ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

2005.12.08
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カテゴリ: 漫画
借り本第3弾。

天界の城


本日読んだ「天界の城」でお借りした一連の佐藤史生作品(「 ワン・ゼロ(全3巻) 」「 打天楽 」「 精霊王 」「 夢みる惑星(全3巻) 」)を読了。

佐藤史生さんとは、いわゆる少女漫画 花の24年組 とともに名を挙げられることが多いらしいポスト24年組な作家さんで、私の追っかけ作家である森脇真末味さんとも交流がある(文庫版「 ワン・ゼロ(第2巻) 」解説は森脇さんです)作家さんということで、興味はあったものの地味目で古い画風(「夢見る惑星」の解説ではあからさまに「↓手」と書かれてるよ…いや、そんな事はないと思うんだが)にこれまで読んだことがなかったのですが、


総評でいきます。
佐藤さんの作品は、原作付きの「精霊王」こそ若干テイストが相違しますが、おおむね「SF」と書いて「スペースファンタジー」と読みたくなるような壮大かつ幻想的な世界を描かれています。
世界の根源には確固たる科学(Science)世界を持っているので、SFであることは疑うべくもありませんが、作品世界は神話と現実と幻想(Fantasy)によって成り立っており、またそれらが実に無理なく融合しています。
作者の視点は神の視点…とでもいうか、若干の距離感を感じさせます。しかし、それ故に壮大で複雑な物語でありながら、さながらジグソーパズルを俯瞰するように、全体像をきちんと把握することができます。
また、その独特な言語感覚は、一遍の抒情詩を読んでいるかのように読者を作品世界の深みへといざなうのです。
作中の言葉については、読んでいただくしかないのですが、タイトルのセンスにも十二分にその片鱗がうかがえませんか?というか私、「さとう・しお」というそのネーミングセンスが大好きです(笑)

簡単に作品解説など。
「ワン・ゼロ」はヒンズー教をモチーフに、1500年前に神(善)との戦いに敗れた4体の魔神将(悪)が日本へと渡り、人類を救済して世界を導くことになるアートマンであるトキオと摩由璃の出会いを期に、再生した魔神将と神々との再戦が始まる…といった話なんですが、単なる善悪の二元的な対峙に留まらず、再生した魔神将が学生で、現代学生の意識に縛られていたり、宗教とコンピューターネットワークの相似故にコンピューターが神格を得たりとあらゆる解釈が独特で、面白い。近未来なのに1998年なのはご愛嬌ですね。「打天楽」は「ワン・ゼロ」続編を含む短編集。

「夢見る惑星」は、始祖が星を渡ってきたという伝説を持つ古代王国で、神秘の力「幻視」と封じられた「科学」によって予見されたパンゲア大陸分裂の大災害の被害を防ぐために、大神官にしたてられた主人公イリスが奮戦する話ですが、このイリス、先王の息子で銀髪銀瞳という神秘的な外見に似合わずずいぶんなタマで、かけ引き、ハッタリ、立ち回り…はうまくありませんが何でもこなして飽きさせません。イリスの腹違いの兄弟で現王・タジオンや舞姫・シリン、亡国の若長・カラに暗殺民族の末裔・ゲイルなど多彩な登場人物も魅力です。

「精霊王」は「自らの持っているもの全てを捧げれば精霊王として楽園に迎えられる」という伝説に魅入られた億万長者と、その持ち物とされた3人の養子達の物語を含む、徳永メイさん原作の短編集。表題作シリーズは勿論ですが、行方不明の少女を探すミステリ仕立ての「オフィーリア探し」、全人類が完全管理の人工出産される世界でカルト集団に攫われた奇形を取り戻そうとする「アレフ」、閉じられた超能力研究所の中で起こった呪術的な事件を描いた「タオピ」と、ジェンダー・セクシュァリティに歪みを持った登場人物と呪術との融合が見られる作品集です。なにがどう歪んでいるのかは、作品のカタストロフに深く関わっているのかは触れませんが。

「天界の城」も短編集。表題のシリーズほか、不老長寿の妙薬にからむ謎を描いた「羅陵王」、未踏の星に入植した人類が、地球の干渉を退け、母なる大地の収奪を自ら禁じ、独自の道を歩もうとする「やどり木」収録。初出は色々なんでしょうが、再編されたこの作品集には明確なテーマがあり、全て異形、または異質な物を描いてあります。


また、作者自身の持ち合わせる世界の狭さも、言えます。
勿論、今の少女漫画作品を否定しているわけではありません。恋愛のみに主眼を置いて、かつ人間の限りない深部に切り込んだ名作があることも勿論知っていますし、恋愛以外の物語だってありますよね。
しかし、かつての少女漫画には、作者独自の不動のインナーワールドを注ぎ込み、ついて来れねば捨て置くぞ、的な作品ながらむしろ読者が率先して参考図書は勿論、関連がありそうな文献を自ら探して読む、そこまでさせてしまうパワーのある作品が数多く発表されていました。
そういった作品の一である佐藤さんの諸作が、今の読者さんに受け入れられるかどうかは別として、長く残って欲しい作家さんだなあと思うとともに、もう一度あんなパワフルな時代がやってこないものかなあと切なくなる訳です。

ちなみに、 萩尾望都


蛇足に、ポスト24年組の面子を。
花郁悠紀子 坂田靖子 / 佐藤史生 / たらさわみち / 水樹和佳子
小JUNE創刊号からの読者(流石にリアルタイムじゃないけどな!!)の私には、懐かしい名前ばっかりじゃないですか~
ちなみに、花郁悠紀子さんは 波津彬子 さんの実のお姉さんです。夭逝されましたが、これまたお勧めの作家さんです。





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最終更新日  2005.12.09 03:17:04
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