イルカとの出会い 2





イルカとの出会い その2




何年か後、これも不思議な人のつながりがきっかけで、

「自閉症児の家族がフロリダにイルカと泳ぎに行く」という話が周囲で浮上し、

何となく手伝うことになりました。

大学時代にアメリカに留学していて英語はイケたのですが、

そうこうしているうちに、ある日突然、

ツアーガイド&通訳としてフロリダに行く話が飛び込んできました。

即決で夏休みを取りました。



Human Dolphin Institute

フロリダ州パナマシティで、野生のイルカの研究と、

自閉症など障害児のためのセラピープログラムを行っている

心理学者や海洋生物学者たちの団体でした。

パナマシティ沿岸には、バンドウイルカが200頭いると見られています。

バンドウはスピナーより人懐っこく、知性も高く感じられます。

(あくまで一緒に泳いだ印象ですが…)



パナマシティでのドルフィンスイムの特徴は、

まずイルカとの遭遇率が非常に高く、また岸から近いこと。

ボートに乗って数分でイルカの姿を見ることもありました。

そのため、水深が浅く、平均すると3mくらいのところで泳げます。

ビーチの砂は真っ白な鳴き砂。

それが海底にずっと続いていて、また水深が浅いので、

真っ白な海底が日光を照り返して、水中がとても明るいところでイルカと泳げるのです。

おまけに大部分が内海なので、波が穏やか。

子供たちがイルカと泳ぐには、最高の条件といえます。

長い時間、波に揺られて船に乗って、さらに水中が暗いと、

イルカと会う前に乗り越えなきゃいけないストレスが高すぎるのです。


dolphin15
(写真:越智隆治)



あるとき、

イルカがボクを見下ろしながらゆっくり泳いでいる、という瞬間がありました。

ボクの目には、光る水面を背景に、イルカのシルエットだけが見えました。

でも、イルカがボクを見ているのはハッキリと感じられました。

「美しい…」

と思った瞬間、またあのハワイのときの感覚が襲ってきました。

ボクの心のどこかの窓が、パカッと開いたのです。


あああ…


また言葉を失いました。

「つながってる」

「生かされてる」

「ありがたい」

どんな言葉もすべては言い表せないような感覚です。

同時に、頭のどこか冷静なところで、

「ここに戻ってくるまで、遠かったなぁ…」と考えていました。

日頃の自分が、今の状態からどれだけ離れたところにいるか、気づいてしまったのです。


「これはいかん。生き方を変えなければ…」


dolphin08
(写真: Donald Tipton)



さらに、現地のスタッフはすごい人間ばかりでした。

仕事への情熱、奉仕の精神、

それぞれに波乱の人生を難なく歩く高い精神性…

本当に素敵な出会いでした。

「この人たちと仕事ができたら、どんなにいいだろう…」

知らず知らずのうちに、なにか大きな波に乗って、

思わぬ方向に自分が運ばれていくのを感じました。



その晩、一睡もできずに、ホテルのバルコニーに座っていました。

湧き上がってくる気持ちを一つ一つ言葉やイメージにしながら、

自分が求めていることを理解しようと、自問自答を繰り返しました。

水平線から朝日がのぞいた時、気持ちは決まっていました。

この海で、

このスタッフと、

このイルカたちと…


その朝、いつものようにボートでスタッフに会ったとき、

ボクは面会を申し込んでいました。






arrowL00 arrowC00 arrowR00




© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: