釘師
釘師に成りたい！！その願いが・・・ついに叶う時がきた。とあるパチンコ番組での放送終了後、一瞬だが釘師候補生募集と言う文字が目に入った。
慌てて応募内容を確認したが間に合わず、一週間我慢して翌週の放送をビデオに録画して応募した。
数日後、先方から連絡が有り面接をしますので、とある場所まで来て欲しいと連絡が入った。
高鳴る期待を胸に面接前日の夜は、中々寝れなかったのを今でもハッキリと覚えている。
面接に持って行く履歴書は何度何度も書き直し、今までこれほど真剣に履歴書を書いた事は無いと
断言して良い程、空白も無くビッシリと職歴・名前。生年月日・趣味などを丁寧に。
志望動機に関しては一文字一文字心を込めて書いた。
いよいよ面接の朝。忘れもしない夏の暑い日、既に着慣れなく成ったスーツに身を固め、その扉を開く。
扉の先に待っていたのはパチンコ店を経営する役員の方２名…そこに釘師さんの姿は無かった。
役員の方の第一声は君はデカイなぁ～♪身長どのくらい有るの？であった。扉を開けるまではカチコチに緊張していたが、
話が次第にパチンコの事に成るにつれ緊張感は無くなる。自分のパチンコに対する思いや
高校時代からの夢だった釘師に成りたいと言う強い気持ち、そして今までの経歴と
自分は今現在パチプロをしています。と包み隠さず正直に全て話した。
数十分の面接の後、一次面接合格との知らせ♪直ぐに２次面接を受けに言って欲しいと役員の方に言われた。
いよいよ念願の釘師さんとの面接♪しかしここで役員の方から気になる言葉が…
『まぁ鬼軍曹みたいな人だけどやる気があるんならついていける筈や！頑張ってくれよ』
と・・・満面の笑みで一言ささやいた。
その後、教えられた場所へ移動し２次面接会場へ向かう。勿論自分一人だけ他に何人かいた人物は
１次面接で落とされたのか？それとも…
『う～ん鬼軍曹みたいな人かぁ～』まぁ何とか成るだろう甘く考えて次に向かう事に。
到着した会場…そのれはパチンコ店の事務所。無愛想な店員に自分の名前を伝え面接に来た事を伝える。
無愛想な店員について来いと言われ後ろをついて行くが事務所に到着すると今まで無愛想だった店員が豹変！！
『失礼いたします！！』さっきまでの店員とは別人の様な声と態度で事務所の扉を開ける。
すかさず自分も大きな声で『失礼します！！』と声を出し事務所に入った。釘師との初対面・・・
その方は金縁の眼鏡をかけた一見優しそうな雰囲気。しかし時折見せる鋭い目つきは、
見ているだけで震え上がってしまうほど貫禄？オーラをまとった人物で有った。
いよいよ面接開始…
釘師さんと２人きりになり緊張感も高まる中、面接は始められた。釘師さんは、暫く自分が書いた履歴書をじっくりと眺め、
時折ニヤニヤする。私はどうしていいかわからずに、ずっと押し黙ったまま時間は過ぎて行った。
そしてようやく釘師の方がようやく口を開く…
釘師さん 『お前はパチンコ好きなんやなぁ～・・・』
オラ 『アッ！はい！！』
釘師さん 『・・・・・・』再び重い沈黙が・・・
オラ 『汗汗汗汗・・・滝汗』
そして自分から話を切り出す・・・
私 『あの・・・事務所に来る前に店内で釘を見させて貰いました』
私 『自分は今パチプロをしてるんですが何台か打てそうな台を見つけました』
釘師さん 『何処や・・・言うてみ～・・・』
そこからは素直に自分が見た釘の形を思いのまま伝えた。
失礼かと思ったが自分の考えだけは素直に伝えたかったので、お店の条件や釘調整に関して
自分の考えを遠慮なく話し続けた。最初は釘師の方もムッとした顔をしていたが、次第に会話は弾みだす。
『釘師の仕事内容』『怪しい機械のお話』『釘調整の道具について』『業界の昔話…そして武勇伝』
『新装開店の裏話』『ゴト師との格闘』『下積み時代の警察と癒着話』『コンチネンタルの４枚セットのお話』
『打ち込み機について』『怖い人との戦い』『殺し合い…そして武勇伝』と、まぁ耳を疑うような内容や
絶対にココで書けない事など延々と…
そして時間はアッ言う間に過ぎてしまい。気が付いた時は面接開始からは５時間が経過していた。
そしていよいよ釘師の方から採用についての話題に切り替えられる
釘師 『久しぶりやなこんなに話したのは』
オラ 『有難う御座います』
釘師 『採用や！！明日から頑張ってみるか？』
オラ 『はい！！頑張ります』
明日から自分は業界人！！その言葉の響きが何とも言えずカッコ良く思えた☆
明日から自分は釘師見習♪高鳴る気持ちを抑えるようにパチンコ店を後にした。
明日から訪れる現実も知らずに…
【続く】
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