アクティブバース体験記

アクティブバース体験記

第一子の出産



12月○○日

AM6時。

出産予定日の9日前。

腹痛で目が覚める。かなり強烈な下痢の痛み。トイレに駆け込んだ。

しばらくトイレにこもるが痛いだけで何も出ず(汚くて失礼!)、そのうち痛みはひいていった。

あぁ、良かった、寝るか。と布団に入った途端、またもや腹痛が!

こ、これは、まさか!・・・

「ゆうべ食べたフグの刺身にあたったのか!!」

ど、どうしよう・・・臨月でフグ毒に当たったなんて、しゃれんなんないヨ!

不安にかられ、実家へ電話した。

私「お母さん、すんごいお腹痛くて、昨日食べたフグにあたったかもしれない。」

母「何やってんの!なんでこんな大事なときにフグなんて食べるのサ!!」

和食の板前をしている弟に電話を変わってもらった。

弟「フグ毒ならもう死んでるよ」

ふぅ助かった。フグにあたったのではなかった。

・・・ってことは!? これはもしや陣痛?でもこれって、下痢の痛みだよ?

昨日までの前駆陣痛は生理痛の重いやつみたいな感じだったけど、今日のは下痢の痛み。

そうこうしているうちにも、痛みは繰り返しやってくる。

夫を起こすことにした。

私「ねぇねぇ、お腹痛くて、陣痛かもしんないんだけど・・・」

夫「ふぁ~まだこんな時間だからもう少し寝るね」

夫は寝てしまったので私ももう一度布団にもぐりこむが、お腹が痛くて眠れないので起きて朝食をつくる。

夫を起こして朝食をとり、まだ産院に電話するほどでもないと思い、ラジオ体操や片付けなどをする。


AM10時頃、やっと産院に電話。

5分おきくらいに下痢のような痛みがあると伝えると、荷物を持って受診するように言われる。

家から産院まではけっこう遠く、車を持っていないのでタクシーか公共交通機関を使わねばならない。

まだ余裕があったので、夫と二人でボストンバッグを抱え、地下鉄・JR・バスを乗り継いでいくことにした。

JRを降りたところで大分痛みが強くなったので、そこからはタクシー。

女性運転手さんに、「これから出産ですか?陣痛の痛みは・・・死にますヨ」と脅かされる。


PM12時頃、入院。

まずは助産士さんに案内されて、入院する部屋を選ぶことに。

部屋はみな個室で、和室・洋室・特別室から選べる。

和室は個室料1000円、特別室でも3000円と大変リーズナブルである。

私は普段から畳の上で寝ているので、落ち着ける和室を選んだ。

陣痛の強さを計るため、その部屋でNSTをつける。

30分ほど計った結果、「陣痛はまだ弱いし、感覚も一定ではないので、前駆陣痛かもしれない。

家が遠いからともかく今夜は入院して様子をみましょう。」と言われる。

ちょうどお昼時だったので、院内のレストランでランチ。

まるでペンションかと思うような素敵なレストランで、野菜たっぷり・ボリューム満点のおいしい食事に舌鼓を打つ。

先ほどよりは幾分痛みが和らいできたので、外出許可を得て産院の向かいにあるユニクロと酒屋をブラブラ。

酒屋で「今夜のおやつ」を物色していたら、陣痛が強くなってきたので急いで産院に戻る。


PM3時

内診すると2センチ開大くらい。

「生まれるとしたら、明日の明け方5時くらいかもしれない」と言われる。

そんなにかかるの~? とちょっと憂鬱に。

早く生まれてほしかったので、産院の階段をのぼりおりしたり、廊下を歩いたり。

あまりの激痛に廊下にうずくまり、通りかかったよそのダンナさんに「大丈夫ですかっ!?」と声をかけられたりしつつも、しばらくは歩いていた。

この産院では一般的な産院にあるような陣痛室というものがなく、自分の部屋や産院内のどこででも、自由にしていてよいのだ。

そしていよいよ出産という時に分娩室に移動するのだが、本人の希望があれば自分の部屋で出産することもできる。


PM6時

夕食の時間。

かなり痛みが強いのでレストランでの食事はやめて、部屋にお膳を運んでもらう。

体力をつけるためにも食べなきゃ! と思ったが、痛みのため吐き気がしてほとんど食べられなかった。

痛みはどんどん強くなり、うずくまって唸りながら、壁に頭をがんとぶつけたりして耐える。

夫に腰をさすってもらうが、余計痛い!

ナースコールをすると助産士さんが来て、腰をさすってくれた。

なぜか助産士さんの腰さすりは、痛みが少し和らぐ。

何が違うのかは分からないが、助産士さんの手は魔法の手だ。


PM7時

そろそろ分娩室に移動して、お風呂に入ってみようか、ということで分娩室に移動。

分娩室は畳の部屋で、浴室がついており、温浴で陣痛を和らげることができるのだ。

(普通の分娩台を備えた分娩室も備えており、緊急帝王切開もできるが、自ら普通の分娩台を選んだ産婦さんは2、3人しかいないとか)

分娩室に入った途端、ものすごい痛みにうずくまり、立てなくなる。

この産院では、「いきまないお産」をしている。いきまないで会陰が自然にやわらかく伸び、赤ちゃんがゆっくりと降りてくるのを待つ出産方法なので、

出来る限り体の力を抜かなくてはいけない。

しかしあまりの痛みにこぶしを握り締め、体全体に力が入ってしまった。

助産士さんはお風呂にお湯をため始めていたが、その様子を見てもう入浴しているどころではないと判断したのか、お風呂はやめることになった。

畳の上に防水シートを敷き、陣痛の合間に下着をはずし、大きなビーズクッションを抱えて四つんばいに。

フリースタイル出産をする産院なので産婦の一番楽な姿勢をとっていいことになっている。

私は分娩室入りする前は、色々な体勢を試して楽な姿勢を探そうと思っていたが、痛すぎて途中で姿勢を帰ることはできなかった。


繰り返し陣痛の波がやってくる。

助産士さんは一時も手を休めず、腰をさすりつづけてくれている。

夫は、額に汗する私をうちわであおぎ、時々ストローで水を飲ませてくれる。

部屋は照明を落とし、薄暗い。枕もとにアロマランプ・・・。

本来動物は夜間に出産することが多い。人間の場合も、暗いほうが出産に有利なホルモンが多く分泌されるらしい。

陣痛の合間には心地よいヒーリングミュージックが耳に響く。


次第に陣痛は激しさを増していき、その痛みはまさに想像を絶するものであった。

まるでケダモノのような絶叫。あらん限りの大声を張り上げ陣痛を耐える。

こんな迫力のある声は生まれて初めて出した。

学生時代に演劇をやっていたが、その時の発生練習の3倍くらいは声量があったんじゃないかと思う・・・。

妊娠中、母親教室で何回かビデオで出産シーンを見ていたが、すごく辛そうに見えていたけど、あれはピーク時の苦しみは写してなかったんだー、と気づいた。

この痛みを私流に表現してみると・・・

例えば、腰の周りにびっしりと何千本もの虫歯が生えていて、それを麻酔なしで一斉に削られる痛み。

例えば、石臼で腰の骨を粉々に粉砕されるような痛み。

とにかく、凄絶としかいいようがなかった。

泣こうと思わないのに、気づけば涙があふれ出ている。陣痛の合間、次の陣痛がくるのが怖い。

あと何分で生まれるのだろう、あと何回陣痛を耐えたらいいのだろう。


力を抜こうとしても、体は勝手にいきむらしい。

腹筋が、火事場のくそ力と言えるくらいの力で勝手にいきんでいる。

肛門から、腸が飛び出すのではないかとの恐怖にも襲われた。(実際、脱腸になる人もいるらしい)

助産士さんは、腰をさすりつつもう片方の手で肛門付近を押さえてくれている。

昼間に勤務を終えたもう一人の助産士さん(この方は妊娠中の助産士外来を担当してくださっていた)が勤務外にもかかわらず応援にかけつけて、手を握ってくれている。


PM9時半すぎ頃、破水。

まもなく、いきみの来ている時に赤ちゃんの頭が見えるようになってくる。

助産士さんに「手を伸ばしてさわってごらん」と言われ、手を触れてみるが、
痛みで何が何だから分からない。

その後、ものの数分で、焼けるように熱く激しい痛みが・・・

「イタイ!! イタイー!!」と叫ぶと、

夫が「もう出てる出てる!」

頭が出たところだった。


PM9時43分

足をバタバタさせながら長男が誕生。

四つんばいからすぐにアグラの姿勢になり、生まれたての我が子を助産士さんから受け取る。

赤黒くてちっちゃい赤ん坊。

さっきまでの陣痛が、うそのようにピタリとやんだ。

和やかな雰囲気になり、助産士さんたちの、夫の、そして私の笑顔。

簡単に赤ん坊と自分の体を拭いてもらい、胸をはだけ、はだかんぼうのままの我が子を胸に乗せ横になる。

温かくって、やわらかい・・・

「感動!!」とかいうよりも、「いや~、ひと仕事終わった~」という満足感が大きかった。

しばらくの間、へその緒の脈動が弱まるのを待ち、夫と私のふたりでハサミを持ち、へその緒を切る。

ここで、先生が初登場。

(分娩中は、トラブルがない限り医師は伴わない。出産介助は助産士の役割だし、男性医師がいるとそれだけで産婦の緊張が高まり、お産のためのホルモンの分泌にも影響するらしい。もちろん、何かあったときにはすぐに診察できるように、別室で待機してくれている。)

先生は、今まで見た中で一番のニッコニコの笑顔でカメラを手に登場、

私と赤ちゃんの隣に夫もねそべって、出産直後の家族写真を撮影してくれた。

しばらくして後陣痛があり(これは生理痛くらいかそれ以下の痛みに感じたので全然平気)、胎盤が出た。

助産士さんが、それを見せてこれが卵膜で・・・と色々説明してくれる。実際に触っても見た。

会陰は、1センチくらい切れたようで先生が縫ってくれた。

会陰切開はしない、というのがこの産院の方針。

ゆっくりお産をして自然に少し裂けたとしても、ハサミで切るよりはずっと軽いし治りも早い。

実際、出産直後から普通に座れたし、他の産婦さんもドーナツ座布団を使っているヒトはいなかった。

処置が終わると、医師・助産士・夫は退室し、
赤ちゃんとふたりで1時間休息をとる。

薄暗い照明の静かな分娩室で、我が子誕生の喜び、陣痛から解放された安堵感にひたる。

赤ちゃんも私もウトウトする。

1時間後助産士さんが迎えにきて、立ってお部屋にいけますか?と聞かれたが
フラフラして立てなかったので車椅子で入院室に移動。

この産院では出産直後から母子同室で、母親と同じお布団で寝る。

出産直後からの母子同室も、私が産院を選ぶ条件にしていたことだ。

10ヶ月間いっしょで、せっかく苦労して産んだ赤ちゃんと産んだ途端離れ離れなんてイヤだったから。

それに、母子同室は赤ちゃんの欲しがる時におっぱいをあげることができ、
母乳分泌を促進する効果がある。

24時間いっしょにいることで、愛おしさも増す。

かわいい寝顔を見ていると、産後の疲れなど気にならなかった。

夫と赤ちゃんと私。

3人川の字で眠りについた。

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: