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放射能漏洩は起こらない
◆福島原子力発電所は、深刻な放射能物質の漏洩は決して起こらない◆
◎ドイツ在友人より マサチューセッツ工科大学 Dr. Josef Oehmenの解説の邦訳
<趣旨>
地震発生直後に設計どおりに制御棒が全挿入され、ウランの連鎖反応は完全に停止しており、核爆発はおきえない。
冷却能力の喪失により残留熱のコントロールが出来なくなり、冷却水の水蒸気化、炉心露出が一定の炉心溶融を引き起こし、中間生成物のセシウムとヨウ素の放射性同位体が水蒸気に混じり、これが外界に放出されたが、深刻な漏出レベルではない。(禁煙すればカバーできるレベル。)
仮に海水注入等が出来ずに原子炉の空焚きが続くとしても炉内に生成される中間生成物は限定的であり、崩壊し終わると熱源はなくなり冷温停止する。格納容器が破られることはなく、殆どの放射性物質は炉内に封じ込められる。
今後、最も重要な問題は長期に渡る電力不足であろう。原子炉への今後の査察により、日本は国家の15%の電力供給能力を失うこととなり、ピーク時用の火力発電能力の常時稼動によりカバーが出来ても潜在的電力不足と電力料金の上昇をもたらすだろう。
引用ここから
私は3月12日に日本で起こっているいくつかのトラブル──日本の原子炉の安全性──に関して心の平穏を与えるために、この文章を書いている。率直に言って状況は深刻
だが、コントロール下にある。そしてこの文章は長い。しかし、この文章を読むことによってこの惑星に一緒に住むあらゆるジャーナリストよりも原子力発電所について詳しくなるだろう。
今までそしてこれからも深刻な放射能物質の漏洩は決して起こらない。
深刻なという意味は長距離フライトや自然放射能レベルが高い特定の地域で栽培された麦で作られたビールを飲むときに受けることになる放射能レベルという意味だ。
私は地震後のこの事故に関する全てのニュースに目を通した。正確で誤りのないレポートはただの一つも無かった。日本の危機報道における弱点でもある。誤りが含まれるので、私は偏った反原発記事を参照しない──これはこの頃非常によくあることだ。誤りの中には、物理学や自然法則に関するあからさまな誤り、原子炉が建築され運用される方法に関する基礎的・基本的理解の明らかな不足による事実の重大な誤認も含まれる。私は各パラグラフに誤りが含まれるCNNの3ページのレポートを読んだことがある。
なにが起こっているかを見る前にまずいくつかの基礎を説明しよう。
○福島原子力発電所の構造
福島原子力発電所は沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれる。沸騰水型原子炉は圧力釜に似ている。核燃料は水を温め、水が沸騰し蒸気を作り、蒸気がタービンを回し、電気を作る。蒸気は冷却され、水に戻され、水は再度核燃料により加熱される。圧力釜はだいたい250℃で動作する。
核燃料は酸化ウランである。酸化ウランは約3000℃の高い融点を持つセラミックだ。燃料はペレット(レゴブロックサイズの小さなシリンダを想像すると良い)に成形される。これらのペレットは2200℃の融点を持つジルコニウムで作られた長いチューブの中に挿入され、固く密閉される。こうして組み立てられたものが燃料棒(fuel rod)と呼ばれる。燃料棒はまとめられ燃料集合体にされる。多くの燃料集合体が原子炉の中に配置される。全ての燃料集合体をまとめて炉心(the core)となる。
ジルコニウムのケースが第一の格納容器だ。これは放射能燃料を外界から遮断する。
炉心は圧力容器(pressure vessels)の中に配置される。これは先に述べた圧力釜だ。圧力容器は第二の格納容器である。これは釜の頑丈な部分の一つであり、数百℃の炉心が安全に格納されるように設計されている。
原子炉の全体のハードウェア──圧力容器や全てのパイプ、ポンプ、冷却(水)蓄積装置は、第三の格納容器に格納されている。第三の格納容器は分厚い鋼鉄で完全に密閉されている。第三の格納容器はただひとつの目的のために設計され製造されている。完全な炉心溶融を無期限に封じ込めるためだ。この目的のために、大きく厚いコンクリート製のたらいが圧力容器(第二の格納容器)の下に成形され、第三の格納容器の中は全て黒鉛で満たされる。これがいわゆるコアキャッチャ(core catcher)だ。もし炉心が溶融し、圧力容器が爆発(最終的には融ける)したとしても、コアキャッチャが溶け出した燃料や他のすべてのものを捕える。このように核燃料が散開するように作られているため、冷却停止も可能だ。この第三の格納容器は格納建屋に収められるが、建屋は雨避けのようなものだ。
○核反応の基礎
ウラン燃料は核分裂によって熱を発生する。重いウラン原子はより軽い原子に分裂する。核分裂によって熱と共に中性子(原子を構成する一つの粒子)を生成する。中性子が他のウラン原子に衝突すると、ウラン原子は分裂し、さらなる中性子等を生成する。これが核分裂連鎖反応と呼ばれる。
ただ多くの燃料棒を他と隣接させて詰めるだけでは、急速に過熱が進み、約45分後に燃料棒の溶解に至る。ここで重要なのは、原子炉の中の核燃料は「決して」核爆弾のタイプの核爆発を起こすことは無いということだろう。核爆弾を作ることは実際とても難しい(イランに訊いて下さい!)チェルノブイリでは、過度の圧力上昇によって爆発が生じ、水素爆発と全ての格納容器の破裂、融解した原子炉材料が環境中に放出された(ダーティボムだ)。何故同じことが日本で起きないかは次に述べる。
核分裂連鎖反応をコントロールするために、原子炉のオペレータはいわゆる制御棒(control rods)を利用する。制御棒は中性子を吸収し、即座に連鎖反応を止める。原子炉はこのように作られているため、オペレーションが正常に行われている場合には、全ての制御棒が外される。炉心が熱を生成するのと同じ速度で、冷却水が熱を取り除くのだ(そして熱を蒸気と電気に変える)。正常運用時の250℃程度では十分な余裕がある。
問題は制御棒を挿入し核分裂連鎖反応を停止させた後も、炉心は熱を放出し続けるところにある。ウランは連鎖反応を止めているが、多くの中間生成物である放射性元素がウランの分裂過程で発生する。特にセシウムとヨウ素同位体がメインとなるが、これらの放射性元素は最終的により軽い原子に分裂して、放射性物質では無くなる。これら中間放射性元素は崩壊し続け熱を発生し続ける。これらは最早ウランから再生成されることはないため(制御棒挿入後はウランの崩壊はストップしている)、どんどん減って行き、数日かけて使い果たされると核は冷温停止する。
この残留熱が現在の頭痛の種だ。
つまり第一の放射性元素は燃料棒の中のウランであるが、加えてウランが分裂する際に生じる中間生成物(セシウムとヨウ素同位体)も共に燃料棒の中にある。
二つ目の種類の放射性元素は燃料棒の外で生成される。最も大きな違いは、これらの放射性元素はごく短い半減期を有し、急速に崩壊し非放射性元素に分裂するということだ。おおよそ秒単位の話だ。そのため、もしこれらの放射性元素が外界中に放出されたとしても、それは全く危険ではない。あなたが“R-A-D-I-O-N-U-C-L-I-D-E”と書いている間に、それらは非放射性元素に分裂し無害になるのだ。それらの放射性元素はN-16、窒素(空気)の放射性同位体(型)だ。あとはキセノンのような希ガスだ。しかしそれらは何処から来るのか? ウランが分裂するとき、中性子を生成する(前述のとおり)。ほとんどの中性子は他のウラン原子に衝突し、核分裂連鎖反応を継続させるが、一部は燃料棒を離れ、水分子に衝突する。そこで、非放射性元素が中性子を捕まえ、放射性元素に変わる。上述のように、それは速やかに(秒単位で)中性子を放出し、元の綺麗な物質に戻る。
二つ目の種類の放射線は、後で外界に放出された放射性元素について話すときに非常に重要になる。
○福島で何が起きたのか
ここで主要な事実をまとめたい。日本を襲った地震は原子力発電所の設計値の16倍である(リクタースケールは対数スケールのため、発電所の設計値である8.2と実際の9.0の間は16倍である。0.8ではない)。よって全てがもったことは、まずは日本の工業技術の賞賛に値することだ。
9.0の地震が襲ったとき、原子炉は全て自動停止プロセスに入った。地震発生から数秒後には制御棒が炉心に挿入され、ウランの核分裂連鎖反応は停止した。今や、冷却システムが残留熱を取り除かねばならない。残留熱負荷は通常の運用条件の熱負荷のおおよそ3%だ。
地震は原子炉の外部電力供給システムを破壊した。これは原発の最も深刻な事故の一つで、発電所の停電はバックアップシステムの設計時に最も考慮される部分だ。電力は冷却ポンプを稼動させるのに必要だ。原発が停止されているため、自分で必要な電力を供給することはもはやできない。
1時間は物事はうまく進んだ。複数の緊急ディーゼル発電機のうちの1つが必要な電力を供給するために作動した。その後、津波が襲った。発電所設計時に想定されていた津波よりもより大きいものだ(上記のとおり16倍だ)。津波は全てのバックアップのディーゼル発電機を破壊してしまった。
原発を設計する際に、設計者は多重制御と呼ばれる哲学に従う。これは、まず想像しうる最悪の大惨事に耐えうるようすべてを設計し、さらにその上で、(そんなことが起こりえるとは信じられない)各システム障害が発生しても対処できるように設計するというものだ。高速の津波による打撃が、全てのバックアップ電力を破壊することもそうしたシナリオの一つだ。最終防衛ラインは全てを第三の格納容器(上述)の中に閉じ込めるということだ。第三の格納容器は、全てが混在していても、制御棒が入っていても出ていても、炉心が溶融していてもいなくても、全てを原子炉の中に封じ込める。
ディーゼル発電機が故障した際、原子炉のオペレータは非常用バッテリパワーに切り替えた。バッテリはバックアップのバックアップの一つとして設計され、8時間にわたって炉心を冷却する電力を供給する。そしてそれらは確かに稼動した。
8時間以内に別の電力源を発見し、発電所につながなくてはならない。配電網は地震によってダウンしていた。ディーゼル発電機は津波によって破壊された。そこで可動式のディーゼル発電機が投入された。
ここで物事が悪い方向に進み始めた。外部発電機は発電機に接続することが出来なかった(プラグが合わなかった)。そこでバッテリが枯渇した後は残留熱を取り除くことができなくなった。
この時点で発電所のオペレータは「冷却喪失イベント」のために用意された緊急プロシージャに移行し始めた。これは"多重制御"の手順に沿ったものだ。冷却システムの電力が完全に失われることはあってはならない。しかし、そうなったとき、次の防衛ラインに「後退」する。我々には衝撃的であるが、これら全ては、炉心溶融をコントロールするために行うオペレータとしての日々のトレーニングの一部である。
炉心溶融について様々な議論が出始めたのはこの段階だ。最終的には、冷却系が復活しなければ、炉心は溶融し(数時間か数日後に)、最後の防衛線であるコアキャッチャと第三の格納容器が役割を果たすことになる。
しかし、この段階において目指すべきは、熱を放出している炉心を管理し、技術者が冷却系を修復できるまで可能なかぎり長い間、第一の格納容器(核燃料を格納するジルコニウムチューブ)と第二の格納容器(我々の圧力釜)が無傷で機能し続けるように管理することだ。
炉心の冷却は極めて重要なので、原子炉はそれぞれの形で複数の冷却システムを有している(原子炉冷却材浄化設備、崩壊熱除去、原子炉隔離時冷却系、非常液体冷却システム、緊急炉心冷却装置)現時点ではこのうちのどれがうまく行かなかったのか、成功したのかは明らかではない。
ストーブの上にある圧力釜を想像してみよう。熱は低いが電源は入っている。オペレータは、あらゆる冷却システムの能力を使って可能なかぎり熱を除去しようとする。しかし圧力が上昇し始める。現在の1stプライオリティは、第二の格納容器である圧力釜と同様に、第一の格納容器の完全性を確保することだ(燃料棒の温度を2200℃以下に保つ)。圧力釜(第二の格納容器)の完全性を確保するためには、圧力を時々逃がしてやる必要が有る。非常時に圧力を逃がす能力は極めて重要なので、原子炉は11もの圧力逃しバルブを有している。オペレータは圧力をコントロールするために時々蒸気を放出し始めた。この時点で温度はおよそ550℃となった。
これが放射能漏れに関するレポートが入ってきた時に起こっていたことだ。私は蒸気放出が理論的に外界への放射性元素の放出と同様であること、またなぜそれを実行し、それが危険ではないものかを説明してきた。放射性窒素は希ガスと同様に人の健康に害を与えない。
この蒸気放出のある段階で爆発が発生した。爆発は第三の格納容器(最後の防衛線)の外の原子炉建屋で起こった。原子炉建屋は放射能を封じ込めるのに何の機能も果たしていないことを思い起こして欲しい。まだ何が起こったかは明らかではないが、次が考えられるシナリオである。オペレータは圧力容器から直接外界中に蒸気放出するのではなく、第三の格納容器と原子炉建屋の間の空間に行おうとした(蒸気中の放射能が崩壊するための十分な時間を確保するため)。問題はこの時点で炉心が高温に達していたことで、水分子が水素と酸素に分離し、爆発性混合物になっていたことだ。そしてそれが爆発し、第三の格納容器の外側、原子炉建屋にダメージを与えたのだ。これは爆発の一種ではあるチェルノブイリの爆発をもたらしたような圧力容器の内部の爆発ではない(設計が不適切でオペレータにより適切に管理されていなかった)。これは福島では起こりえないリスクだ。水素-酸素反応の問題は原子力発電所を設計する時の主要な考慮点であるし(ソビエトの技術者でない限り)、原子炉は水素爆発が格納容器の中で起こりえない様に建築され運用される。外部で爆発が生じることは、意図的なものでは無かったとしても、起こりうるシナリオであり問題ない。なぜなら、爆発により格納容器にリスクは生じることはないからだ。
そして、蒸気を放出することで圧力が管理下に置かれた。圧力釜が沸騰を続けているならば、次の問題は水位がどんどん下がることだ。炉心は数mの水で覆われ、炉心が露出するまでしばらくの時間猶予がある(数時間か数日)。一旦、燃料棒の上部が露出すると、露出した箇所は45分後に2200℃という臨界温度に達する。これが第一の格納容器、ジルコニウムチューブが破壊される時だ。
そしてそれが起こり始めた。冷却水が再充填される前にある程度の(非常に限定的だが)ダメージが燃料棒に与えられた。核燃料それ自体は未だ健在であるが、それを覆うジルコニウムの被覆が溶け始めた。今起こっていることは、ウラン崩壊の副産物──放射性セシウムとヨウ素──が蒸気に混ざり始めたということだ。大事な点として、酸化ウランの燃料棒は3000℃まで問題ないので、ウランは依然コントロール下にあるということだ。ごく少量のセシウムとヨウ素が大気中に放出された蒸気の中から観測されている。
これがプランBへの「GOシグナル」だったようだ。検出された少量のセシウムによって、オペレータは最初の格納容器のどこかが破られたと推測した。プランAは炉心への通常の冷却システムを回復させることだった。なぜ失敗したかは明らかではない。一つの考えうる説明は正規の冷却システムに必要な純水が失われたか津波で汚染されたということだ。
冷却システムに利用される水は混じり気がなくミネラルが取り除かれている(蒸留水のように)。純水を利用する理由は、上述のウランの中性子による放射能化だ。純水はそれほど放射能化されないので、実質的に放射能フリーな状態を維持する。水の中の不純物やミネラルは中性子を急速に吸収し、より放射能を帯びるようになる。これはどんなものであれ炉心には何の影響も及ぼさない。炉心は何によって冷やされるかは気にしない。しかし、放射能化した(うっすらと放射能を帯びた)水を扱わなければならないとなると、オペレータや技術者がより危険になる。
しかしプランAは失敗した──冷却システムはダウンしたか、追加の純水が手に入らなくなった──そこでプランBが登場した。これが現在起こっていると見られることである。
炉心溶解を防ぐためにオペレータは炉心冷却のために海水を使い始めた。我々の圧力釜(第二の格納容器)を海水で覆ったのか、第三の格納容器を海水で覆い、圧力釜を海水で浸したのかはちょっと良く分からない。しかしそれは我々には関係ない。
ポイントは、核燃料が冷却されているということだ。連鎖反応はずいぶん前に停止されているので、今は極めて少量の残留熱が生成されている状況だ。大量の冷却水が熱を除去するために利用される。大量の水なので、炉心は大きな圧力を生じさせるような大きな熱を生成することはできない。またホウ酸が海水に追加されている。ホウ酸は「液体制御棒」だ。仮に崩壊が進行してもホウ素が中性子を捉え、炉心冷却を加速させる。
発電所は危うく炉心溶融になりそうになった。ここで既に避けられた最も悪いシナリオを紹介したい。海水が利用できない場合には、オペレータは圧力が上昇しないように水蒸気の放出を続けるだろう。第三の格納容器は、炉心溶融が起こっても放射性元素を漏出さないように完璧に密閉されている。炉心溶融の後に、中間生成物の放射性元素が原子炉の中で崩壊し、全ての放射性粒子が格納容器の内側に沈殿するまでしばらくの待機時間があるだろう。冷却システムは最終的には回復し、溶融した炉心は管理できる温度まで下げられる。格納容器の内部は清掃されるだろう。そして、格納容器から溶融した炉心を取り外す厄介な仕事が始まる。(再び個体に戻った)燃料を少しずつ輸送コンテナに詰めて、処理工場に輸送されるだろう。ダメージの程度にしたがって発電所の当該ブロックが修理されるか廃棄されるかが決められることになる。
○それでは、これからどうなるのか?
発電所は現時点で安全であり、安全であり続ける。
日本はINESレベル4の事故を目にしている。周囲に影響を及ぼす核事故であり、発電所を持つ会社にとっては悪いことだが、他の誰にも影響はない。
圧力弁が解放されたときにいくらかの放射線が放出された。蒸気の放射性同位体は殆ど全て消滅した(崩壊した)。ごく少量のセシウムとヨウ素が漏出したが、放出時にもしあなたがプラントの煙突のてっぺんに座っていたのなら、あなたは、元の寿命を回復するために禁煙しないといけないかもしれない。セシウムとヨウ素同位体は海に流され、二度と現れない。
第一の格納容器には限定的なダメージがある。これは冷却水に幾らかの放射性セシウムとヨウ素が漏出したことを意味するが、ウランや他の危険なモノ(酸化ウランは水に溶けない)ではない。第三の格納容器内の冷却水を処理する施設もある。放射性セシウムとヨウ素はそこで除去され、最終的には最終処理場で放射性廃棄物として貯蔵されることになるだろう。
冷却水として使われた海水はある程度放射能を持つだろう。制御棒が完全に挿入されているため、ウランの連鎖反応は起こっていない。これは主核反応が起こっていないことを意味し、放射能化には関与しない。ウランの崩壊はずいぶん前に終了しているため、中間生成物の放射性元素(セシウムとヨウ素)はこの時点でほとんど消失している。これは放射能化をさらに減少させる。結論として海水のある程度の低レベル放射能化が見られるが、これも処理施設で除去されるだろう。
海水は通常の冷却水にそのうち置き換えられる。
炉心は分解され、処理施設に転送されるだろう。これは通常の燃料入れ替え時の運用と同じ。
燃料棒とプラント全体は潜在的なダメージをチェックされる。これには4-5年かかる。
全ての日本のプラントにおける安全システムはM9.0(もしくはそれ以上)の地震と津波に耐えるようになるだろう。
私が思うに最も重要な問題は長期に渡るであろう電力不足だ。おおよそ半数の日本の原子炉はおそらく査察され、これにより国家の15%の電力供給能力が失われる。これは通常、ピーク負荷時にのみ利用されるガス発電施設を通常時にも稼動させることでカバーされるだろう。これはピーク時における潜在的な電力不足に加え、電力料金の上昇をもたらすだろう。
炉心溶融が進む最悪のシナリオを通ったとしても、環境中への影響は極めて限定的に封じ込められることに留意して欲しい。40年前に建築された原子力発電所が、想定基準値をはるかに超えるM9.0という地震に遭遇し、その中で機能不全に陥りながらも最後の一線を超えないように現場の方々の不眠不休の努力が続けられている。そんな中で、根拠なく不安を煽り立てるような言説を流すことは、彼らへの冒涜であるばかりか、無用な社会混乱を引き起こし、不測の事態を誘発しかねない。正しい情報を正しく理解して、必要な行動をとるようにしたい。
引用ここまで
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