父




私の父はとても優しい人でした。
どんな時も、私の味方になってくれてました。
そんな父との別れは、あまりにも突然訪れました。

1988年5月22日

真夜中に突然母に起こされました。
あまりにも信じられない光景がそこにはありました。
前日の夜まで、何の変わりもなく家族で食事していた父。
お風呂でひげを剃り、さっぱりとした父。
次の誕生日にはテニスラケットを買ってあげようと指切りした父。

呆然としてる私に、母は半分泣きながら
「今、救急車来るから。お母さん行って来るから弟と妹の面倒見てね」

なんのこと?何をいってるの?お父さんどうしたの?

しばらくすると、集合住宅の5階の我が家に大きなストレッチャーが入り
父はそれにそれに乗せられていきました。
異常な音をあげた父のいびき。
何度、呼びかけても返事もなく、ただ、いびきだけが聞こえていました。
今でも、あのときの父のいびきは耳について離れない。

明け方、近所のおばさんが心配して家にきてくれました。
「お母さんから、連絡あったの。おばちゃんちにきてなさい」
私は弟と妹を連れて、学校の支度を持っておばさんの家にいきました。
「まだ朝早いから、もう少しねてなさい」
と優しく背中をなでてくれたおばさん。
そのとき、電話のベルが鳴り緊張した空気が流れました。
小学生だった私にもすぐに分かりました。

お父さん、死んでしまったのね・・・

近所のおばさんが一緒に病院に行ってあげるからと、タクシーをよび駆けつけました。
病院に着くと、そこには力の抜けた母の姿がありました。
母に近づくと同時に看護婦さんがあわてた表情で向かってきました。
「ご主人、息を吹き返しました。急いで病室に」と。

病室に入ると、父は最後の力を振り絞っているかのようでした。
病室に家族全員がそろうと、父は穏やかに息を引き取りました。
最後の最後まで、家族を思い優しさを与えてくれた父。

父が家族に残してくれた、最高の時間でした。
この、父の優しさがすべてを優しい時間にしてくれました。

ずっと家族に残る、大切な宝物です。


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