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「おやジョンピー君、また戻って来たのかね?」
カナイド村は播磨の国の六甲山の奥にある。
村長のグレゴリーさんは4本の腕を腰に当て、カブトムシのような角をもった狸顔でこやかに微笑みかけた。
「ああ、村長さん。そうなんです。でも大変なことが起きようとしているんです。」
「ほほ~、それは大変なことだわい。」
村長はさっそく頷いた。
「あの僕、まだ何も言っていませんが・・・・?」
「おお~、そうじゃったな。それは大変。」
分かっているのかそうでないのか皆目分からない村長の返事に戸惑いながら、ジョンピーはことの事情を詳しく話した。
「なにそういう事か?なぜそれを早く言わん?」
まったくこの村長、どことなく仙人の益比に似ているとジョンピーは思った。
その時、京都に向かう益比仙人は大きなくしゃみをした。
「デブリンバトの諸君喜んでもらいたい。君らの負の遺伝子の塊タンキ―君が見つかったぞ。」
それまで無邪気にはしゃいでいたデブリンバトはきょとんと村長をみやると、「それは良かった」と言ってまた無邪気に戯れだした。
ほんとにデブリンバトは何を考えているのやら?いやきっと何も考えていないのだ。
デブリンバトは太っちょポッポのトットさんそっくりのブヨブヨのデブなのだ。
実は地球から30万光年離れたビリノン星が生息地なのだが、平安時代にこのカナイド村にやって来た超ミニブラックホールが引き起こした時空のゆがみで、そこに住む動物たちが融合した。
ネズミとヘビが融合してツチノコに、カラスとサルが融合してからす天狗に、カメとカエルが合体してカッパが生まれたのだ。
その時できた地球とビリノン星を結ぶ超ミニワームホールを通ってデブリンバトがカナイドにやって来たのだ。
「デブリンバトの皆さん。今タンキ―君は短気が体に充満して巨大化して、三ヶ月後には爆発して、日本全国に短気をまき散らしてしまうんです。そしたら日本の国は人々はみんな喧嘩を始めてしまうでしょう。お願いです皆さんの力を貸してください。」
ジョンピーの言葉にデブリンバトたちは一瞬きょとんとしながらすぐにまた遊びだした。
「今ノンキー君が必死にタンキ―君の短気を鎮めてくれています。皆さんの力が必要です。」
ジョンピーはなおも粘り強く必死に頼んだ。
デブリンバトの一人が声を掛けた。
「ノンキーか?あいつタンキ―の友達だからな。タンキ―のところに行って何か楽しいことあるのか?」
生来真面目一筋のジョンピーは言葉に窮して一瞬たじろいだが、やけくそで口から出まかせでこう言った。
「そりゃもうここの100倍以上!!」
100倍の言葉にデブリンバトは動きを止めてジョンピーを見つめた。
「ここの100倍?100倍だって!?」
ある者が叫んだ。
「100倍、100倍、100倍」
みんな口々にそう言って、ひっくり返るわ、転げまわるわ、羽を羽ばたかせるわで大騒ぎを始めた。
でも中には「100倍ってなんだ?」とまたわけの分からないことをいう者もいたが、些細なことなど気にしないデブリンバト小躍りし始めた。
こうしてカナイドから甲府の国のなげきの森に向かうデブリンバトの大移動が始まった。
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