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聞こえない人と手話
聞こえない人と手話
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2005年07月08日
3歳のろう児のお母さんと
昨日このお母さんが今後の子どもの通園先などについて、相談したいのでということで2時間話しました。私のサインの本で坊やとの会話をスタートされたと思いますがこの日が初対面です。
聞こえる家族に聞こえない赤ちゃんが生まれると、お母さん初め、周りの人の動揺は察するに余りあります。でも動揺したり、障害を受け入れられないでいても、子どもはどんどん成長していきますので、年齢に対応した育児が必要です。
今は聞こえないと分ったら、すぐに通園する場がありますし、ろう学校でも早期教育を受けることができます。
お母さんの悩みはろう学校の幼稚部に入れるか、聞こえる子と一緒の保育園、幼稚園に入れるかでした。どちらも一長一短があり、その子の性格とか、様々な条件を考えて決めることでしょう。私がアドバイスできることではありませんが、この子が学校に入る頃には、先生の話は聞こえない生徒の机の上のパソコンに文字化されてでるようになっていることでしょう。(ある大学で今春から導入されている)
その時必要なのはその日本語を読みこなす言語力が一番大切だと思います。
「もし私が聞こえない赤ちゃんを持ったら、このように日本語を教える・・・」
という話をしました。
帰り際に可愛い手に「I Love You」のサインを教えて、「好き」の手話で意味を説明したら、肩をちょっと上げてはにかんだ表情。私が嬉しくなってしまいました。こんな可愛い子と手話でお話できて楽しいひと時でした。
2005年06月10日
手話 ろう学校に中で
今日はろう学校の小学部の授業をみる機会がありました。
以前はろう学校の中では手話が禁止で口話(相手の口の形で話していることを読み取る)だけでしたが、今はどの程度手話が使われているのか興味がありました。
1年生は2クラスあり、生徒は4人と3人で先生はそれぞれ2人。下を向いて数字の書いてあるカードを並べたりしている生徒の頭の上から大声で指示する先生。もちろん生徒は聞こえないので、指示されたこと分らず。隣のクラスの若い先生はきちんと子どもとアイコンタクトととって話していました。
6年生も算数。3クラス。生徒は2人、2人、1人。先生は1人づつ。
数字はどの先生も手話を使っていましたが、話すのは口話がほとんどの先生、キューサイン(子音を手で表す)を使っている先生、手話と口話が半分ずつの先生と同じ学年でもコミュニケーション手段はまちまちでした。
生徒の読み取りの得意な方法に合わせているのか、先生の得意な方法で教えているのか?(前者であることを願います)
ろう学校には手話通訳ができるくらいの先生はごくわずかです。
今後、ろうの先生がもっと増えること、手話をマスターした先生が増えることを聞こえない人たちは望んでいます。
特殊教育に新免許制 2005年5月17日
盲、ろう、養護学校の先生になるには特殊教育免許(これからは特別支援学校教諭免許)が当然必要と、我々一般人は考えるのですが、現在は普通の教員免許でOKなのです。というより先生の採用が少なくなった数年前には「特殊学校で3年間‘我慢’すれば普通の学校の先生に採用される」という噂が飛んでいました。
生徒にとっては大迷惑です。もっとも特殊学校で教えることの意義などを感じて、ずっと残っている素晴らしい先生もたくさんいらっしゃいます。(ろう学校の場合で特殊教育免許を持たない先生は38.5%)
以前、ろう学校の先生が身分を隠して、私の担当していた手話講座に通っていました。(ろう学校では手話禁止の時代に)生徒とコミュニケーションをより多くとろうとする先生を嬉しく思っていたのに、すぐ養護学校に転勤。
また盲学校に20年近く勤務していた数学の先生が、突然ろう学校に転勤させられ、「自分が話しても生徒は聞こえず、生徒は手話で話しかけてくるが自分はさっぱりわからず、パニックです」といって手話講座に4月入られたのですが、すぐに講座はやめてしまいました。その後この先生はどうやって数学を聞こえない生徒に教えたのでしょうか?生徒が可哀想です。
50年ぶりに改革されるようになったのは、保護者から「きちんとした知識を持つ教員を配置して欲しい」という声もあったとか。当然です。遅い!
手話通訳者のいない愛・地球博 2005年04月19日
愛・地球博が始まって25日で1ヶ月になります。毎日毎日、今日の入場者は何人と発表されています。そして多くの人が並ぶのに時間をとられ、高い入場料で見れるのはほんのわずか。協会は1日8万人を想定しているようですが、それならその人数の時はスムースに見れるようにして欲しいですね。「今日は10万人」という日は並ぶのは仕方ないと諦めますが。運営のまずさばかりが目に、否耳に入ります。
この万博は障害者も楽しめるようにとバリアフリーをうたっています。
計画段階で障害者から意見を聞き、会場は作られました。車椅子の方にと段差をなくしたり、視覚障害者にはハイテクを使ったものが用意されたり。しかし聴覚障害者のための手話通訳は配置されていません。(開会式のみついていました。コーラスに手話がついていたり、両殿下はじめ来賓の方全員が‘I Love You’の国際手話をしていたのはなんだったのでしょうか。)
ただボランティアの中には手話ができる(レベルはいろいろ)人はいますが、「手話ができる」、あるいは「手話通訳ができる」として登録してあるわけではありません。
手話通訳設置は協会から「予算がない」という理由できられてしまったようです。会場に来た聴覚障害者から不満の声がいっぱいと聞いています。
映像にも字幕が英語、中国語、韓国語で日本語がついていないので日本の聴覚障害者は楽しめないのです。
聴覚障害者のみなさん、不満を手話の出来るボランティアにぶつけないでください。協会の人に要望を出してください!
赤ちゃんの聴力が心配なお母さん 2005年04月07日
いろいろなところで講演会をさせてもらっていて、気になっていることがあります。
来てくださったお母さんのなかに赤ちゃんの聞こえに不安のある人や聞こえないと診断されている人がいらっしゃることです。
私が手話通訳者でいつも聞こえない人と接していることを知っていることと、聞こえない人の言語である日本手話を使ってのサインだからでしょう。
医学の専門家ではないのですが、生まれて聴覚障害があるといわれたり、聞こえないかもしれないと不安に思っている人には、何処へ相談や検査にいけばいいのか、どんな検査方法があるのか、成長過程では何をしたらいいのかなどはお話できます。聞こえない子どもを持ったお母さんたちを沢山知っていて、どうしているかも見ていますから。
質問時間内にはしにくいので終わってから聞きにこられる場合が多いのですが、充分時間が取れないときもあります。
是非始まる前に言ってくだされば、きちんと答えるに充分な時間をつくります。
そんな不安のある人は当然しかるべき医療機関などで、きちんと検査してもらって今後のことを相談されていると思っていたのですが、先日の講演会で「医者から大きな声で繰り返し話しなさい」と言われていると聞いてびっくり。その人は耳鼻咽喉科に行っているだけらしいのです。耳鼻科の先生は中耳炎とかの耳の病気は治せますが、聞こえについては無理。大声で話して聞こえるかどうか(音ではなく、言葉を聞き取れるのか)の検査が必要です。でもお母さんはもっと知識、情報がないのは当然ですから医者がアドバイスすべき問題なのに・・・と思ってしまいました。(こんな医者もいるのかと腹立たしい)
10分くらいで充分答えれなかったことが気にかかっています。毎日毎日は、やり直しがきかないこともあります。(特に赤ちゃんの時は)私の経験でよろしかったら遠慮なくどうぞ。
サインの講座にも聞こえない赤ちゃんが来ていました。笑顔のバリエーションがとても多い素敵なお子さんで、お母さんも手話を一生懸命覚えて会話していましたよ。
大学での手話通訳 2005年03月16日
日本IBMが講義で教員が話した内容をリアルタイムで、大きな字幕スクリーンに映し出すシステムを開発したと昨日の新聞で見ました。
私の知っているある大学の話です。
15~6年前、ある聞こえない人から聞きました。「大学に入ったのに、講義には手話通訳もノートテークのサポートもなく、授業の内容が全くわからず、高い授業料を払ってくれた両親に申し訳なかった」と。(聞こえないと分っていて合格させて情報保障がないとは)
その後、同じクラスの学生がノートテークで助けるようになったが、自分も講義を聞く権利があるとなり、学生が担うのは止めになりました。次がボランティアで手話通訳をつけるようになりました。(この頃私も行きました)
そして今は大学側が手話通訳にお金を払ってつけるようになってきました。
しかし通訳というのは、英語通訳でも中国語の通訳でも、聞いた内容が自分で理解できないときちんと通訳できません。ですから大学の講義の通訳は手話が上手だけでは無理なのです。
これからはIBMが開発したシステムが、全ての聴覚障害者の通う大学に設置されるようになれば、聞こえない人が教育を受ける場がうんと広がります。
長野大学がこの4月から1講座で採用するとのことです。
医学の進歩で「音のある世界」へ 2004年12月18日
14日の新聞に「聴神経に障害がある人のために人工臓器‘聴性脳幹インプラント(ABI)’という装置を脳内に埋め込むと隣の部屋の小さな音まで聞こえるようになる」という記事がありました。
私が手話を学び始めて、耳のことを学んだ頃(20年くらい前ですが)は外耳と中耳の障害は補聴器でカバーできるが、内耳の障害は手当てがないといわれていました。その後内耳の蝸牛の働きの代わりをする人工内耳が開発され、今ではろう学校に入ってくる児童の中のかなりの子どもが、すでに人工内耳の手術を受けています。(蝸牛の大きさは子どもの時から大きさはそのままで、成長後の再手術は不要)
それでも内耳の奥の聴神経に障害があれば、脳に伝わらず、聞こえないと言われていたのです。
この手術が更に普及し、人工内耳や補聴器の性能がアップすれば、「聞こえない世界」はいつかなくなるのでしょうか。
手話に関しては、「音のある世界」にいるが「声のない世界」の人が視覚言語として使っていくのでしょうが。
12月6日は音の日 エジソンは難聴だった 2004年12月06日
今日は発明王エジソンが蓄音機を完成させた日。成功の理由は「耳が悪かったから」。ピアノに身体をくっつけて音楽を楽しみ、音が振動だと体得していたからとのこと。
以前私が和太鼓のコンサートに行く話をしたら、聞こえない人が一緒に行きたいと言われ、びっくり。聞こえないのにどうして楽しめるのか?チケットだって安くないしと思っていたのですが、ホールいっぱいに和太鼓の響きが広がる中、その人は身体全体に響くと言って、その振動を楽しんでいました。ちなみに私は耳で楽しんだだけで、身体でその振動を感じることは出来ませんでした。5感がみんな働くということは、みんなまあまあの程度でしか働かないものですね。
耳の働きは左右に違い 2004年12月05日
耳は両方で同じように働くものと思っていましたが、右耳は主に言語を強調して脳に伝え、左耳は音楽に対して同様の反応をするとのことです。(米カリフォルニア大とアリゾナ大の乳児約3000人に対する聴覚測定の研究から)脳の聴覚中枢にも左右の違いがあり、言語や会話などは左脳が、音楽には右脳が反応しているとされ、左脳は右耳を右脳は左耳を制御している。
二つのグループの会話を同時に聞き取るのは難しいが、キャッチする脳のエリアが違う音楽と会話はOKらしい。大昔、受験勉強の時、ラジオからの音楽を聞きながらの「ながら族」だったのですが、以来ずっと「もし音楽を聴かないで、勉強していたら、もっと上の大学に入れたのでは?」と耳から入れた音楽のせいにしていたのですが、頭が悪かっただけなのだと?十年ぶりに納得。
おめでとう!紀宮さまと手話 2004年11月15日
紀宮さまのご婚約は嬉しいニュースですね。本当におめでとうございます。お人柄の紹介の中に、紀宮さまも手話での問いかけに手話で答えられたという記事を読みました。
ずっと前、日本で世界ろう者会議が東京の京王ホテルで開催された時、紀子さまが出席されていました。その後、ベテラン通訳者と聴覚障害者の方がお住まいで手話の個人レッスンをされていたと聞いています。紀宮さまは皇后さまが声が出なくなられた時、少し手話でお話をされていることを、何かで読みました。
紀宮さまの赤ちゃん、サインを使ってくださるかな?
早すぎる思いですが・・・
パラリンピックとデフリンピック 2004年08月24日
オリンピックで日本は素晴らしい活躍ですね。ひたむきに一つの目的に向かっている姿はやはり感動ものですね。
ところでオリンピックが終わってしばらくすると同じ競技場でパラリンピック(障害者の競技会)があることはもう多くの方が知っていますよね。でもこの障害者に聴覚障害者は入っていないこと知らない人が多いと思います。
聴覚障害者はデフリンピックと言って、今年はオーストラリアのメルボルンで開かれます。ちゃんと夏季と冬季大会があるのです。私は障害別でパラリンピックと一緒の方がいいのにと思うのですが。
国体が終わった後にも障害者のがあります。ずっと前に愛知県で国体があった時、その後」「ゆめぴっく 愛知」があり、通訳として、グランドで沢山の障害者とお話ができ、感動をもらったこと懐かしく思い出しました。
声を出さずに口だけ動かして通話 03月13日(土)
口のまわりの筋肉の動きを読み取って自動的に音声化したり、文字にしたりするシステムが開発されているという記事を読みました。声を出せない場所で「通話」するのに使うらしい。
口の動きで相手が何を言っているかを読み取る方法は、現在ろう学校で取り入れているものです。耳の聞こえない子供たちは、先生の口の動きを読み取ってコミュニケーションしています。
ただ日本語の同音異義語(雨と飴)や口の形が似ている(たまごとたばこ)などきちんと区別できるまで開発が進めば、
聞こえない人にとっても便利なものですね。
ろう学校の先生がこれを使って指導すれば、生徒は文字を見ればいいのですから。
問題はその日本語をいかに聞こえない子供に習得させるかです。やはり音声が入らない子供には手話を使いながら、日本語を習得していく方が早く、楽だと思いますが。
3月3日は耳の日 03月03日(水)
聴覚障害者ボランティアに関わって長い私には、今日はおひな祭りであるけれど、耳の日の方が最近は印象が強くなっています。この日の新聞には必ず補聴器の会社が広告をだしていますよ。
いつも耳の大切さを感じてはいますが、さて耳を大事にするということは、どうすることなのか?と考えてしまいます。
目を大事にする方法は、いっぱい言われていますが、耳の方は、あまり聞いたことがありませんね。
でもケレン・ケラー女史は「耳と目とどちらか障害がなくなるとしたら?」との問いに「見えるより、聞こえるようになりたい」といわれたのです。
そして「見えないことは物を遠ざける。聞こえないことは人を遠ざける」と言われました。
耳を大事にするために気をつけることを考えてみる日にしましょう。
「ことば(手話)の花束のプレゼント」 2003/12/24
クリスマスのプレゼントを誰に何を贈るか考えるのは楽しいこと。日本には16世紀にザビエルによってキリスト教と共に‘クリスマス’は入って来たがその頃にはプレゼントというのはあったのでしょうか。
この1年、手話を通じていろいろな人と出会えました。今は手話をテレビから覚えている人、インターネットのHPで覚えている人と手話を学んでいる人の多さを嬉しく思っています。でも覚えて実際使っている人は?
多分、手話は耳の聞こえない人に対して使うものと考えられているのだと思います。
あなたの回りに聞こえない人はいなくても、耳が遠くなったお年寄りに、まだ声を上手にだせない赤ちゃんに声での日本語と共に、手で手話を一緒に表してください。手話を表す時は自然に表情も豊かになります。
この豊かな表情が相手の心に届く時、これがなによりのプレゼントになるでしょう。せっかく覚えた手話を花束にして、プレゼントしましょう。
「‘聞こえている’と‘聞いている’」 2003/12/9
広い会場の隅で友達と話していたら、聞こえない人が「さっき、あちらの舞台では何を話していたのか?」と聞いてきた。「えっ、友達と話していたので聞いていない」と答えたら、「健聴者なのに聞こえていなかったの?」といわれ、「聞こえていたけど、聞いていなかった。」という説明に苦慮した。分ってくれたかな?
人の耳は本当に精巧な機器。鼓膜が破れるほどの大きな音は自動的に小さくして入れる。音を空気振動から骨振動に変え、さらに電気信号に変えて聴神経で脳に伝える。
昔、深夜放送を聴きながら受験勉強をしていて勉強に集中すると机の上においたラジオの音が全く入っていないことに
ふと気づく。目の前の音を脳に届けていない。
どこで取捨選択するのか不思議です。
お互いに向き合って話していても声が相手の脳まで届いているのか不安になってきます。相手の手が携帯電話にあれば
間違いなく届いていないでしょう。
「聞こえない人は話せない?」 2003/12/2
聞こえない人は耳に障害があるだけで、声帯は異常ないのだから、話せるのです。でも自分の声が聞こえないので、どんな声が出ているのか判断出来ないのです。
もし今自分が突然聞こえなくなったとしても話せますね。
中途失聴の人は当然話せますが、生まれた時から聞こえなくても発語訓練(ろう学校で訓練する)によって話せるようになります。
ところがきれいな発音が出来ると聞こえるのでは?と誤解される時があるようです。
公共施設の多くは身体障害者手帳を見せると入場が無料になる所が多くあります。あるろう者が手帳を見せながら、係りの人に「ありがとう」と言ったら、身障者でないと疑われてとても嫌な思いをしたと話してくれました。
聞こえないってどういうことなのか理解するのがなかなか難しいのですが、聞こえない人の多くは話せるということを分ってください。高齢者で耳が遠くなった人でも話すことは
できます。もしこんな人が話さなくなったら、心を閉じてしまっているのです。身振りをつけてでも話しかけてあげてください。
「ミスとエラー」 2003/11/29
「人間のすることにはミスがあって当然」という。
日本語の「ミス」の使い方は英語の本来の意味よりずっと幅広く使われている気がする。(和英で「ミス」をひくと「ミステイク」も「エラー」ものっている。)
例えば、医療過誤はミスでなくエラーだと言われたのを聞いた。原義は「ミス」は「意に反して~しそこなう」、「エラー」は「基準から逸脱した間違い、誤り」とある。
日本語にするとどちらにも「間違い」「失敗」「過失」といった言葉が並んでいる。
手話も「間違い」と「失敗」は当然違う。「ミス」ヤ「エラー」を日本語で聞いた時、文脈からどちらの手話を選ぶのか、否「手落ち」という意味の時もある。
通訳の時「言葉選びに‘エラー’がないように」否「‘ミス’のない言葉選び」日本語って難しい!
ところでH2Aロケットの打ち上げ‘失敗’はどっち?
「国立国語研究所と日本手話研究所」 2003/11/26
国語研究所が分りにくい外来語を減らすための日本語の言い換え語を提案している。
「オンライン」を「回線接続」とか、「データベース」を「情報集積体」とか。しかしどの語が分りやすいかは文脈によるので、これと一つに決定するのは無理があると思う。
国の機関がどう決めようと定着する言葉は定着するし、消える言葉は消える。
手話にも同じことがいえるのです。
どんどん新しい言葉が増えていくのため、手話研究所で、その日本語に対する手話表現を創っていく。
最新作は「ペイオフ」「ダンピング」「デフレ」。
これらも日本語と同様、普及するものもあるが、使われないまま消えていくことも多々ある。
言葉を使う時、文脈のことを考えるのは当然だが、誰を相手に使うのか、専門家にか、一般市民にか、子供にかなどを考えることが最も大切なことと思うが。
誰に渡す花束かによって選ぶ花は違ってくるはずです。
「手話の出来ないろう児と遊ぶ手話の出来る友だち」2003/11/14
手話講座に子供がろう学校に通っているお母さんが数名いる。受講のきっかけは「子供と手話で話したい」ではなく「子供に手話を教えたい」が多い。
あるお母さん「近所の子が息子(小2)と遊んでくれる。その子たちは手話を使ってくれるのに、聞こえない息子が手話を使えない。聞こえる子とも遊んで欲しいので、手話を教えたい」
一般の人は不思議に思われると思うが、現在ろう学校では、手話は教えていない。手話を使って教えている学校はある。
しかしその手話は先生が考えたサインでホームサインならぬスクールサイン(?)が多くある。
一方聞こえる子供たちは学校の総合的学習で覚えたり、手話を学んだお母さんから教えてもらったり。そこで学ぶ手話は
共通手話(日本語でいえば標準語)が多い。
せっかく手で話しているのに通じないことが起こってくる。
今、これだけ手話が普及し、手話ニュースもあるのだから、
ろう者がいろんな場でいろいろな人と話せるように、まず
ろう学校の先生方が共通手話を使って、否その前に覚えてくださるようお願いします。
「長時間、手話を見るろう者は大変」2003/11/12
ある職場の研修で朝の8時半から夕方5時過ぎまで手話通訳でした。通訳者は3人が交代だから、いいものの、それを見るろう者は自分の目の前で動く手をずっと見ていなければならない。午後になるとあちこちで眠っている人がいる。
しかし彼は眠気を我慢して目をこすりながら、手話を読み取っている。気の毒のなってくる。
以前、やはり一日学校の講義があり、その時のろう者はとうとう寝てしまった。可哀想で、眠っている間のはノートテイクしてあげた。
我々は、眼が疲れたら、閉じて耳で聞いて頭に入れることが出来るが、ろう者は本当に大変です。もっと他にいい方法があるといいのだがと、いつも考える。しかし私も自分が通訳でない時は大量の資料を(当日渡された)読んでおく必要があり、疲れました。
「環境音(周りの雑音)は精神安定剤」2003/11/11
聞こえないAさんとBさんの会話。
A「母はテレビをつけっぱなしでよく寝ている。家族の中で自分だけ聞こえるのでいつも聞いていたいみたい。」
B「(入院中)同室の人はテレビをつけ放しで寝ている。誰かが消すと目を覚ます。寝ているのに消されたのがどうして分かるのか不思議。」
それを聞いていて、否、手話を見ていて
私「聞こえる人は夜は別としても、昼間は周りに少し音があった方が安心して眠れることがあるの」
音を生まれてから聞いたことが無い2人にはこの説明は、理解不可能だった。
周りの音を環境音といって、外の車の音、エアコンの音などで、自分の居る周りの状況を目では見えないところまで音で確認して落ち着けるのです。
以前、耳に障害のある幼児が通うセンターに全く音のない部屋(6畳ぐらい)があって、入ってみたが、一人でいると15分以上いられなくなった。
音のない世界での生活ってどんなのか・・・と考える。
「言語って音声言語だけ?」 2003/11/7
ある全国紙が「言語は音声言語だけ」という考えでコラムを書いたと手話を使う人の団体が抗議を出した。
言語というと一般の人は日本語や英語を考えてしまう。そこに視覚言語の手話が入るとすぐ考えることのできるのは、まだまだ手話に関心のある人ぐらいかもしれない。
人工内耳の問題についての記事だから音声言語だけを言語として書いたらしいが、やはり一言「この場合は・・」と断りを入れるべきだったと思う。
しかし「5歳前に人工内耳を入れないと言葉の習得は絶望」はないでしょう。言葉の習得方法はいろいろあるのです。
耳からだけではないのです。
「声に出す言葉と視る言葉」 2003/9/12
小6の聞こえなくて知的障害の子供のお母さんが「子供に話かけても返してこない。話かけても無駄のように感じてしまう」と悩みをはなした。もちろん聞こえないから声が耳から入るのではなくお母さんの口の動きでなんて言っているかは分かっている。しかし返してこないのだ。返せないということは意味が分かっていないこととお母さんは考えている。
横で聞いていたろう者の若い女性が「そんなことないよ!彼に先日‘待って’とか‘食べる?など手話で言葉を教えたら、5~6回で返してきたよ」とのこと。
いろいろな場面で日本語を声に出せなくても、身振りや手話でかえせることが多くあると感じている。
私自身、かなりの日本語を暗記しなければならない時は、手話を付けて覚えた方が覚えれる、と実感している。
「耳って疲れる?」 2003/9/10
手話を長い時間、見ていると、目が疲れる。聞こえない人は一日、目で情報を得ているのだから、さぞ目が疲れるだろうと思って聞いてみたら、タイトルのように「聞こえる人は、ずっと聞いているから、耳が疲れるの?」と聞かれた。
目は疲れたら、閉じることができるが、確かに耳は閉じることはできない。いろんな音が聞きたくなくても入ってくる。
しかし‘耳が疲れた’という感覚はない。
どうしてなんだろうか・・・
「‘少し’と‘少しだけ’」 2003/10/4
少ししか分かりません」 「少しだけ分かります」
この‘しか’はなかなか難しい言葉です。
前者を手話で表す時は、その意味をとって<少し><わかる>か<すこし><だけ><分かる>に言い換えて表すのだが、「わかりません」の音声につられて、<すこし><だけ><わかりません>と(ほとんど分かる)の意味に変えてしまって、見ているろう者を混乱させている人が時々いる。
ろう者にとっても文章で「・・・しか・・否定」が「少し分かる」の肯定の意味ととれない人も結構いる。
我々が何気なく使っている‘しか’は日本語が苦手な人にとっては曲者なのです。
相手の言語力を考えて‘しか・・・否定’か‘だけ・・・肯定’か選んで伝えましょう。日本語って難しいのです!
「好きと嫌いのあいだ」 2003/10/23
近テレビに字幕が付いた番組が増えてきた。
(といっても文字放送用のアダプターを付ける必要がある。目の見えない人には副音声でシーンボイスがながれている)
ある40代の聞こえない人の声。「字幕が付いたことで語彙を増やすことができ、映像と一緒に目に入ってくるのでその言葉をどんな時に使うのか、どんな感情を表す言葉なのかを学習でき一石二鳥。そして好きと嫌いの間にいろんな感情があることを知った。」というのを聞いて私のほうがびっくり。
「好きかといわれれば好きかな」「嫌いというわけではないが・・・」「好きでもないし、嫌いでもない」
好きと嫌いのあいだを表現する言葉はいろいろある。
しかしろう者の中にはこんな日本語が苦手な人が多い。
「いるのかいらないのか」「行きたいのか行きたくないのか」二者択一の世界。0か1かのデジタルの世界。
でも最近は聞こえないとかに関係なくこのデジタル人間が増えているように感じるのだが。
「漫画の効用」2003/10/28
読書週間です。私は積読の山の整理の時期でもあります。
漫画はことばを覚えるのに役立つとろう者はいいます。
(テレビで映像と共に字幕を見ると言葉の使い方が分かるのと同じです。)
幼児期の絵本から始まって、字が読めるようになったら、一人で漫画を読む。その中の会話で使われている言葉の使い方とその時の感情などを絵で確認できるのです。
言葉を習得する段階で大いに役立つ。
しかしテレビと違って音がないので、擬音語や擬態語が使われることが多い。ろう者にとって音を聞いたことが無い擬音語は苦手、擬態語は理解が難しい。
あるろう者は漫画の中で静かな場面で「シーン」と書いてあるので、静かな時は「シーン、シーン」という音が聞こえていると大人になるまで思っていたとのこと。
エッ!ドキッ!ウーン。
「ろう学校のバンド演奏」 2003/10/26
今日、あるろう学校の高等部の生徒による演奏を聞いた。
ボーカルはピンクのドレスを着た女生徒。「川の流れのように」など数曲歌った。先生の指揮とドラムの響きでリズムはぴったり。しかし音程は自分の声が聞こえないからはずれるのは仕方ない。歌詞も大きな声なのだが不明瞭で我々にはわからない。
でもみんなとても楽しそう。大声を出すということは、聞こえる、聞こえないに関わらず快感なのだと実感。もちろん手話も表しているのだが、大きな音と声に圧倒されてか手話が小さくなっていた。40分間の一生懸命で楽しそうな演奏に客席から大きな拍手がありました。
「重複障害児とボランティアのお姉さん」 2003/10/31
支援費制度がスタートしてろうで知的障害のA君をろう学校に迎えにいってデイサービス事業所まで連れてくるボランティアがある。20代の若い人ばかり。彼女たちがろう学校へ迎えに行くとA君はとても嬉しそうで、帰りお姉さんと話しながら(全員手話ができるので言葉は手話)帰ってくる。
「あそこは薬屋さん、あれはバス停、あっバスが来た。ここは病院、アッ!タクシーが来た」とか。この短い時間でA君は言葉をかなり習得しているらしい。
もちろん学校では専門の先生が付きっ切りでいろいろなことを教えているのだが、若いお姉さんみたいな人との会話からの方が言葉がスーと入っていくよう。
学校では先生、家では両親とのコミュニケーション。友達との会話は少ない。やはり年齢差の少ない人との会話の中で楽しみながらのほうが言葉の習得はできるのではと考える。
学校の先生がやきもち焼いているとか。
「若者との言葉の壁」 2003/9/25
大学を出て、専門学校に行っている聞こえない人と話した。
まだ社会に出ていない彼女の手話は友達同士で作ったと思える手話が多い。日本語を獲得してその手話を知らないときは仲間で作って、使っている。現在ろう学校で手話は教えてはいない(使っているところはあるが)ので、共通手話がなかなか広まらない。
でも社会人になった聞こえない人は社会で使われている手話を覚えていく。手話通訳者も聞こえない社会人から手話を学んでいくので、お互い通じる。
彼女の手話を見ていると、成人のろう者と若者のろう者ではことば(手話)が通じないことが多いだろうと想像する。
健聴者の世界でも若い人がどんどん作っていく日本語が、大人にはさっぱり分からないことが多々ある。
この壁はいつの時代にもあったことなのだろうか。
「電子辞書」 2003/9/30
3年前に韓国から来たろう者と食事した。キムチは三食とも食べる。チジミは、お茶とおしゃべりタイムに欠かせないとか、ビビンバは家庭ではあまり作らない。カルビは夕食によく作るメニューなどなど。
彼女は日本での生活で区役所へ行くときなど、職員が筆談で書いてくれる日本語が理解できない。といって手話通訳者が行っても日本の手話がわからない。今一生懸命日本語を覚えている。その必需品が電子辞書。
私が質問すると韓国語で捜し、日本語で意味が書いてあるのを見せてくれた。見出し語は韓国語.こんな便利なものがあるのだと感心。そして携帯のメール。
ろう者は耳から日本語が入らないので、日本語獲得が難しい面があったが、手元に日本語を目で見るものがあり、本当に
便利になったと改めて実感。
「障害者の就職」 2003/10/2
日本では障害者の雇用を推進するために、障害者の雇用率という法律がきめられている。
聴覚障害者にはなかなか難しい壁がある。それは職場でのコミュニケーションの問題。現在特にコミュニケーションの大切さがいわれている時代、また仕事をチームを組んでやることが多い時代にその会話のやり取りが難しいという理由で、採用されにくい。また電話が使えないという理由で断られる。車イスの人は会社がハード面を改善すればOKだが、
耳の聞こえない人の場合は周りの人の理解というソフト面の
改革が必要なのです。
「風疹が流行」 2003/8/19
今日はお知らせです。
今朝NHKテレビで最近風しんにかかっている人が増えてきたというニュース。何故?と思い見ました。予防接種の制度が変わった時に、そのはざまで接種してない年齢の人が出産年齢になってきているとのこと。
戦後のある時、沖縄で耳の聞こえない赤ちゃんが沢山生まれました。その原因はお母さんが妊娠中に風しんにかかったからです。その年アメリカで大流行していた風疹が米軍関係者によって沖縄に入ってきたのです。その子供たちのためにろう学校が一校建ったのです。彼らを描いた映画が‘遥かなる甲子園’です。
昭和・・年4月4日~昭和62年10月1日生まれの人が(・・の部分見落としました。すみません)予防接種からはずれた人たちだそうです。
風疹は聴覚だけでなく、視覚、心臓などにも障害がおこることがあるらしいので、心配の方は保健所で聞いてください。
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