280813
田中英生 (ひでお)
洋画展 ~Breath~ (8/10~16) @ 日本橋高島屋6階美術画廊 (日本橋二丁目)
(上質の写実による超現代の禅画とも言うべき。画壇のひとではなく広告業界でデザイナーとして受賞を重ね、平成21年に絵画活動を開始するや、平成27年にはニューヨークAgora Gallery主催のChelsea International Fine Art Competitionで30名の出展者のひとりに選ばれたという昭和34年生まれの俊英。出来のわりに随分安かった。カネがあれば3~4点買ってたな。)
280812
ポール・スミス展 Hello My Name Is Paul Smith (7/27~8/23) @ 上野の森美術館 (上野公園)
(若い女性たちの来場が多い。ファッションを軸にしてアートの概念を広げるイベントだ。今をときめくポール・スミスの出発点はじつに地味で、自分のセンスを存分に生かし続けることで今日を築いていることに感銘をうけた。)
== == ==
280722
ルノワール展 オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵
(4/27~8/22) @ 国立新美術館 1E展示室 (六本木七丁目)
(ルノワール27歳作品「猫と少年」が冒頭に。ピカソの青の時代のような情感こもる写実に驚く。ルノワールはピカソになったかもしれないわけだ。20~30代の肖像画の写実ぶりは、レンブラントを明るくしたような作風で、この写実力がベースにあるから後年の印象派作品群があるのだと納得した。展覧会の華「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会 Bal du moulin de la Galette」がずいぶん大きなサイズなのに驚く。132×177cm である。フィラデルフィア美術館蔵「大水浴」のための習作が魅惑的。「ジュリー・マネ あるいは
猫を抱く子供」は意外に小ぶりで、猫が現代的にかわいい。66歳作品「大きな裸婦あるいはクッションにもたれる裸婦」がうつくしい。他作家作品では Giovanni Boldini「ムーラン・ルージュでの宴の情景」に惹かれた。速い筆致で魔性を醸す。イラストっぽくもあるが、ぼくのストライクゾーンど真ん中。)
280704
MoMA PS1 (2225 Jackson Ave, Long Island City)
(使われなくなった 3階建ての校舎を現代アートの巣窟にした。Cao Fei(曹斐)さんの映像作品がじつに面白く、今回の旅のいい締めになった。平14年作品の Rabid Dogs はオフィスで犬を演じる役者たち。平25年の北京で撮った Haze and Fog はゾンビーシティーの不思議な日常を描いていて、けっこう長篇だが最後まで観た。ジオラマを動かして撮影した LA City や、3D 動画ソフトによる RMB City も。パネル展示とビデオの Vito Acconci: Where Are We Now (Who Are We Anyway?) は昭51作品だが、今でも超先端だ。地下のボイラー室、Lionel Maunz さんの彫刻展示もいい。 都合、今回のニューヨークの旅は 6日間で 28施設を回りました。)
280704
Museum of Sex (233 Fifth Ave., NY)
(なるほど秘宝館にはあらず。先ずポルノ解禁の1970年代に至るまでのいじましいばかりのポルノ刊行の歴史。19世紀の売春宿紹介の小冊子とか、ごくごく初期のポルノ映画とか、面白かった。その上の階はナンセンスアート。そのあと、自然界の動物たちの交尾についての解説。雄どうしがアナルセッ クスするのもフツウだよ~と。日本でいちばん抵抗がありそうなのは、この展示だな。最後はミニ秘宝館で、20世紀初頭からのセックスグッズの数々の小展示。)
280703
Brooklyn Museum (200 Eastern Parkway, Brooklyn, NY)
(行ってみて、よかった。3階の泰西名画のための巨大なアトリアムに度肝を抜かれた。よくこんな思い切った設計をしたものだ。1階で Tom Sachs: Boombox Retrospective の変容するスピーカー群のインスタレーションに迎えられ、5階では Stephen Powers: Coney Island Is Still Dreamland (To a Seagull) のポップアートのインスタレーション。アメリカ現代アートに力を入れている。エジプト関連の展示も充実しているようすだが、疲れたので行かなかった。)
280703
The Jewish Museum (1109 5th Ave., NY)
(ホロコースト博物館みたいなものを想像していたら全然違って、まさに美術館だった。地階にある Russ & Daughters で昼食をとったが、目先が変わっていて、お薦め。Smoked Whitefish Chowder に、ベーグルサンドは smoked sable に goat cream cheese、仕上げは Babka French Toast を食した。)
280703
Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum (2 East 91 St., NY)
(カーネギー家の邸宅の内装を手を入れつつ生かして、とても気持ちのいい充実した現代アート美術館に仕上げてある。気に入った作品は、解説文についている十字の印を特製の電子ペンで触ると、帰国後にもそれらの写真や解説を見ることができる仕組み。美術館の図録は出していないが、かわりにウェブサイトが充実している。1階の Pixar 展も予想外に面白かった。)
280702
Whitney Museum of American Art (99 Gansevoort St., NY)
(中は、日展会場に来たようなしつらえだ。ちょうど6~7階の所蔵品展が Human Interest: Portraits from the Whitney's Collection と題し人物画に特化していて、ぼくのストライクゾーンど真ん中なのだが、疲れてしまって自分自身の感性がにぶってきた。夕方になって少し元気が戻り、飛び入りで名門 Old Homestead Steakhouse の歩道上の席で、ナマはまぐり5個とステーキを食す。)
280702
Rubin Museum of Art (150 W 17th St., NY)
(緻密なチベット・ネパール美術のレベルの高さを再認識した。大雑把な朝鮮美術など足元にも及ばない。地下にキューバの現代アートの小展示あり。)
280702
Anton Kern Gallery (532 West 20th St., NY)
(Margot Bergman さんの顔画。2人の人物をひとつの顔で描くスタイル。 結局この日、チェルシーの画廊街で行けたのはここだけ。独立記念日前のせいか、本来空いているはずの土曜日なのに画廊は軒並み閉まっていた。6軒回って不覚を悟り方針変更。野外展示の Bushwick の壁画アートを土曜に回して、金曜のうちに先にチェルシーに行くべきだった。)
280702
Soho Contemporary Art (259 Bowery St., NY)
(版画作品が中心。接吻するバットマンとスーパーマンの NYT 報道写真に涙する女性のステンシル作品が、欲しくなった。)
280702
GR Gallery (255 Bowery St., NY)
(Franco Costalonga の動くアート。レンズや鏡や傾いた切断面などを生かした作品。この画廊は、画廊巡りツアーの企画もしていて、志が高そう。)
280702
New Museum (235 Bowery St., NY)
(来るのに道に迷った。残念ながら 2~4 階が展示替え期間で休み。1階の廃物集積アートの2人展はおもしろかった。7階の Sky Room の眺めもいいね。)
280701
Ronald S. Lauder Neue Galerie (1048 Fifth Ave., NY)
(Gustav Klimt や Oskar Kokoschka 作品、ドイツの工業デザイン展示など。ショップはひたすらドイツとオーストリアのアート関連の書籍。Egon Schiele がぼく好みであることに気づく。早崎雅巳さんの作風もエゴン・シーレだね。)
280701
Solomon R. Guggenheim Museum (1071 Fifth Ave., NY)
(時代に先んじて多彩なメディアを駆使したユダヤ系ハンガリー人の大規模個展が螺旋路に展開。Moholy-Nagy: Future Present(~280907)の表題は「未来はここにあり」の意もこめたか。中東・北アフリカの作家による現代アートの紹介もおもしろい。常設展は、MoMA の足元をうろうろしてる感じ。)
280701
The Bushwick Collective (St. Nicholas Ave. et al., Brooklyn, NY)
(地下鉄 L線 Jefferson St.駅一帯の有名な壁画アート群。ばしばし写真に収めた。ガイドブックが与える印象とは異なり、まことにうらぶれた場末。マンハッタンから十数分ほど地下鉄に乗っただけで、駅前すらド田舎だ。)
280630
Museum of Modern Art New York (11 West 53rd St., NY)
(作品ひとつひとつのレベルの高さに圧倒される。今まで自分が見てきたアートが、カスのように思える。15年ぶりに来てみると、規模がデカくて、1日では見きれなかった。 6階、Edgar Degas: A Strange New Beauty(~280724)は、ドガのモノタイプ作品。モノタイプにパステルで加筆したものなど、絶品。 5階、Collection Galleries 1880s–1950s は、所蔵の超有名作品群の常設展。 4階、From the Collection: 1960–1969(~290312)は、年ごとにブースをわりふって 1960年代のアイコンとなる作品を展示。現代アートの原初のかたちだ。)
280629
Dia: Chelsea (545 West 22nd St., NY)
(Robert Ryman 個展。有料。)
280629
Gagosian Gallery: Richard Serra (555 West 24th St., NY)
(巨大なモノリス群。その形状だけ見れば10秒でおしまいとも言えるが、観覧者が見る位置をシフトすることで作品を脳内に創作できることに気がつくと、魅力のとりこになった。作品のイメージはつねに、作家の Richard Serra さんと観覧者の共同制作なわけだ。さらにミクロな視点で、鉄の表面の錆びがつくる抽象画の存在に気がつくや、抽象世界にあそぶよろこびにも満たされる。Richard Serra 作品は、以前 新潟のアートイベントで巨大な迷路ふうインスタレーションを体験したことがある。)
280419 開館50周年記念
美の祝典 I やまと絵の四季 (4/9~5/8) @ 出光美術館 (丸の内三丁目)
(国宝「伴大納言絵巻」上巻の展示あり。LED 照明だからか、細部まで鮮明に見えて感動した。上巻は全長 8.4 m だ。古色蒼然の障壁画を修復・軸装した重文「真言八祖行状図」8幅対。重文「十王地獄図」双幅。)
280412
MY Way 2016 (4/10~17) @ Shonandai MY Gallery (六本木七丁目)
(5人展。田中ゆかりさんの CG プリント作品は、樹脂や金属で作ったモノがそこにあるような質感・照りを、中間色を存分に生かした CG で展開していてみごと。海外アートフェア参加事情について山本秀明さんのお話を聞く。宮本由紀さんが企画している Art Alliance の「アーティスト&美大生のための英会話」講座を知り、参加を申し込むことにした。)
280325
Michael Kenna: Forms of Japan マイケル・ケンナ 日本の形 (3/6~4/9) @ gallery Art Unlimited (南青山一丁目)
(高質なモノクロ写真集刊行記念。写真集をよほど買おうかと思ったが断念。わずか1万2千円ほどだから、買えばいいのにね。)
280322
巽千沙都個展 絶対糖度 (3/22~27) @ The Artcomplex Center of Tokyo, ACT 1 (大京町)
(かわいいセーラー服少女のポートレート。色づかいもきれい。イラストをちゃんと絵画に仕上げていますね。関西で活躍する作家の東京初個展 by TEAM-TAN. 缶バッジを買いました。)
280322
外田千賀個展 ホロスコープの追憶 (3/22~27) @ The Artcomplex Center of Tokyo, ACT 3 (大京町)
(初日の昼休みに行ったのに、あれもこれも売れていて、完売確実。12星座の少女群像。素振りのかわいい「ホロスコープの追憶(天秤)」を購入 (kvindek du mil)
。ぼくの誕生日からいけば「…(双子)」も買うべきなんですが…。外田さんは結婚後、日に2時間ほどは絵筆をとっているそうですが、個展が近づいてここ2週間ほど1日10時間の集中作業だった由。画業を積み重ねる姿、とても立派です。)
280318 中国第12回全国美術展受賞優秀作品による「現代中国の美術」
百花繚乱 中国リアリズムの煌めき All Sorts of Flowers - The Sparkling Garden of Chinese Realism (2/25~4/10) @ 日中友好会館美術館 (後楽一丁目)
(2万点の応募作品からの厳選とあって、作品ごとにさすが腕前は確かなのだが、モチーフに自己規制による「わざとらしさ」を感じてしまう。人物の笑いが、いまだに文革プロパガンダの作り笑いをひきずっているんだなァ。技がみごとなだけに、惜しまれる。しあわせなるチベットを描いた作品が何点もあったが、プロパガンダなんだよ。会場が1階と地下に分かれていて、危うく1階だけで帰るところだった。)
280318
Art Point Selection II 展 (3/14~19) @ Gallery Art Point (銀座八丁目)
(6人展。松岡平四郎さんの、悲哀の情感がしみじみあふれる SF 画「加護」を購入 (kvardek mil + i)
。平成2年生まれ、京都市立藝術大デザイン卒。過去ファイルを見ると、アメコミふうのSFイラストが多いのだが、今回のグループ展出品のうち3点の小品は、みごとなアメコミ超え。ぼくが松岡絵画の初購入者となった。ちょうど作家本人が当番の日でよかった。活躍を!)
280318
西村一成 (いっせい)
新作展 Issei and the Devil Blues (3/7~19) @ 十一月画廊 (銀座七丁目)
(うねり垂れる絵具、パワフル。わかりやすい「泣いた赤鬼」もいいが、情感が噴き出した「泣いたYちゃん」が最高。おカネがあれば買ったんだけどね。昭和53年生まれ、絵画は独学、名古屋在住、本展は東京初個展。)
280309
アーティストと出会う6日間 Matsuya Ginza Art Festa (3/9~14) @ 松屋銀座8階 イベントスクエア (銀座三丁目)
(Eleven Girls Art Collection×薫風展コーナーで多摩美油画2年生の岡部遼太郎さんの「お散歩 ―The series of Tower of Babel―」を購入 (tridek mil + i)
。古典的描法を意識しながら、遊び心のある幻想画を丁寧に描く作家。画中のモノどうしの大小のバランスや位置関係をさらに緻密に設計すれば、大いに伸びるはず。幻想画の写生用に紙製のジオラマづくりを薦めたら、岡部さんも「3-D CG で作画して本画の参考にすることを考えていた」と言う。 ガラスアーティスト@GINZA展コーナーは、松尾一朝 (いっちょう)
さんの「ハニカム小箱」など、蓋を開けると視線が引き込まれてしまう美しさで、ほんとは2~3点買いたかった。吉田成美さんは大阪藝大ガラス工藝卒、「足の箸置き」など大根足をアートにもした。笹川健一さんは多摩美工藝 院修了で、表面に黒い灰の層を残した藍色のガラス器に魅せられた。)
280204
大久保如彌 (なおみ)
| This Is Not My Life (1/16~2/13) @ Gallery MoMo Ryogoku (亀沢一丁目)
(小品 “Greeting Card From Paradise” を購入 (sesdek mil + i)
。個展空間に入ると視界の両側に鏡対称な室内風景(髪隠しの少女たち入り)。その室内インテリアは、画廊の奥スペースに実際に設 (しつら)
えられたものそのままだ。昨年に実際に画廊で設えをして写真に撮ったものが大久保写実画のベースになっている由。奥の壁面は髪隠し赤頭巾ちゃん群像の “The Girls Are Walking to the House with the Wolves.” )
280105
ACT アート大賞展 ACT Art Award (1/5~9) @ The Artcomplex Center of Tokyo (大京町)
(昨年の大賞展では大倉ななさんに注目し、その後 わたしの企画に参加もしてもらったが、今年はそこまでの発見作家はいなかった。このまま描いていけばいけるぞの作家は、写実水彩の久下じゅんこさん、タロットカードふうの中野緑さん、怪奇油画の柳尾明さん。目無し群像を描いた稲村めぐみさんもインパクトあり、他の作品も見てみたい。澤畑直美さんの描くパステル+水彩の女性も気に入ったが、身体部位にサイズのバランスがよくない部分あり、惜しい。)
280105
パリ・リトグラフ工房idemから ― 現代アーティスト20人の叫びと囁き 君が叫んだその場所こそがほんとの世界の真ん中なのだ
(27/12/05~2/7) @ 東京ステーションギャラリー (丸の内一丁目)
(存外に収穫の多い版画展だった。注目作家は Barthélémy Toguo, Jean-Michel Alberola, JR, David Lynch, Pierre La Police. ピエール・ラ・ポリス作品は脱力系マンガもうまく取り込み、新鮮感あり。)