インディー(154)




大した緊張感はなかった


ぷーさんというネーミングは、ずっとプータローをやって来た私には、ぴったりだなどと考えていた。


午後3時過ぎに店に出向き、マスターからメニューの説明と店の接客方針など細々とした説明を受けたが、ほとんど右から左状態。

過去に飲食店で働いた経験は、山ほどあったから、行き当たりばったりでなんとかなるさと考えていた。


夜だけオープンする飲食店。場所は木屋町。と、言うことで、次々に食材や酒の配達の人たちが訪れた。

その一人一人に挨拶をして顔を覚えてもらう必要があった。

飲食店というものは、料理人のセンスと腕前だけで成り立っているわけではない。

どんな仕入れ業者と付き合っているかが、店の商品の質を大きく左右する。

そうした意味で仕入れ業者に顔を売るのは、重要な仕事であると言えた。


「マスター、入っていきなりで恐縮なんですが、ひとつやりたい事があるんですが?」

「何?」

「店で出すコーヒーは、自分でローストした豆を使いたいんですが」

「いいけど、ガスコンロでやるの?」

「いえ七厘で」

「いいけどここは七厘ないよ。それに炭火を使うことに関しては、消防がうるさくてね」

「わかってます。自宅でローストして来ますから」

「費用はどうするの?」

「とりあえず材料代だけいただければ・」

「わかった。評判が良ければ、ちゃんとした値段で交渉しよう」

「ありがとうございます。それじゃ明日、さっそくローストして持って来ます。」

「うん」


なかなかものわかりのいいマスターだった。


さて、あしたは朝から生豆を仕入れてローストを始めよう!と、気合いが入った。


(つづく)



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