第十三話
最初は朝や夕方、それから３時頃に「お腹がすいたの！早くご飯ちょうだい！！」くらいだったけど、あたしが話しかけることに慣れたのを見計らって、ちょっと難しいことも話すようにした。
「あたし可愛いでしょ？携帯で画像撮ってよ！」
そう言ってから羽衣音は、あたしと遊ぶ時にはいつもぽっけに携帯電話を常備するようになったの。
あたしの可愛い画像は日増しに増えていって、ある日羽衣音はこう言った。
「こにゃんの可愛いとこ、他の人にも見てもらいたいよね。
会社の先輩がブログやってるの、とっても楽しそうだから、羽衣音も立ち上げちゃおうっかな。」
『灰色猫のはいねの生活』のタイトルで始めたブログに、最初に載ったあたしの画像はとんでもないおもしろ画像だったけど、それでも日記なんて三日坊主だった飽きっぽい羽衣音が、毎日々更新していた。
あたしの可愛い画像に惹かれてお友達も出来たみたい。
何より、ブログネタを探すのに引っ込み思案だった羽衣音が積極的になって来た。
「お友達が出来たの！」
「羽衣音のブログ、お気に入り登録されたんだよ！」
「はいちゃんの画像がおすすめフォトに載ってたって！」
可愛いあたしじゃなくってはいね親分のお笑い画像が一足先におすすめフォトに載って、あたしはちょっぴり不満だったけど、毎日ブログ報告する羽衣音はどんどんと明るくなった。
「今日はこんな画像ＵＰしちゃった。」
笑いながら見せるあたしの画像はやっぱりお笑い画像で、その顔が気に入らなかったあたしはばしりと携帯画面をたたいたりした。
この頃からはいね親分は「何かね」と言いだしたし、羽衣音はビーズクラフトなんかも始め、お寺の行事のお手伝いなんかもし出した。
黒猫顔負けの黒髪を茶髪にして、すっきりとしたショートから、今はまた少しずつ髪を伸ばしている。
服装の色や趣味もあえて今までとは違うものを選んで、例えば後ろ姿なんかは別人の様にも見えた。
「部屋の中、一杯になっちゃったから。」
そう言って、元彼のプレゼントのアクセサリーや洋服なんかも処分しだした。
今まで、整理付かなかった気持ちも物も、無理矢理にでも終止符を打つように、羽衣音は本当に生まれ変わったようだった。
そしてとうとう「灰色猫のはいねの生活」のジャンルが「その他」から「ペット」に変更！
あたしは見事に羽衣音のブログを乗っ取ったって訳。
タイトルだってその内「茶虎猫のこにゃんの(優雅な)生活」になるわよ！
そうして思いの外近場にいたブログ友達からキリ番プレゼントをもらって、羽衣音はどんどんブログ生活を満喫していったの。
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