　私は鹿児市の住人ですが、生まれ育った故郷の町で過ごした年月より鹿児島市での生活の方がもう長くなってしまいました。ですから、鹿児島市は私の第二の故郷と言ってもいいですね。そんな鹿児島市についてもこのブログでときどき取上げていきたいと思っています。

　それで、今夜は鹿児島弁の話をしてみたいと思います。私が鹿児島に来る前の鹿児島弁のイメージは「おいどんは西郷隆盛でごわす」なんてものでしたが、鹿児島市に来て実際に街で聞く鹿児島弁はそれとは随分と違っていました。それはまた、私たちが「なんばしょっと」「そげんことなか」といった言葉でイメージしている九州弁ともどうも違うようなんですね。

　実際に使われている鹿児島弁は、例えば「おじゃいやったもんせ」(おいでください)、「待ちかねっおいもした」(待ちかねておりました)とか「そんなこつさるっとげんなか｣(そんなことをされると恥ずかしい)、「すったいだれもした」(すっかり疲れてしまった)、「ちんがらっ、なっちょったど」(滅茶苦茶になっているよ)なんて言葉らしいんです。

　「らしいんです」と言いますのは、私は鹿児島に住んで長いのに、いまもってまだ鹿児島弁が使えないからです。それは、職場の人間に他府県出身者が多いからですし、また家の近所の人たちも基本的には標準語で会話しているからです。近所で鹿児島弁を耳にするのは、かなり年配の人たちがお互いに親しく語り合っているときぐらいです。昔は小さいお店なんかに入って品物を買うときに、その店のおばあさんの言葉が全く分からず、仕方が無いので適当に話をごまかして(品物をごまかしたのではないですよ)、店から慌てて飛び出したこともありましたが、いまは全くといっていいほど言葉で困ることはないですね。

　私の二人の息子たちが幼い頃に近所の友達と遊んでいるのを聞いていましても、ときどき「わっぜえ」(すごい)とか「てそい」(面倒くさい)なんて言葉が出たり、電話で友だちの家に遊びに行くことを伝えるのに「いまから来るからね」なんて表現することもありましたが、基本はほとんど標準語でしゃべっていました。それは私の家の近所だけではないようです。鹿児島市のいまの若い人たちの言葉はすっかり標準語化されてしまっています。どうしてこうなってしまったのでしょうね。なんだかちょっと寂しいですね。

　今年の6月ごろに大阪に行ったんですが、電車の中で若い人たちが「そやそや」とか「ほんまほんま」なんて懐かしい関西弁でしゃべっていました。それは関西のお笑い芸人がテレビで大活躍しているからなんでしょうか。それに対して、鹿児島出身の歌手やタレントも多いんですが、彼らがテレビで鹿児島弁をバンバン使っているのを聞いたことはないですね。

　鹿児島弁を無形文化財として保護しないと、このままではいつか鹿児島弁も甲突川に架かっていた石橋のように鹿児島の地から消えて行くかもしれないと、鹿児島弁をろくすっぽしゃべれないのにとても心配しております。

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