10000回ダメで へとへとになっても
10001回目は 何か変わるかもしれない・・・
『何度でも』
by DREAMS COME TRUE
『胸の鼓動』
「あのさ・・・ずっと お前が好きだったんだ!!」
それは まさに晴天の霹靂
私の心臓が跳ね上がった
同級生の彼とは 友達だった
けんか友達みたいなものだった
毎日 些細な事で言い合い、小突きあい、追いかけあう
本当に友達だった
それでも、中学生になった頃から
それまでとは違うナニカを感じる時がなかったわけではない
ちょっと甲高い彼の声が ある日急に大人の声になった時
私より 小さかった彼の背がいつの間にか私と変わらなくなってるのに気付いた時
彼が後輩の女の子から バレンタインデーにチョコレートをもらってるのを見た時
少しずつ少しずつ
私と彼の間にあるものが 変わってきていることに
本当は 私も気が付いていたのかもしれない
けれど、私はまだその準備ができていなかった
まっすぐに向けられるその想いを受け止める用意がなかったのだ
「えっ・・・と、なんの冗談なのかな・・・
わかった!罰ゲームでしょ!あいつらとなんのゲームしたの?
やだな~あたしだからいいけど、他の子にそんなこと言ったら冗談じゃすまなくなるよ~」
精一杯 平静を装って笑う私に 彼は怒ったような目をむける
「ちゃかすなよ!!
ゲームなんかじゃない、ホントなんだ。
俺、お前の事好きなんだ・・・」
もう、どう答えていいのかわからない
私は自分の顔が赤くなってるのに気づく
両手で頬を押さえて 足元を見ながらつぶやく
「だって、急にそんなこと言われても・・・
あたし達 友達だったじゃない・・・」
下を向いていた私の視界に彼の足が近づいてくるのが見える
その足が私の前で止まったかと思うと
彼が両手で 私の肩をつかんだ
はっとして顔を上げると 見たことのない彼の顔がそこにあった
「それだけか?
俺はお前にとって、友達でしかないのか?」
私は怖かったのだと思う
彼が急に違う人に見えたことが
彼との居心地のいい時間がなくなってしまうことが
「それじゃダメ、かな?
ともだちじゃ・・・ダメ?
あたし、今はそれ以上考えられない、よ・・・」
再び目をそらして それだけをやっと言うと
彼の肩から力が抜けるのがわかった
私の肩に置かれた手がゆっくりと離れていく
「そっか・・・」
そういう彼の声がいつもの声に聞こえて 顔を上げる
少し困ったような でも、いつもの見慣れた彼の顔がそこにあって
私も少しだけ体から力が抜けていった
「ごめん・・・」
今度はちゃんと 顔を見ながら言えた
彼は笑って首を振る
「いいよ、俺の方こそごめん
こんな風に 急に言うつもりじゃなかったんだ。
ただ、ちょっと焦っちゃってさ。
忘れてくれ。俺達はともだち、だろ?」
私は黙って頷いた
彼はいつもの笑顔で いつのもように私の頭を小突く
「そんな顔すんな!似合わないぞ」
私もいつもの調子で答える
「どういう意味?だいたい、誰のせいだと・・」
「はいはい、俺のせいね。どうも、すいませ~ん」
ちょっとおどける彼に、私も思わず噴出した
「でも、俺 あきらめないから
お前の事 きっと ずっと好きだから」
「え?」っと私が聞く間もあたえず
「じゃあ、またな」と
彼はそのまま背をむけて 走っていった
それは いつもの景色で
けれど、私はいつものように彼に声をかけることができなかった
彼は少し行くと立ち止まり 振り返る
その顔が、ちょっと泣きそうに見えて私はドキッとした
けれど、そのまま黙って手だけ振ると もう振り返りもせず走っていった
その姿が見えなくなるのを見送りながら
明日から 彼にどんな顔したらいいんだろう?と考えていた
私たちはたぶん 何もなかったかのように
言い合い、小突きあい、追いかけあう
それを考えると 何故かドキドキした
それは 昨日までとは違う気がする
私たちの居心地のいい時間はきっと帰ってこない
でも、違うナニカがそこにあるのだと、
胸の鼓動がまた速くなる・・・
歌詞は コチラ