灰色猫のはいねの生活

灰色猫のはいねの生活

第四話


あの子の父親曰く「猫と言ったらたまなんだっ!」の「たま」。
そうやって「たま族」は増殖していくのよね。
「あの子の父親が僕を拾ってくれたんだ。
肥料会社で魚カスなんか貰って食べてたけど、あの子はきちんとしたご飯をくれたっけ。
時々は家の中に入れてもくれたし、外でもあの子の膝の上は気持ちが良かったよ。
まだ猫アレルギーもはっきりとは出なくて、冬は一緒に寝たりもしたんだ。
あの子のふかふかの布団で、時々は腕枕なんかもしてくれたね。
夜中に咳が出だして、屋外退去になったりもしたけど。
父親も優しくて、縄張り争いでケガした僕のために猫小屋を造ってくれたりもしたんだ。
そうそう、旅行のお土産に父親はまたたびを買って来てくれたっけ。
あの子の猫好きは父親ゆずりだね。」
なかなか家庭環境のいい家みたい。
でもあなた、またたびよりもサロンパスが好きなヘンな猫だったのよね。
そう言うとえへへと笑う「たま」を後にした。

2番目の履歴猫は動物界では有名な名作「動物のお医者さん」の登場猫の類似猫。
黒白柄で鼻の下に鼻くそみたいな黒い模様がぽつんとある「はなくそはなちゃん」こと「はな」ちゃん。
「俺はひとなっつこくて自由猫。
たまたま入り込んだ会社の事務所であの子に連れ去られたってわけ。
ネズミ捕りのご用聞きでもないかと思ったんだけどね。
車で連れ去られたケド、別に恐くはなかったよ。
あの子の方がアレルギーで大変だったんだ。
会社からあの子の家まではほんの10分位なんだけどさ。
家に着いたとたんあの子の鼻水は垂れ流しで、ご飯もろくに食べられなかったっけ。
それを見た父親の方が怒って、一時は俺の存在が危ぶまれたけど、あの子は強かったね。
夕食の途中で箸をテーブルにばしりと置き、部屋へ閉じこもってさ。
それから3日間、父親とは口をきかずにハンガーストライキ。
会社で思う存分食べていたらしいけど、そんなそんな訳で俺はあの子の家に雇われることになったのさ。
車が好きだったから、トラクターの座席を縄張りにしたら、さすがに父親に怒られたけど。
あの子の家にはいろんなモノがあってさ。
広いし、近くに川も森もあるから楽しかったよ。
ただ、根っからの自由猫な俺様はあの場所だけじゃあ飽き足らなくって、遊びに来たあの子の友達の車でヒッチハイクしようとしたり頑張ったね。
どんどん縄張りを広げて、最終的には近所の牛屋まで足をのばしたよ。
規則正しく道路を歩いていたら、あの子に見つかって何度も連れ戻されたりしたけどさ。
でもきっちし新しい雇い猫は紹介したぜ。」
そう言って現れたのが灰色猫だった。

いい加減にしてよっ.jpg

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