YUUKA’S ROOM

YUUKA’S ROOM

・手紙と電話


今、私の手元には5,6枚の紙キレがある。小さな部屋の黒い椅子の上で、私はしばらくの間座って考える。

さっきまで私は部屋の掃除をしていた。机の引き出しを開け、いらない物を次から次にゴミ箱へ捨てた。

その時ふと私の手を止めたのが、この紙キレ達だった。その紙には私の中学時代の告白分が書かれてあった。

好きな相手に心をこめて書いたものだ。そんなラブレターがなぜ、いまだに自分の部屋の机の中にあるのか。

なぜならこのラブレターは普通とちょっと違う、相手に渡すべきラブレターではないのだ。

昔の私は結構な恥ずかしがりやで、面と向かって相手に想いを伝えることができなかった。

男の子と普通に話すことはできても、告白するとなると足がすくみ、立っていられなくなるのだ。

そんな私の唯一の手段は電話だった。でもその電話でさえ、向こう側に相手がいると考えたらもう頭は真っ白。

何も言えなくなってしまうのである。こういう時どうするかは、恋する乙女ならもう分かるだろう。

手紙に書くのだ。『○○くん、いらっしゃいますか?』から書いて困らないように3つくらい相手の言葉を想像し、

それに応じた返事も考えておき、相手がどう出ても言葉につまらないように書いておく。

すると、いくら緊張していても、ある程度は手紙が導いてくれるのだ。私の場合、その手紙が成功すれば、つまり

その恋が実れば、手紙は大切にしまっておく。その思い出の品を、ついさっき机の奥から引きずり出してしまったのだ。

机の中ですやすやと眠っていた勝利の手紙は、私にこじ開けられ、懐かしい過去をたんたんと語った。

自分のあがり症を恨み、好きな人をただ見つめることしかできなかったこと。どんな姑息な手を使ってでも

想いを伝えたかった少女の話。でもそれは、相手の顔が見えない電話だからこそできたことだ。私の左手には

滑稽な字で書かれた意味不明な手紙が握り締めてある。そしてそいつは私の顔を見て誇らし気に笑った。

それは少女と手紙と電話が、協力してやりとげた出来事。


私は手紙を元の場所に寝かせた。今度こいつを起こすのはいつだろうか、などと考えながら。




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