脱出

カラオケ店の店長の座を獲得してから数ヶ月、

日々の節約生活の甲斐有ってついにその日は訪れた。それは待望の借金全額返済…

全額返済と言っても消費者金融12社の借金、全てを返し終わっただけなのだが

それでも心の中では、物凄い開放感に満ち溢れると同時に、安堵感に包まれたのは今でも忘れない

勿論、全額返済する場合はATMで完済手続きが出来ない為、窓口で返済をする訳ですが

相手も商売、そう簡単には解約を受け付けてクレナイ・・・勿論金は受け取って貰えるのだが

『カードだけはそのまま残しておいて下さいよ♪』と、何度もシツコク言われた。

そんな事には一切耳を貸さず店員の前でカードを鋏でチョキチョキ切ってやった。

残りの借金は愛車ソアラの空ローンと金利の付かない先輩からの借金なのでそれほどプレシャーは無かった。

その後も順調に借金を返済しながら日々安定した生活を送っていた頃

後少しで借金から開放されると言う時に、ある人物の存在に気づく…

そう彼女…今まで最低の生活を送りながらも陰でズット支えてくれた彼女の存在に初めて気づく

その翌年の4月に私は結婚を決意する。

そして結婚後、数ヶ月で1000万近く有った借金は破綻の日から約2年で完済を迎える事が出来た。

借金を返し地味な生活を送りながらも、借金の無い生活がどれだけ穏やかで楽しいか。

たまにする贅沢の有り難さ…その全てに日々感謝しながら今後は真面目にコツコツやろうそして、贅沢はタマにするのが丁度良いと学習した。

その後も給料は下がる所か上がって行く一方。次第にお金が貯まりだす。それと同時にパチンコの世界にも舞い戻ってしまう。

しかしアレジンはホールから姿を消し、そこに有ったのは大工の源さんを中心とした爆裂CR機が丁度デビューし始めた頃だった。

その頃になると店長業も板に付き、ある程度は店に居なくとも社員とアルバイとで店は動かせる状態。次第に一昔前の状況が再現されてしまぅ…

起床→ホール開店→ホール閉店→店長出勤→夜遊び→就寝

この頃になると部下が全てをこなしてくれる。つまりトラブルが発生するまで殆どフリー状態、

出勤と同時に部屋にこもってひたすら仮眠をしていた。早い話、夜遊びに向けて準備していた訳です。

勿論そんな上司を慕う部下など、居るはずも無い事は最初から判っていたので、

彼らには店長に成る目標と理由。そして、この世の中結果を出せば評価され遊んでいる事も許されるんだぞ!

と半ば宗教じみた語りかけで部下たちを奮い立たせていた。

閉店後は部下を連れて夜の街へ繰り出し、仕事のストレスや将来の夢や希望を大いに語り有った。

そんな甲斐有ってか部下の努力で売り上げUPはとどまる所をしらず、給料はついに100万の大台に乗り始める。

収入が上がるに連れて、地味な生活で得た大切な心と辛い記憶ををまたしても失い始める私に、闇の世界からの使者が登場する。


【続く】

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