「戦争」って何？/(『ゴルゴ13』第128巻) | アフィリええっと？(笑)

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Feb 11, 2008

ゴルゴ13（128）

私が小学校3年か4年の時だったと思う。
国語の教科書に「折から雨」とか、確かそんな一文があって、先生が「おりから」を使用して何か文章をつくりなさいと言った。

一番に手を挙げたクラスメイトが
「動物園に行った。おり(檻)からライオンが出てきた」
と発言してみんなで爆笑した。

これは単純にウケ狙いのおふざけだったが、教科書の次の作品に進んだ時だったと思う。
戦時中のなんとかいう物語が教材だった。
担任の先生の授業スタイルが「意味の分からない単語があったら前に出て黒板に書きなさい。みんなでその意味について考えましょう」と云うものだった。
前回「おりからライオンが出てきた」と発言したクラスメイトが黒板に
「せんそう」
「ばくだん」
と書いた。

「だって俺分からねぇんだもん」と言い放った。
これは実に的を射たとでもいうか、尤もな疑問である。
「『戦争』ってのは『戦争』のことに決まってるだろ」というのはまったく回答にならない。
もし私が「『戦争』って何？」と訊かれて、明確な返答が即座にできるかといえば、答は"NO"だ。
「『戦争』とは何か」を明確に説明、あるいは定義することのできる大人がどれだけいるだろう？
大人だって「戦争」と云う単語の本当の意味を知らないことがあるのだから、小学生が「『戦争』って何？」と疑問を抱くのはよく考えてみると当たり前のことだ。
その国語の授業は、彼の投げかけた疑問をうやむやにしたまま終わってしまったように記憶している。
私が小学生だった頃はまだ冷戦期だったから「戦争」といえば第二次大戦のような「全面戦争」あるいは「核戦争」といったイメージが先行しがちだったが、「限定戦争」と云う戦闘状態の一形態も存在する。他にも「経済」に於けるある種の状態を「戦争」と呼んだりするし、私の父は外交官だったから少年時代、「外交」が一種の「戦争」である様もわりと身近に見ていた。

「爆弾」に関しても同様のことが言えるだろう。軍事目的で空中から投下する物、手で投げる物、地中に埋める物などに大まかに分けるだけでも一冊の本が出来上がるだろうし、比喩的な意味で使用されることもあれば俗に密造酒の意味でも使用される言葉だ。

さいとう・たかをの『ゴルゴ13』シリーズは私の愛読書の一つだが、第128巻『演出国家』採録の「300万通の絵葉書」にゴルゴ13のraison d'etreに触れているような興味深いくだりがある。
ゴルゴへの依頼ルートを破綻させる陰謀を企てたコンゴ政府の大統領補佐官とのやりとりのシーンだ。
「……俺が、この国に来ない事で、この国の平和が維持されると考えるなら、原因と結果を取り違えている……
世界に俺がいるからテロが起こるのでは、ない。
テロが起こるから、俺が、存在するのだ………」

西アフリカの架空の新興国に、ある財団が大手広告代理店と組んで無名の俳優を特訓して新大統領として送り込んでいたという途方もないプロジェクトが題材となっていて、それが国連主導で行われた「民主選挙」によって選出された大統領であること、つまり「民主主義の内包する矛盾」というものがテーマなのである。
「民主主義をも、超越している男」と云う形容はゴルゴにピッタリだ_
2作目の「S・F・Z(スフォルツァンド)」はナチス・ドイツ絡みだが、これを含めた3作で構成された第128巻は実に示唆に富んだ珠玉の一冊となったと言うことができる。

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「独裁者」と呼ばれるヒトラーはそもそも「民主的な選挙」で合法的に首相になった政治家であり、「反ユダヤ主義」もヒトラーが提唱し、始めたものではなく、当時の欧州の民意の中に潜在的に存在していた物だった。

フリーページ『ゴルゴ13』
その内リニューアルしようかな、と思ってるんですが…。

郵便学者・内藤陽介先生の