは、夜の10時でも、まだ明るいのです。毎日、結構遅くまで、遊びまわりました。
伯父の所が狭いため、誰か2人がホテルに泊まらなければならず、いとこと私が泊まることに。
ある日ホテルに帰ったら、見知らぬ荷物が、、、、、。「えっ??」
怒ったいとこが、フロントに行き「ドイツ語」でまくし立ててる横で、私は???
結局、別の部屋に案内されて、一件落着でしたが、いとこが居なかったら、私はどうなっていたのでしょう??

★かの有名な、「ローレライ」★
ラインくだりの途中で、ここに差し掛かると、皆が一斉に「ローレライ」を歌いだします。ローレライ

このフリーツアー、集合が「フランス」なのです。
仕方なく、おばあちゃんと一緒にフランスに移動。恐ろしいことに、2人っきりでです。伯父にフランス語で「○○ホテルに行ってください」と書いた紙をもらい、出発!
おばあちゃん曰く「この紙に、殺してくださいと書いてあっても、わからんねぇ」(うまいこと言うなぁ~おばあちゃん。本当にそのとおり!とすごく感心!)
なんとか特急に乗って、国境越え。その間中、喧嘩(笑)。
だっておばあちゃん、何かにつけて「外国語が喋れる」いとこと比較するんですもの。
私は、日本語の方言なら負けないんですけどね。

どこへ行っても、おばあちゃんの事「おかあさんですか?」って。
最初は「おばあちゃんです」って言ってましたが、最後は面倒くさくて「はい、そうです。母です」と。
おばあちゃんが若く見えたのか、私がふけていたのか、いまだにわかんないですけど、あまり深く考えないことにします。

それでも何とか「フランス」に無事到着。
観光をしました

ルーブル美術館、ベルサイユ宮殿と豪華絢爛たる美術品を見ていましたら、気持ちが悪くなりました。(車酔いならぬ、美術品酔いです)

おばあちゃん、帰りに免税のお酒を買うと言うのです。「おばあちゃん、荷物、増えるよ!」「背中にかつぐから、大丈夫」とにっこり。
「はい、私が持ちますぅ、、、、。(涙)」

こうして、12日間のドイツの旅は、無事終りました。
家に帰って、私の方は、時差ぼけで荷物を片付けながら寝てしまっていたのに、おばあちゃん、元気に母に電話をしてきたらしいのです。
「同じ旅行してきて、おばあちゃんあんなに元気なのに、あなたは寝ちゃってて、、、、。若いのに」と。
おばあちゃんが元気だからなのか、元気なおばあちゃんに振り回されたからなのか、あまりはっきりとは言えませんが、、、、、、。

今回の旅行がずいぶん楽しかったらしく、おばあちゃん、私の3歳年下の弟に「お金出してあげるから、アメリカに行こう!」と誘いました。
弟、私の話を散々聞かされていたので「今回は、やめとくね」と。おばあちゃん「そう、、、、」と寂しそうでした。

そのおばあちゃん、すでに亡くなってしまいましたが、私の心の中では、旅行の思い出と共に、いつまでも生き続けています。

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