親仁の意見-50男の素朴な想い

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February 15, 2008
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カテゴリ: カテゴリ未分類
今週末は、名古屋で過ごします。そんな金曜の晩、近所のシネコンで「母べえ」をナイトショウで観て来ました。上映開始が21:15でしたから、ゆっくり出掛けましたが、席は本当にガラガラで、こんな良い映画なのに、ちと淋しい感じがしました。

映画そのものは、こちらの 公式サイト を御覧戴くとして、感想を何点か述べてみようと思います。山田洋次監督が、「母べえ」たる母親役には「この人しかいない」と決め込んだだけあって、主演の吉永小百合さんの「母べえ」は本当に嵌っておりました。僕も「この人しかいない」と思います。

世に阿ることなく、自分に忠実に生きるドイツ文学者の「父べえ」(板東三津五郎)は、昭和15年2月の夜半、突然踏み込んで来た特高(特別高等警察)に逮捕され、その後2年の獄中生活を経て、昭和17年の1月に獄死します。代用教員を続けながら、二人の娘を育て、一家を支える「母べえ」には、限りなくしなやかな強さを感じました。

獄中の「父べえ」と家族を結んでいたのが、検閲で黒く塗り潰された手紙でした。二人の娘達は、せっせと日常を書き綴っていましたが、女学生の長女「初べえ」は学校で苛められ傷付き、「もう、『私は元気です』なんて手紙は書けない」と、辛い心情を吐露します。それに対し「母べえ」は、「いいのよ。ありのままを書きなさい。父べえも本当の気持を聞かされた方が良いと思うの」と、長女の気持を優しく受け止めました。

「お父さんを心配させてはいけない」と言っても、決して不自然ではない状況ではありますが、本当のことを書かせる「母べえ」には、限りなく深い家族への愛情と、強い信頼に裏打ちされた「父べえ」との絆を感じずにはおれませんでした。そして、「お上」の意向が絶対だったあの時代に、「父べえ」の教え子「山ちゃん」(浅野忠信)や隣組の人達から温かい支援が受けられたのも、「母べえ」の人柄だったのでしょう。

この、「母べえ」を慕っていた「山ちゃん」にも赤紙が来て、出征先の満州から南方に送られる途中、輸送船が雷撃されて戦死したのです。また、二人の娘を見守り、「山ちゃん」が好きだった「父べえ」の妹「久子さん」も広島で被爆し、戦後間もなく息を引き取りました。「母べえ」の一家も東京の空襲で逃げ惑い、死線を彷徨ったのかも知れませんが、そういう場面は出て来ずに映画は終戦後から現代に飛び、「母べえ」の臨終の場面で終わります。

中学で美術を教える二女「照べえ」(実は原作者の野上照枝さん)は、学校から病院へ駆けつけますが、「死んでから父べえに会いたくない。生きて一緒に暮して欲しかった」という言葉に、気丈な「母べえ」がどれだけ「父べえ」を愛し、理不尽な別離に憤っていたかを改めて知らされました。

人生は時に不条理であって、ささやかな家族の幸福も、一方的に引き裂かれてしまいます。そして、残された者達は感傷に浸ることも許されず、生きて行かねばなりません。その中でしなやかな芯の強さを内に秘めつつ、優しい母親として生きて来られた「母べえ」と、「母べえ」を完璧に演じられた吉永小百合さんに心から拍手を送りたいと思います。





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Last updated  February 16, 2008 10:55:21 AM
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