WATSU Unplugged
ワッツのトレーニングでは、まずワッツ1とワッツ2のクラスを学びます。約60の手技と約10種のポジションを、決まった形で順番通りにできるようにマスターします。これはいわば、ワッツのアルファベットです。その後、ワッツの練習や関連する勉強を重ねてから、最終段階のワッツ3へと入ります。ワッツ3は「フリーフロー」と言われる完全な自由表現になります。今までに修得した手技に様々な創造力を加え、相手のニーズにあわせて、そしてまたセラピスト自身の個性を存分に発揮して組み立てる、自由で変幻自在なワッツです。例えば、PT(医学療法士)はストレッチや全身運動を重点的に、指圧師やマッサージ師は経絡やマッサージを、またはそれとはまったく関係なく、開放感あぶれるダンスのようなワッツまで。これまでに習うアルファベットは、そのすべての要素を盛り込んで大変によくできた「フロー」ですが、ワッツとは結局、フリーフローとなって初めて「ワッツ」になるのです。
日本のワッツは、スポーツクラブで活動する一部の水泳インストラクターの間で広まりました。しかし、残念ながら、それはセラピーとしてではなく、リラクゼーションを目的とした「水中運動」として位置付けられています。その結果、一つ一つの手技やそのつながりがどんな効果をもっているのか、どのようにしたらクライアントの体やニーズに合わせていけるのか、セラピストとしてどんな心でクライアントと接するべきなのか、といったセラピーとしては根幹となる理解がまだ乏しい状況にあるようです。とはいえ、何もそれはワッツに限られたことではありません。質のいいセラピストが足りない、という声は日本中から聞こえてきます。
「ワッツ・アンプラグド」とは、「フリーフロー」の前段階です。まずは既成概念などの「しばり」から解放され、自由で創造的な本来のワッツへの第一歩となる考え方です。コードを抜いて自由な状態になったとき、「果たして自由になれるか?」というと実はそうではありません。自由な状態ではどうしていいのか分からないことも多々あります。自分の力がある範囲でしか、生命は自由になれないのです。
そういうときは、「充電」をしにコードをまた指せばいいじゃないですか。そこで「自由」への力を学び、蓄積するのです。しかし、そこで行う研修には、「コードを指しっぱなし」にするための教育ではなく、「またコードを抜いてチャレンジ」していくための教育が必要だと思います。セラピーの良し悪しは、「先生」が決めることではなく、「クライアント」が決めることなんですから。セラピーとして実践主義、現場主義をもってすれば、教育のあり方も自然と変わってくるはずです。「ワッツ・アンプラグド」は、「技」ではありません。「意識」なのです。この意識を少しずつ広めていって、日本のワッツの質を高め、もっと広く認知され実践されていくことを願っています。