●○● Cohaku`s room ●○●

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 鏡






     【鏡】



人間界のあるところに、2階建ての大きな洋館が建っていた。
その立派な建物の門には大きな表札があり、そこにはこれまた大きな字で”探偵事務所”と書かれていた。

その2階1番奥の部屋でこの事務所の主が仕事をしていた。

大きな部屋の奥に机があり、その椅子に主である青年は座り仕事をしている。
しかし青年は飽きたのか指をパチンと鳴らした。すると机の上に湯気をたてた紅茶の入ったカップが現れた。
青年はため息を1つつき紅茶を1口飲んだ。
そしてふと机の上に置いてある鏡を見た。そこには自分が写っていた。

しかしどうも自分とは違う。とてもおかしな話だが。

青年は短い金髪、そして黄色い左目と青い右目をしている。
けれどその時の鏡の中の自分はどうだろうか。
短い銀髪、銀色の左目と黒い右目。と、まるで青年を反転させたかのような姿だった。

「・・・君、誰?俺?」
青年は鏡の中の自分に声をかけた。その表情はどこか笑みを含んでいた。
(違う。あなたはあなた、俺は俺。対照の存在。)
鏡の中の青年は冷たく答えた。
「そう。」
金髪の青年は喜ぶことも悲しむこともなく、表情を変えずに言った。
その後青年は机の上にある紅茶をまた1口飲んだ。

沈黙が5分ほど続いた。
金髪の青年は仕事を再開するでもなく、紅茶を飲むでもなく、ただ椅子に座ったまま鏡の中の自分に似た人物を眺めていた。
「それじゃあ君は天使?」
唐突に金髪の青年は鏡の中の銀髪の青年に聞いた。
(違う。あなたはあなた、俺は俺。対照の存在。そのはずだ。)
「・・・(答えになってないような気が。)」
(悪かったな。)
「あ、考えてるとこ伝わっちゃうのね。厄介だなぁ。」

(対照になるよう作られ生まれてきた。だが何故だか分からないが、
 あなたと俺には似通った点が多くある。)

「・・・・。」
金髪の青年はため息をついた。そして少し暗い表情になり声調も低くなった。

「結局俺は裏も表も悪魔なんだね・・・。」

鏡の中の銀髪の青年は、椅子に座っている金髪の青年を見つめた。
(悲しいか、裏も表も悪魔だということが。)
金髪の青年は初めの顔に戻った。
そして今度は確かに微笑みながら言う。
「いや、期待はしていなかったからね。どうせ裏も表も変わらないんだろうって思っていたよ。」
金髪の青年は紅茶をまた1口飲んだ。

「(ただ、もしかしたらって・・・考えた俺が愚かだったかな。)」



























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