急にはっきり気づいた、

もう帰ってこないこと。

初めからわかっていた。







人生って、これやから面白い。



何年か前に付き合ってた彼氏と、

電車の中で会いました。


あたしは、ＰＳＰ のモンハンをやってましてね。


（くっそぉーー、ディアブロスめー、

　　　　　　　　今度はシバいたるねん！）


３分前に死んだんですよ。

このディアブロスにやられちった。



悔しい気持ちが出てた？

顔に出てた？





「死んだんかいな」




え？



顔をあげたら、


ポケットに両手を突っ込んで立ってるんです。


ケンイチが。



え？


「あ、久しぶり」



そん時、あたしの頭ん中は、ケンイチとの最後が浮かびました。



「時間、合えへんな、オレらって」



あたしは夜勤ばっかし、ケンイチは昼間の仕事。



すれ違いばっかりで、週に１回どころか、

月に１回会えればいいとこ。



「お前って仕事が好きなんやなー」


そうだよ、好きだよ。


（でも、ケンイチ、あなたのほうがもっと好きだよ）


この言葉が口から出る前に、ケンイチは「無理」って

もう無理って。


別れて３ヵ月後、友人からのメール。

「ケンイチが結婚するって」



ふーーん、そうなんだ。


なんの感情もなかった。

あたしの中では終わった恋だから。


そんなケンイチが目の前にいた。


「結婚、オメデト」

その言葉が精一杯。


「いや、やめてん」


え？


「結婚するん、やめてん」


はー。


「お前は？」


あ、あたし？　あたしはまだあのままで止まってるよ。



「ん？」



お願いだー、ケンイチ、

その「ん？」はやめてーー。

その少し顔をかしげて、あたしをじっと見るのは

やめてくれー。



ってか、

お前って呼ぶな。



まだ覚えてるよ。

ケンイチの背中や、指や、髪の匂いや、

ゲームしてるときの真剣な顔や、

時々、少年みたくあたしに笑いかける顔も。


胸、痛くなったけど。

痛くなってきましたけど。


「あのさぁ、今夜って空いてる？」


え？（４回目のえ？）


「あ、あの、今夜はね、ちょっと」シドロモドロ


まさか、モンハンするからとは言えない。

口が裂けても言えない。




「モンハン、やってる？」


え？（明らかに５回目のえ？）


「やってないよ」　嘘をつきました。


「そうかいな、あれって面白いでー」

やってるんや。

オンしてるんや。



「でさぁ、今夜もし空いてたら、オレのモンハンを

　　　　　　　　　　　　　　手伝うて欲しいなーって」


それって、それってさ、

あたしの部屋、もしくわケンイチの部屋に、

行くって？そゆこと？


だめだめだめだめーーーだーーめ。


もう恋なんかしないなんて言わないよ絶対状態。