ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

2005.07.28
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カテゴリ: 小説
暁天の星 暁天の星
暁天の星


****あらすじ****
 大阪府高槻にあるO医大の法医学教室に、目撃者に口を揃えて「不可解な事故としか思えなかった」と証言された遺体が、二体続けて運び込まれた。時間も場所も方法も別の事故にあったそれらの遺体には、さらに奇妙な共通点があり…教室の助手・伏野ミチルと新人大学院生・伊月崇は偶然再会した伊月の幼馴染で高槻署の刑事・筧兼継を巻きこみ、謎を追う。
****************

 鬼籍通覧シリーズ第1巻です。
 おお、一般小説久々の大ヒット!まともに読んでも面白いし、ヨコシマに読んでも面白い。あー、でも事前に注意事項が必要かな?

 ※これは推理小説ではありません。あらすじを読んで謎解きを期待すると、後で思いっきり肩透かしを食らいます。


 以上大丈夫な方、とりあえず一読してみてください。
 文体は、さすが少女小説出身だけあって非常に読みやすく、法医学教室という作者にとって身近(ご存知の方はご存知、椹野先生は某県の現役非常勤監察医)で読者にとって遠い題材(最近は法医学もたくさん露出してきているようではありますが)は、斬新でありながらも非常にわかりやすく説明されています。
 ただ、この巻では、第一章のみ先行で雑誌掲載されていたらしく、この部分だけ完全な推理小説仕立てになっています。ミチルさん、謎解きしてるし…誤解をあおる構成だよなあ。ホントは奇談なのに。

 さてさて、このシリーズ、なかなか仰々しいタイトルに反して非常に遊びが効いてまして、目次裏には死亡診断書(死体検案書)一章ごとの間には必ず、間奏「飯食う人々」という、まさに登場人物の食事シーンが挟まり、著者近影は大接近のDNA写真だったり、作者の脳の断面図だったり(笑)

 だからといって、ふざけているというわけではけしてなく…予期せぬ「死」に対峙した人々を、時にシニカルに、時に温かく、第三者の目を通して表現する方法は冷静ながらも考えさせられることが多いです。
 日常的に死者と対面する職業ならではの彼らのスタンスもとても興味深いですし。
 ああ、でも、ウチも家族の職業柄、食事時に死体の話平気でする家だなあ。
 私、嗅覚はものすごく弱いですが(自分の子供の吐瀉・排泄物始末しながらゲロゲロ吐くくらい)視覚的情報にはかなり強いので。想像しても大丈夫(笑)
 謎が謎を残したまま終わる物語は、なんとも言えない読後感を残してくれます。
 賛否の分かれるところでしょうが…。

 いやしかし、この作品の魅力は、なんと言ってもキャラクターです。
 主人公の伊月をはじめ、主要人物である姐御なミチルさん、筧、謎の多い都築教授、童顔ダイナマイツボディの秘書・ネコちゃん、小柄で少女めいた面立ちの技術員・陽一郎くん、小さくて高速移動する(笑)、教室の最古参・清田さん…みんなキャラが立ってて、ストーリーは何でもキャラだけでも読ませてくれそうな気がするくらいです。
 中でも、柔らかい大阪弁とおっとりした筧と、すんげえファッションセンスとビジュアル系な容姿に反して意外と小市民な伊月のカップルは、もう読む人の笑いを誘わずにはいられません…
 いやもう、対外的には親友ってなってますが、紛うことなきラブラブです(爆笑)
 14年ぶりに解剖室で再会した時の筧の科白が「昔からちょっといないような美人でした!」ですからねえ…

 なんかもう、妄想大爆走って感じです。

 しかし、刑事の筧というとどうしても筧利夫さんが出てきてしまうのが、悲しいところ。
 鬼籍を紹介してくれたかけいづ(筧×伊月の略)好きの友人に、思いっきり嫌がられてしまいました(^◇^;)

 あー、なんかもうすごいことになってるな。
 とりあえず、めちゃめちゃ面白かったです、ということで。


無明の闇 無明の闇
無明の闇


 鬼籍通覧シリーズ第2巻です。
 本巻は、個人的に非常に痛かったです。しょっぱなの解剖から赤ん坊が続き、また物語りの主軸となる事件もまた、子供の話だったので…

 今回はミチルさんのトラウマの話です。
 先2件の赤ん坊の解剖によりいやんな感じが盛り上がってきたところ、3件目の轢き逃げ事件(死者は大人)の解剖中、警官の心無い言葉が彼女のトラウマを刺激します。フラッシュバックを起こしたミチルさんのため、かけいづコンビが20年前の迷宮入り事件を追いかけることになるのですが…。
 主人公の伊月は今回、医師国家試験に合格して晴れてドクターになりますが、やはり姉貴格のミチルさんが元気がないと物語もいまいち精彩がない感じです。というか、ミチルさんの情緒不安定が伝播して、教室全体がイライラしている状態。
 些細なことですが、そういう空気からも、各キャラのリアリティが感じられます。
 また、先の2件の解剖の際、伊月くんは監察医としてちょっと履き違えた発言をしてミチルさん(&教授)にビシッとやられてしまうんですが、心情的には伊月くんの発言もよくわかる…。感情的には、彼の意見を肯定してあげたいです。
 でも、ミチルさんの「あんたは、誰かの人生にちょこっと介入して、それで自分の気が済めばそれでいいわけ?」という科白に、常に死者と接しながら、その実、生者に影響を与える立場にいる「監察医」という職業に対する椹野先生の心構えやプライドを感じ、あえて安っぽい同情…憐憫を断ち切る強い意志に、頭が下がる思いでした。

 今回も、オカルトで割り切れない結末が待っているのですが…何が怖かったって、怪奇現象そのものよりも、人間の心の闇を闇のまま描いていることなんです。
 教授のコメントが、胸に重い…。

 しかし、そんな中でもかけいづはラブラブ(笑)
 伊月くんの合格祝いの場に、真っ赤なバラの花束を持って現れた筧。
 いや、確かに伊月にはバラが似合うさ…天然なんだろう、間違いなく天然なんでしょうが、ハマり過ぎ(爆笑)
 きっとラストシーンの後も、伊月くんは筧を巻きこんで夜通しクダを巻いたことでしょう('-'*)フフ

 この2人がいると、和むなあ。
(2001/06/24)

*シリーズ続巻*
壷中の天 隻手の声 禅定の弓

なんでいきなり普通の小説か。いや、「3月革命」見てなんか思い出したので。
この感想は講談社ノベルズ版で、ホワイトハート版には死体検案書やらがついてない代わりに、巻末にキャラ対談があります。挿絵は山田ユギさん。
椹野先生も監察医を辞めてしまわれましたね。
この頃は身内が監察室に勤めることになるとは思いませなんだ…





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最終更新日  2005.07.29 00:19:55
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