ゆきあけのボヤキ

父宛の手紙

平成18年5月 作成

~父宛の手紙~


私の思いを4枚の手紙に綴り弟に送ってから返事はこなかった。

弟にもうこれ以上何も言わないと決めた。

面会にも行かない。

手紙も書かない。

言いたいことはたくさんあるけど、何もかもが今更・・・

反発されたとしても、謝られたとしても、もう終わってしまったこと。

こんな弟さえいなかったら・・・って本当に弟を憎んだ。

両親に大切にされ、そしてきちんと育ててもらったのに。

私自身のことより両親を思うとたまらなくなった。

考え出すと頭がおかしくなりそうなくらい辛くなった。

だからもうこれ以上何も言わないって決めた。


3月。

実家に帰省した時、父宛にたくさんの手紙がきているのを見つけた。

私が実家に滞在している間にも何通か届いていた。

私はどれもこれも見なかった。

松山へ帰る日。

あれほどまでに見ないでおこうと決めていた弟の手紙を一通読んでしまった。

見なければよかった、読まなければよかったと案の定後悔した。


【・・・・・姉ちゃんはあれからどうですか?

少しは元気になりましたか?

俺のせいで姉ちゃんの人生を狂わせてしまって本当に申し訳ないと思ってます。

謝っても許されることではないと思っています。

でも姉ちゃんにはそんな男と付き合って欲しくなかった。

姉ちゃんのこと本当に好きでいてくれる彼氏と付き合って欲しかった。

姉ちゃんのこと本当に好きで結婚したいと思ってくれてたんなら

俺のことなんか関係無しに姉ちゃんを連れ去ってでも幸せにして欲しかった。

駆け落ちでも何でもして欲しかった。

ほんまに好きやったら男はそれぐらいのことするんと違うん?

俺のことなんか黙ってたらよかったのに。

姉ちゃんが幸せな結婚するんやったら俺なんか勘当してくれてもよかった。・・・・】


オマエが言うなよ。

男友達なんかにはこういった言葉をずっと言われていた。

でも、だからって弟のオマエのせいでこんなことになったのにオマエが言うなよ。

読んでる途中で弟の言いたいことを私自身少しは理解出来たけど

それ以上に腹が立つのと悔しいのと色んな思いが一気に交わって勝手に涙が出た。

顔が熱くなるのが分かった。

極度の興奮状態で心臓がバクバクして手が痺れてきた。

貧血を起こしそうなぐらいクラクラきた。


興奮状態のまま松山の友達に電話をした。

支離滅裂な私の話を始めは黙って聞いてくれた。

言いたいことを言い終えたあとにハッと我に返った。

同じ男として弟の言ってることは確かに合ってるし俺もそう思う。

私が弟に対して“オマエが言うな”って思う気持ちももちろん分かると言ってくれた。

誰かに聞いてもらえたことでちょっとスッキリした。


5月。

父宛の手紙を読むことは無かった。

今回こそ絶対に読まないと決めていた。

弟の今後の行方を私の口から父に聞くことも無かった。

松山へ帰る日。

サナ宅へ行く最中に父が一言私に言った。

「ダイ、来年の11月が満期。」

私が帰省する少し前に裁判があったらしい。

何もかも父一人に背負わせて本当に辛くなった。

私がもっと強い子だったら・・・

本当はずっと気になってた。

でもまた自分がおかしくなりそうで聞くのが怖かった。


「そう、来年の11月に戻ってくるの・・・」




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