ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

2005.08.29
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カテゴリ: 小説
窓
硝子の街にてシリーズ/柏枝真郷/講談社ホワイトハート


窓-WINDOW- 」「 雪-SNOW- 」「 虹-RAINBOW- 」「 家-BORROW- 」「 朝-MORROW- 」「 空-HOLLOW- 」「 燕-SWALLOW- 」「 宵-AFTERGLOW- 」の9冊を読み上げた事になりますね、再読ですが。
渦-BILLOW- 」「 烏-CROW- 」「 矢-ARROW- 」「 禁-DISALLOW- 」「 黄-YELLOW- 」「 塵-WINDROW- 」「 転-WALLOW- 」「 兆-FORESHOW-(3月新刊) 」と続き、現在執筆中の第17巻「 潮-FLOW- 」を含めまだまだ続巻予定のこのシリーズ、巻数からしても出版社からしても、柏枝先生の代表作と言って差し支えないと思われます。
 この作者の作品らしく、一作一事件(まれに複数の事もありますが)、ミステリーのスタイルをとっており、主人公のノブ(広瀬伸行・生まれはNY、育ちは日本、血統は純日本人、国籍アメリカ)は、幼馴染でNY市警の警部補であるシドニーやその相棒のヘンリーと共に捜査をする中で、名探偵ぶりを発揮します。といっても、その推理方法は独特で、純粋な推理というよりは、関係者の心理をひも解いてカンと想像力で犯人を探すという、本格ファンの方などから見れば推理小説としては不満が残るかもしれないものですが、「人の痛みや辛さを感じることが出来る」というノブの特性は、キャラクターとしての彼の大きな魅力になっています。
 また、そんなノブを見守るシドニー(金髪碧眼、生まれも育ちもNY、外見はまじりっけなしのアングロサクソン)は、典型的な美形で、かつ頼りになる元ガキ大将、しかもものすごい一途さんです。何しろ、片思い暦二十余年!!

ネタばれになるのであえて詳細は書きませんが、以降もあんまりさくさく進んで行くわけではありません。
けれども、その分一巻一巻がじっくりと書きこまれており、多少性善説的な展開が気になるところもありますが、現実の事件も取り混ぜながら、少しずつ変化していく世界は大変読み応えがあります。
 ある程度歴史のあるJUNE読者さん(苦)は勿論ですが、今時の若い子にも是非読んでもらいたいシリーズです。

 いや、この間大学生の子にこの作者を知らんて言われてちょっとぜねれーしょんぎゃっぷだったのよ…



風 悼(いたむ)
9.11その朝と夜


さて、前述の日記が一年以上前です。当然その間に新刊が出ておりまして、「 翳-SHADOW- 」「 風-BLOW- 」「 悼-SORROW- 」で現在20巻。うち、19と20は、あの2001年9月11日のニューヨークが舞台となっています。
BLで、少女小説で、あのNY同時多発テロをここまで真正面から取り上げた…というか、そもそもチラリとでも物語に絡ませた作品があるのでしょうか。
私は著者の公式HP「 ACORN 」のメルマガ版日記を購読しているのですが、そちらではずっと以前からこの2冊についての作者の綿密な取材と、その真摯な姿勢が記されており、実際に発表された作品はそういった諸々がちゃんと反映された、素晴らしいものになっていると思います。
主人公・ノブはNY在住の旅行会社勤務。そしてその恋人・シドニーはNY市警(NYPD)勤務の刑事で、主人公に懸想をしており彼らの共通の友人・スティーブはニューヨーク市消防局 (FDNY) の消防士…9.11のその朝、そしてその後、彼らは立ち止まることなく、懸命に彼らのすべきこと、できることを行い続けます。
BLでいうなれば、BL的盛り上がりには欠けるかもしれません。なにしろ、この2冊の間に主人公カップルが顔をあわせたのは一体何ページか、言葉を交わしたのはどれ程か。彼らは、あまりに衝撃的、悲惨な事件の渦中にあって、何を捨てても恋人の元に走り出したりはしません。
しかし、仕事を果たす中で…確かに、互いの存在を感じ支えにし、またそういった心の交流を、二人だけではなく同じく事件と戦う人たちと分け合って行くのです。

すごいなあ、って。
ただ、もうそれだけで。

もともとがそういう、人の心をとても大切にしたお話を書かれる作者です。
全てはこれまでのノブとシドニーや彼らの回りの人達との心の積み重ねでしょうし、作者ご本人の姿勢や気持ちの集大成なのでしょう。この本に関してはもう他に何も言えないほどの感動を覚えました。

しかし、彼らはまだ生きています。シリーズとしての物語も続きます。
9.11が終わり、懸命に駆け抜けたその後…この事件の本当の影響が彼らに出てくるのは、これからです。
結論なんて出ない物語で、どこまで行くのか、どこまで行けるのか…なんにしろこの2冊は、ある種のターニングポイントなのは間違いありません。


綿密な取材の元に時事を取り込んでいるのに、実は「ニューヨーク市警殺人課」という架空の部署を設定したために一応架空の街ということになっている柏枝NY。この世界をもっと楽しみたい方は、このシリーズの数年先、現在の柏枝NYのニューヨーク市警殺人課を舞台とした「PARTNERS」をお勧めします。
こちらは「男女の友情は成り立つのか」というまたベタな命題の元に綴られるミステリとなっています。
キャプラン課長が結構登場する他に、存在だけではありますが(名前も出ない)シドニーも出ています。御年44歳…だっけか?
赤毛の美女と金髪美青年のコンビが主役です。

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最終更新日  2005.08.30 01:47:03
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