Uo・ェ・oUくりんだよぉ~ん。爺じぃだよぉ~ん。

192~195:どじ丸が星になった日

どじ丸物語(其の192)どじ丸が星になった日:朝の電話から病院まで

いつものように朝の散歩です。
昨日の夜、決断したはずなのに答えはまだ出ていません。

「どじまる・・・今日お医者さん行こうね、、。」
「・・・・・・」
「どじさんと、さよならになっちゃうかも、、、、」
「・・・・・・」
「一緒に居たいけど、もう苦しませたくないんだよ、、、。」
「・・・・・・」

静かでした。
話をじっと聞いているように思えました。
ご飯を食べてお水を飲んで、どじ丸はまた眠りに入りました。

9時30分を待って獣医さんに電話を入れました。

「もしもし、、、○○です。」
「どうしました??」
「今日は・・・覚悟を決めて電話をしました。」
「どじ丸の床ずれの穴も酷くなってきたし、
      かなり苦しそうにしてるんです。」
「・・・・・・・・」
「診てもらいたいんですが、、、、。」
「予約が1件入っているから、
    待ってもらうようになるけど連れてきなさいよ。」
「でも、頑張ってるネェ~。」
「はい、、ありがとうございます。」

安楽死なんて言葉は出せません。

先生が“まだ頑張れる!!”と口にすれば、
診てもらって家に戻ってくるつもりでもいたのです。
とにかく二人では決められなかった、
それほど重く圧し掛かって来た辛い決断でもあったわけです。

「行くよぉ~・・!!」
「もう、、??」
「早く診てもらった方がいいよ・・!!」

どじ丸を毛布に包んで後部座席へ。
妻は、どじ丸の身体を押さえるんだと言って、
後部座席に座ってどじ丸にぴったりくっついて離れません。

「頼んだよ!!」
「うん、、、、安全運転でね・・。」
「うん、、、。」

ルームミラーをどじ丸が見えるように合わせました。
私達の負い目だったのかもしれませんが、
その顔は何かを察知しているかのように思えました。

「ねぇ~・・・どうするの??」
「何が??」
「どじ丸だよ・・?」
「まだ、わかんない、、、。」
「そうだね、、。」
「先生に聞いてから決めようと思ってる。。」
「ふぅ~ん、、、、苦しめたくないもんね。。」
「それはそうだけど・・・。」

車の中には高田みずえのCDが流れています。
どじ丸が17年前我家に来た時、
私が好きで聞いていたカセットが古くなって聞けなくなってしまい、
レンタルCDショップでやっと見つけてダビングしたお気に入りの一枚。。
車に乗った時、何故かこのCDをセットしたのです。

理由は分かりません。。。

一つ目の架線橋を超えてT字路に、
何時もならスゥーっと曲がるカーブもノソノソとゆっくり安全運転。
後の車は迷惑だったに違いありません。

踏み切りを渡ると5分程で動物病院です。
着いて欲しいような、欲しくないような・・・・・。

「ここ曲がるんだっけ・・?」
「そうでしょ、、。」
「いいのかなぁ~??」
「知ってるでしょ!!」

会話が変でした。

「ここだね、、。」

左にハンドルを切って駐車場へ・・・・。

「どじ丸着いたよぉ~。」
「・・・・・」
「あなた抱いて行って、、。」
「判ってるよ。」
「どじちゃん、、行くよ!・・・抱っこするからね、、。」

病院のドアを開けました。
どじ丸は眠っています。
起きていたのかもしれませんが、私にはそう思えました。


どじ丸物語(其の193)どじ丸が星になった日:腕の中で・・・。

「おはようございます・・・。」
「どうしましたか・・?」
「電話でお話した通り、ずいぶん弱ってしまって・・。」
「床ずれも酷くなって穴まで空いてしまったんですよ・・。」
「こちらへどうぞ、、。」

毛布に包んだどじ丸と私は診察室に入りました。

「私は、、ここでいいよ!!!」

妻は、最悪を怖がって待合室で待つと言い出しました。

「いいよ、、。俺が見るから・・・。」


「ここへ乗せてください、、。」
「はい。」

先生がどじ丸のお腹や背中を触りながら言いました。

「○○さんのわんこみたいになっちゃうとなぁ~・・。」
「床ずれですか??」
「それもあるし・・・・・内臓も大分弱ってるね。。」
「はい、、、おしっこの出も悪いし、うんちは3日に1回。」
「ほんの少し出るだけなんですよ。」
「そうだろうね、、。よく頑張ってるよ、、!!」
「最後までと思って一生懸命やったんですが、
どうしていいのか判らなくなってきて・・・。」
「生かしてあげるのもねぇ~・・・・。」
「痛いとも言ってくれないし・・。」
「どうします、、?」
「今日は電話でも言ったように覚悟してきました。」
「先生が、これ以上生かしておくのが無理だと言うならお願いします。」
「もう、、時間の問題だけどねぇ~・・。」
「私達のいない時に死なせるのも可哀想なんですよ。。」
「あとは、飼い主さんの判断ですから、私は何も、、、、。」

私は妻の方を見たのですが、妻は耳を塞いでいます。

「先生!!お願いします、、。」
「いいんですか・・?」
「はい!!どじ丸も頑張ってくれたし、
    最後まで私が抱いていますから・・・・お願いします。」

“どじさん・・・ごめんね。。これで楽になれるよ。。”

私はどじ丸をしっかり腕に抱きました。

「暴れるといけないから、鎮静剤をうちましょうね。」

鎮痛剤がどじ丸の太ももにうたれました。

「何キロあったかなぁ~??」
「20キロ以上ありましたけど、今は10キロくらいかも・・。」

奥の部屋から薬が注入された注射器を持ってきました。

「いいですね・・?」
「はい・・・お願いします。」

私の目からは涙が止めど無く流れてきました。

「うちますよ・・。」
「はい・・」

どじ丸の前足に注射器が刺さりました。
一度血管を確認するために血液が注射器の中に・・・・。
グゥ~っと薬がどじ丸の身体に入りました。

「先生・・息が止まりました。」
「先生・・心臓が止まりました。」

たった、5秒か10秒の出来事でした。
どじ丸の身体を撫でて上げようとした、その瞬間です。
しっぽをプルプルっと2回ほど振りました。

“どじ丸ぅ~~~。。最後のお別れにしっぽ振ったのか!?”

「終わったよ、、、。」

妻に声を掛けました。
妻はもうグチャグチャな顔をして泣いています。
先生も涙を流しています。

「よく頑張ったね・・。どじくんも○○さんも・・。」
「はい・・・でも、こうなるとは・・・。」
「仕方ないですよ。。自然に生きていれば、
とうに無い命をここまで頑張って来れたんだから・・・。」
「ありがとうございます、、。」
「苦しむのは目に見えていたんだから、
    ○○さんも余り落ち込まないでくださいね・・。」
「ありがとうございました・・・。」

妻を支払いに残して、私だけ外に出ました。

ポロポロポロポロ涙が落ちて止まりません。
「運転できるの??」
「大丈夫だろ・・?」
毛布に包んだどじ丸は眠っているようです。

“今までありがとね、、、。どじ丸・・・。”

車の中で後部座席の妻はどじ丸の身体を擦っています。

「まだ、、、あったかいよぉ~・・・。」

そう言いながら、また泣き出してしまいました。

「帰るよ・・。」
「うん・・・。」


どじ丸物語(其の194)どじ丸が星になった日:それから・・・・・前編。

2001年2月17日土曜日10時00分

どじ丸は天国へと旅立ちました。

後部座席の妻の隣で静かにねむっているどじ丸は、
今にも起きていつものように暴れまわるように思いました。

でも、、、もう目を開けることはありません。

妻は涙をこぼしながらどじ丸を撫でています。

「これからどうするの・・?」
「うん、、?火葬場に行こうと思う、、。」
「そう・・・?」
「もう休みはとれないし、家に置いていく訳にもいかないだろ。」
「そうだけど、、、、。」

このあと暫らく休みがない為、
可哀想だとは思ったのですが今日中に火葬をと考えていた私と、
家へ連れて帰りたかった妻と、この時点でもうすれ違っていたようです。

「どじさん、、、おうちだよ・・・。」

家の前を走り、散歩コースだった田んぼ道を通りぬけて、
ママちゃんちに向けてハンドルを切りました。

「散歩の道だよ。。いっぱい遊んだねぇ~・・。」
「ママチャンちだよ。。ぐるっと回るからね。」

とうとう火葬場へ着いてしまいました。

「受付に行ってくるよ。」
「うん、、、。」


「こんにちは、、、。」
「どのようなご用件でしょうか・・?」
「犬を火葬していただきたいんですが・・?」
「今日は出来ないんですよ、、。月曜日になりますが・・。」
「チョット待ってください、、。」

車に戻って、妻に話をしました。
一度決めたらガンとして動かない私の性格を知ってか、
妻はスンナリ聞き入れてくれました。

「月曜日に頂きに来る事が出来ますか・・?」
「午前中に火葬しますから午後にはお渡しできますよ。」
「では、お願いします。」

お骨を貰うという書類に書きこんで預かり所へ車を進めました。
冷たい保冷庫の中にどじ丸を預けなければいけません。

とても寂しい、
そしてどじ丸に申し訳ない気はしたのですが、
家に置いて誰も居ない時間を過ごさせることもできないし、
ここでも二者選択の決断を迫られたのです。

どじ丸は毛布に包まれたまま厚い袋に入れられて保冷庫の中に。
火葬して骨を拾う時に間違えてはいけないと、
袋の上から私の名前を書いた札を張りつけました。

「宜しくお願いします。。」
「はい、、大丈夫ですよ。。間違いなく火葬させて頂きます。」

深くお辞儀をして火葬場を後にしました。

「月曜日だね、、、。」
「会社の途中で貰いに行ってくるよ。」
「お願いね、、、。」

我家に着いてしまいました。

二人は黙りこくったまま・・・・・・・・
玄関の鍵をカチャカチャッ・・・・ガチャンッ扉が開きました。

ほんとに同時でした。
ほんとにほんとに、いつもの通りでした。
“ただいまぁ~・・・どじさん、、、、、”
“お留守番、、、ご苦労さん・・・。”

もう居ないんだと気がついたのは、
居間に入っていつもの場所にどじ丸の姿が見つからなかったときでした。


どじ丸物語(其の195)どじ丸が星になった日:それから・・・・・後編。

いつもの場所にどじ丸はもういません。

まぁるいクッションも半分に切った毛布も、
寂しそうにその場所に置かれていました。

「なんでお家に連れてこなかったの!?」
「なんでって、、、ちゃんと言ったろ!!」
「可哀想なことするんだから・・・。」
「なにが!?見ていられるのか!?どじ丸のこと・・?」
「一人じゃ嫌だけど・・・・。」
「そうだろ、、可哀想だけどこうするしかないじゃん。。」

私の攻撃にイライラしたのかママちゃん(妻の妹)に電話をし始めました。

「もしもし・・・どじ丸死んだよ・・。」
「・・・・・・・・?」
「○ちゃん(いつもこう呼ばれています)が、
お家へ連れてこないで火葬場へ行っちゃったの・・・。」
「・・・・・・・・?」
「そうでしょ、、、そうだよね!!」
「・・・・・・・・?」
「何を言っても聞かないんだから・・・。」
「・・・・・・・・?」

電話が終わると私への攻撃が始まりました。
どうやら、自分の気持ちと妹の気持ちが一致したようです。

「なんでって言ってたよ・・。」
「なんだって??」
「どうして知らせてくれなかったんだって。。」
「知らせて、どうなるものでもないだろう・・?」
「違う!!家族だったからって・・。」
「それでね、亡くなっていても 姿を見たかったんだって!!」
「そう・・・。」
「千加(妻の名前です)が行った通りでしょ!!」
「そうだね・・。」
「これから、どうするんだって!!」
「お墓作るよ。。庭にね。。」
「ふぅ~~~~~ん、、、。」

暫らくして、今まで使っていた2つのお弁当箱にドッグフードと水を入れて、
クッションのところへ置いて上げました。
勿論今まで使っていた胴輪・首輪も一緒です。

「これから寂しくなるね・・・。」
「うん・・・。」
「月曜日には帰ってくるからママちゃん呼ぼうか??」
「連絡しとくよ・・。」

夕方の散歩の時間になりました。

「歩いてきたら??」
「そうだね。。」
「今日は一緒に行こう、、。」
「うん。」

二人で田んぼ道を散歩しました。

“ここでおしっこしてたんだね。”
“ここで穴に落ちたんだね。”
“ここの田んぼが好きだったね。”
“これ良く食べてた草じゃない??。”

思い出すことばかりです。
散歩が終わって家に帰ると、妻がポツリと言いました。

「明日から私は散歩しないよ。。」
「なんでぇ~~??」
「だって、、、やだもん。。思い出すから・・・。」
「俺だって同じだよ。。」
「いいよあんたは、、、全部自分で決めたんだから・・・。」
「また、そんなこと言ってぇ~~~」
「その通りじゃん。。」
「勝手に言ってろ!!」

妻はどじ丸の寝ていたクッションを前にしてメソメソしています。
強がりを言っていた妻が、これほどまでに落ち込むとは思ってもみませんでした。

先が思いやられる夜になりそうです。

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