ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2012.01.28
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カテゴリ: 社会風俗
庶民生活あれこれ (25)

今日の1枚は、「パリっ子の胸騒ぎ」と題するシリーズから、「黒と白」と名付けられた1枚です。 先ずは絵をご覧ください。

黒と白

正装してどこかへ出かけるつもりのブルジョワの衣服が、白く汚されてしまった様子がくっきりと見えると思います。

19世紀中頃のパリの街路は、まだ汚れ放題汚れていました。馬車や荷車を引く牛馬の糞があちこちに散らばり、それをお構いなしに蹴散らしながら走る車に、誰もが慣れっこになっていました。このままではいくらなんでも衣服が汚れて困ります。特にご婦人の長いスカートの裾や紳士の靴はたまりません。こうして、足元や裾の保護のために、車道と分離した歩道が発達したのです。

左下隅になりますが、2人の男の立っているところと段差になっている街路がチラッと見えますね。2人は歩道上でぶつかったのですね。

作業着姿で、ぶつかったまま急ぎ足で立ち去る男は、その服装からパリの中央市場で働く荷担ぎ人であることが読み取れます。仕事に遅れないよう急いでいるのでしょう。

立ち去る男にぶつかられたブルジョワは、折角の正装を白い誇りで汚されてしまい、振り返って男の後姿を睨みつけ、右手の拳をギュッと握って怒りをあらわにしています。

しかし、相手を呼び止めて抗議しようとはしていません。それは相手がどんなヤツか分からないからなのです。相手がどんな危険な人物か分からない以上、怒りの趣くままに迂闊に声をかけてやぶへびになっては適わない。人口急増期のパリでは、増大する無産市民の大群に、中産階級は不安を募らせてもいたのです。

最後に、この絵に登場するブルジョワは、ようやく正装することが出来るようになった中産階級に属する人物です。当時のパリでは、最上級のブルジョワは、自らの馬車を持っていました。馬車を保持できないブルジョワは、貸切馬車(現在で言うハイヤー)を調達します。その次の層は流しの馬車(これがタクシーに当ります)を利用するのです。



この絵の主人公は、馬車を雇う金もなく、馬車の調達を命じる召使も雇えずにいるが故に、大切な一張羅を汚される悲哀にあってしまったというわけなのです。

こうして、社会的上昇を念願する野心的な若者達にとって、その最終的な目標は、まさしく「馬車が買える身分になりたい」ということだったのです。

古着でも良いから正装を一着持ちたい。それが適うとブレゲの懐中時計がほしい。誂えの正装がほしい。3人の召使を雇いたい。そして馬車が買いたいへと、その社会的上昇に応じて、欲望をエスカレートさせていったのです。





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最終更新日  2012.01.28 19:17:20
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