ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

2005.09.06
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カテゴリ: 小説
バッテリー バッテリー
バッテリー/あさのあつこ/教育画劇・角川文庫


児童書で発行されたものですが、大人でも十二分に楽しめる内容です。
そのせいか最近角川で文庫化されたみたいですね。
とりあえずハードカバーで購入したのですが、文庫版3巻に文庫のみの書き下ろしがあるということで買い直しちゃいました。

****あらすじ****
原田巧はリトルリーグで鳴らした天才肌のピッチャーだったが、中学入学目前に、父の仕事の都合で新田という田舎町に引越しをした。自分の球に絶対の自信を持ち、野球をすることだけを想う巧は、この街で高校野球の名監督だった祖父・井岡洋三と、運命のキャッチャー、永倉豪と出会う!!
****************

あらすじではわかりにくいですが、この物語は、野球というチームプレー、わけてもバッテリーという互いを夫婦に例える特別な交流を通し、仲間意識ややればできる的な、子供に夢と希望を与える青春小説、野球小説 ではありません。 主人公の巧は、自分の才を知り、高みを求めていっそ傲慢な程の少年です。
あらすじで「運命の」なんて書きましたが、バッテリーを組むことになる豪との出会いも、それで劇的に彼が変わるわけではなく、ただ「俺の球を取れるキャッチャーがいた。これでまともに野球ができる」程度の感慨です。

では、何がこんなに私を惹き付けるのか。

それは、その巧の、短所とも思える頑なさです。
私は、十代の頃は少女でした。夢もあったけれど、打算も妥協もアタリマエだった女の子。
一方、巧が持っているのは十代の少年特有の頑なさ、ひたむきさ、計算も妥協も捨てた…ガラスの十代(古ッ)ではありませんが、キリキリと美しいけれど今にも壊れそうな、痛々しいまでの一途さです。

「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。――関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ」

あまりにも有名になったバッテリー本文の一節ですが、これが全て。
おそらく、巧にとって大事なことは、勝負に勝つことではなく「極めること」なのではないか…。

第一巻では、中学入学前、まだまともに野球の試合はしていません。巧と新田の人々との出会い…確かに何か通じるもののあった豪との出会いや、体が弱かった弟・青波の野球との出会いと才能の片鱗を見せることにより、言うなれば「予感」を描いているのですが、見事な完成度の高さです。
実はこのあと、後半で多少の停滞を見せるという話を聞いてはいるのですが、全六巻、長い巻数ではありません。しっかり読んでみようと思います。

作者は、この物語を書いた頃、十代の少年の母であったといいます。
それでこの物語を書き上げた、というのは本当にスゴイ…敬意を表して、脱帽!


バッテリー(第1巻)
バッテリー1/柚庭千景/角川書店あすかコミックス


あさのあつこ原作の児童書のコミックス化。


コミックス版から入った人はいいだろう。だが、原作ファンには重要なエピソードが削られていたり、原作を無視したキャラクターの造形(特に豪)がなされていたり、あまつさえ青波視点で描いてるってどういうこと!?という、違和感や不満ばかりが募る。

小説を本当に原作に忠実にコミックス化すれば、原作の数倍のページ数が必要だ。しかも、それでは冗長に過ぎる。
だからこそ、エピソードを削ったり切り貼りをして、原作の味を生かしつつ面白い話に仕上げる技量がいる。
場合によっては、夢枕獏原作の「陰陽師/岡野玲子」のように、その過程で原作とは別物の話になってしまうこともあるだろう。それならばそれで、読者を魅せるだけの話を作れば、原作ファンとて納得できるに違いない。
どちらにしても、作画担当者には一定以上の技術とセンスが求められる。
それなのに、どういう訳か最近は新人か無名の作家が名作のコミックス化を担う事が多いような気がする。原作のネームバリューで売るつもりなのか?別にそれはそれでもかまわないと思うが、少なくとも私は同じ作者の本を二度と手に取りはしないだろう。
この巻には、作画担当者による詳細なバッテリー取材記があるが、これはいい。すばらしいと言う意味でいいと思う。作者の原作に対する愛が感じられる。もしもこれだけで同人誌なりがあったとしたら、それは買うかもしれない。だが、愛があればそれでいいというものではないのだ。
例えば、某SF作家のコミックス化を読んだ時には滅多にないことに本を叩きつけそうになったよ…
本作は、そこまでするほどのものではないが、読んで物足りない以上に「あ、ダメ」という感想を持った。
原作の持つ、各キャラクターの徹底的に突き詰められた感情のせめぎが感じられない。



例としてあげた作品については批判の具体的な理由を述べていない(また、あくまで「バッテリー」の感想なのでここで述べるのは適当でない)と判断し、作家名と作品名を伏せ、該当箇所に打ち消し線を入れました。

また、本作「バッテリー」に関しては柚庭さんの愛と意気込みは確かに感じられたので、当分は買うつもりです。評価が変わるように期待してます。








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最終更新日  2005.09.06 17:45:57
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