YUUKA’S ROOM

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・一日の小さな出来事


ひょっとして田中君じゃないだろうか。でも彼は自転車通学のはずじゃあ…でも今日は雨だ。

私のどっちつかずの考えは、彼が私と同じ駅に降りたことで明らかにされた。

その肩をたたけば、君の名をいま呼べば、私はひどく後悔するかもしれない。

雨のせいでひどく蒸し暑かった駅のホーム。そのせいか私は(よく覚えていた)

彼の下の名前をとっさに呼んでしまった。振り向いた君、目をそらせない私。

やっぱり声をかけなかったほうが良かったかもしれない。なぜなら今日は雨だ。

そしてこの季節は私が非常に弱く、壊れやすい時期だ。彼は私に気づくと、

笑顔で近寄り、部活を引退したと言った。あぁ、この人はバスケをしていた。

小さな頃から。彼は対戦した高校のプレーの事や、そのプレーヤーの身長のこと、

友達がふっとばされたことなどを、生き生きとした瞳で語りだした。『残念だったね』

と言った私に彼はまたしても笑顔で、『でもめちゃくちゃ面白かった!』と言った。

そうだ、この人には、『もう少し』や『あとちょっと』などという言葉はないんだ。

だからといって、バスケのために彼女を作らない、という契約もなかった。

彼の手にはすでに、たくさんの大切なものがにぎりしめられていた。

私には何か…人に負けない何かが得られたのだろうか。大好きな事をめいっぱい

してきた君と、羞恥心のかたまりで結局好きなものも探し出せなかった私は、

同じ頃に生まれて、同じ地点でスタートしたのに。私はいつも事の終わりに後悔

するんだ。『あの時もう少し勇気を出せたら』『あとちょっと時間に余裕があったら』

もう少し、あとちょっと。彼にはその言葉が存在しないんだ。いつも精一杯で、

なんにでも本気だった。彼と私の差はこれなんだ。どんな目的でもいい、勉強

じゃなくても、ダイエットでもいい、夢中になれること。本気になれること。

私は自分を好きになる方法を作っていかないといけない。

あぁ、見つけた。これから忙しくなる。私は彼に、笑顔で『またね』と言い放ち、

その日はきっかけをくれた雨と遊ぶことにした。


~次の雨はいつだろう~




kasa




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