薬 天 市 場

薬 天 市 場

『キッチンの小窓』


弱ったカラダは、指先から麻痺しはじめる。
頭が鉛にになったように重い。
タバコの煙は換気扇に呑まれていく。

まだ外は暗い。
キッチンの小窓から外灯だけが浮かび上がっている。
その窓から、朝の硬い空気が流れ込んできている。

流しの上にある小さな蛍光灯だけを付けて、その場に座り込む。
アコーディオンカーテンのその向こうには彼女が寝ている。
換気扇の音にまぎれて寝返りをうつ音が聞えてくる。
目を落とし、手には村上龍の「限りなく透明に近いブルー」。

最初に読んだ高校のときを思い出す。
SEX、ドラッグ、暴力・・・高校生の自分に想像さえ難い
内容に興奮と嫌悪を同時にあわせ持った感情を抱いた。
これが権威の芥川賞なのかと衝撃だった。

あのときは、何年か後に女の部屋のキッチンで
これを読んでいる自分なんて想像していなかった。
高校がイヤで小説と深夜ラジオを貪っていた。
野球の練習もだるかった。
隠れてタバコを吸って、マージャンやっていきがっていた。

タバコをネスカフェのコーヒーの空き瓶に入れる。
中の水が黄色く浸食していく。

本のストーリーはドラッグシーンとSEXシーンが繰り返される。
寝起きに読むものじゃないな、
自嘲しながら、ページを進める。

本もまだ半ばで、カラスの鳴き声が聞こえ始めた。
小窓には群青色が広がっていた。

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