私と猫たちの9ヶ月間

私と猫たちの9ヶ月間

チビとお引越し



さすがに成人した猫と1Kの部屋に同居するのに狭すぎたので

山手の方の、ボロボロのアパートに引っ越した。

部屋は2DK、トイレは汲み取り、お風呂場にはシロアリが住みついていた。

ちょっと交通の便も悪かったが、この広さで3万円だった。


1階に部屋を借り、窓に猫が通れるくらいの隙間を空けられる鍵をつけた。

チビは出入り自由になった。(ペット禁止だったけどね。)

そして、私は転職し長崎の魚をレストランに卸す会社に入る。

フランス料理やらイタリアンのレストランのシェフに、仕入れた魚の

良さをアピールしながら、電話で営業する仕事だった。

(今でこそ、テレビによく出るシェフとも話していた。)


売れた魚を3枚に卸してフィレ状にして出荷するのだけど、

魚によっては身が割れやすかった。

売り物にならないから、よくタダでもらっていた。

他に売り物にならない雑魚やサイズが揃わない魚なども格安で購入出来た。

その恩恵をチビはいっぱい受けていた。

チビの一生のうちで、一番幸せな時だったと思う。

高級レストランに卸す新鮮で美味しい魚をとにかくチビはたらふく食べた。


それから数年後、祖母が亡くなり、離れて暮らしていた家族も

いろいろな事情があったのでチビを連れて実家に戻った。

チビはとても賢くて、私に従順だった。

しっかりと引越先にも慣れてくれて、私の帰りを門の上でいつも待っていた。


引っ越したばかりの家だったが、しばらくして私は熊本に一人仕事に行く

ことになる。

実家もまた、父の事情で違う土地に引っ越すことになった。


チビはその間約2年、私と初めて長く離れて暮らした。





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