スペイン紀行 3





スリ
事件は旅の最終日に起こった。

あらかたの観光をすませ、最後の夜をホテルで過ごしていた。

ああ、今回の旅も終わりかぁ~・・・・。
明日からまた、出張出張なドイツ生活に戻るのか・・・トホホ・・。

そんな事を考えていたら、ホテルでだらだら過ごしているのが急にもったいなく思えてきた。
特に行くあてもないが、夜の街をぶらぶらしようかな。
そう思い立ち、夜のバルセロナの街に出た。

夜、といってもそこはスペイン。
街はまだまだ元気で、そこかしこでストリートパフォーマンスが繰り広げられている。
おいらはそのパフォーマンスを眺めたり、露店をひやかしたりしつつぶらぶらしていた。

ご機嫌で鼻歌まじりで歩いていると、前から貧相な顔をした酔っ払いがふらふら歩いてきた。
ぶつかりそうだったので、おいらはヒョイっと横に動いたのだが、結局肩がぶつかってしまった。

「ソーリー」
おいらは一言そう言って立ち去ろうとした。
するとその男、「ヘイ!ヘイ!ミスター!」とおいらの腕を掴んでくるではないか。
男はわざとらしく痛そうな顔をして肩をおさえている。

う~ん・・・。やな感じ。からまれちゃうの?ワシ。

男は肩をおさえながら、ペラペラとまくしたててくる。
でも、何言ってるかわからん。
どうやらやっぱりからまれているんだね。とほほほほ。

とにかく黙って聞いていてもしかたがない。
おいらもとりあえず英語で「ぶつかっちゃったのはソーリーだが、痛いのはおいらも同じ。ただのハプニングだ。はい、終わり終わり」と振りほどいて行こうとしたわけだ。

するとその男、急に笑顔になるではないか。
おまけに「ソーリー、ソーリー」と言い出した。
あれ?なんだ~、謝っていたのかな?と思ったおいら。
あいかわらず何言ってるかはわからないながら、互いに笑顔を見せ、「和解」ムードとなった。
するとその男、身振り手振りで
「俺がこうして歩いてきたら、おまえもこうきて、ぶつかっちゃたんだよね~」とでもゆうように、ぶつかった際の再現を始めた。
そうして再度、おいらとぶつかった瞬間、ジーンズのポケットに違和感。

ん?

サイフがねえ!!

見ると男の手にはしっかりとおいらのサイフが握られているではないか!
「オイ!それ俺のサイフ・・・」
言い終わる前に、男はダッシュで逃げ始めた。

こんな時、男を追いかけて捕まえるなんてのは大変危険。
追い詰められた男は、何するかわからないですからね~。
海外経験もそこそこありますんで、わかってますとも。ええ。
で、どうしたかって?

追いかけましたよ。全速力で!

男はけっこう年くってたし、酔っ払っていたしで、案外あっさりと追いつくことができた。
そこはけっこう大きな通りなんで、周りにはたくさん人がいたんですけど、もう頭の中には「ズンちゃっちゃ~らら~ん♪」と太陽にほえろのテーマが流れていたおいらには関係ない。
「逮捕する!!!」くらいのノリで男を引きずり倒し、財布を奪い返した。

うらめしそうな顔で見上げる男。

鼻息荒く、倒れた男をにらみつけるおいら。

いつの間にか、周りのどのストリートパフォーマンスより大きな人垣ができていた。

見世物ぢゃねえ!



ホテルに戻って冷静になって考えると、その時、そのサイフには現金のみで
2千円くらいしか入っていなかった。
一応、これでも用心して、大事な物などは服の下のベルトのなかに全部しまってあったのである。

な~んであそこで必死になって追いかけちゃうかなぁ・・・。
怖い怖い。

皆さんは海外でスリにあっても、危険だから戦わないようにしましょうネ♪


これにてスペイン紀行、おしまい、と書こうとして気がついた。
食べ物の話、ひとっつも書いてませんね。
すみません。
あ、パエーリャ、うまかったっすよ。

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