Nij

2007.03.20
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カテゴリ: 短編小説


「羽ならそこに、あるだろう」

「君ならそこに、いるだろう」




僕は飛びたかった。濁った過去を思い出すように僕は背中にある二本の白い羽を撫でて、スニーカーの音を鳴らせて土を蹴った。



「それじゃ、だめだよ、素足じゃなきゃね」


僕はスニーカーを脱いだ。それから靴下も脱いで、もう一度ジャンプした。両腕をバタバタと動かして。



「それじゃ、だめだよ、手足を動かすんじゃなくて、羽を動かさなきゃね」


僕は四肢の力が完全に抜けるまで目を瞑った。分かったような気がしたから、また、跳んだ。こんどは何も起こらず地面に落ちて、力のなくなった足は重力でさらに重たくなった体を支えきれず、僕はへなへなと座り込んでしまった。



「まだ、だめだよ。呼吸が整ってないんだ。羽に意識を集中させて、心の中をいったん空っぽにするんだ。軽すぎて重たくなるまで、まぶたを下ろして、指先まで透明にする」


僕は言われたとおりにした。目を閉じて深呼吸をして、体中を空っぽにしてひらひらと空を舞う僕の体と羽を思い描いた。そして、少し土色になってきた足の裏を地球から離した。結果は失敗だった。



「はて、どうしてだろうか」
男は首をかしげた。僕も片眉を上げて首をかしげた。

「普通はね、今ので飛べるはずなんだ。素晴らしいフォームだったんだよ。もしかしたら僕よりも上手だったのかもしれない。それほどセンスがあるのになあ、どうしてだろうか」


「どうして、なんでしょうね、まだ余分なものが心に残っているとか」



男は顔を僕の方に向けると、目を丸くした。それから口元を少しゆるませてふふん、と笑うと、僕に言った。


「君、嘘ついたことあるでしょ?」







それじゃあ、空の飛び方は知れないんだ。





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最終更新日  2007.03.20 05:00:11
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