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2010.04.16
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カテゴリ: ガーデニング






であった。
 高校生の頃、当時ようやく普及し尽くしたモノクロテレビの
修理を良くやっていた。不思議なのは、彼が理論家のように見
えないのに、けっこう修理ができていたように見えたというこ
とである。
 やがて東京オリンピックの終わった頃ともなると、TVはカ
ラーになってきたが、彼は、そこでも活躍していて周囲を大い
に驚かせたのであった。大抵の電気少年は弱い電流とはいえ、
3万ボルトの流れているシャーシなどと友達になりたいとは思
わなかったことでもある。
 やがて彼は若くして家を建てた。その設計がまた驚いたので
ある。まず庭には電柱が立っている・・それはアンテナで、県
外や海外放送やらを受けたり発信したりするためのものであっ
た。二階建ての住宅の2階には特殊なクローゼットがあり、そ
こから屋根裏に這っていけるようにしてあったし、何本ものケ
ーブルが横たわっていた!
 何のケーブルだいと尋ねると、将来、必要になった時のため
の電線やらが、あらかじめ準備してあるとのこと!
 発電所や工場などの高所にはケーブル専用の通路(レーン)
があるが、彼は住宅の天井裏にソレを採用していたのである。
それは、まるで血管のように張り巡らせてあった。そういう男
であったということである。
 時代は流れ、彼の住宅が功を奏したかどうかは定かではな
いが、彼は、社会人として一応の成果を出した。そして最後
に、このエデン荘に入所してきたのであった。
 畑村は思った。
 もう、死を乗り越えた。そう言う物は心配の対象としなくて
も良いという安心感と、若い頃のやり残しをやろうというもの
であった。このような話は、かって畑村と北川が酒飲み話とし
ていたことであった。そういう間柄でもあったのだ。
 エデン荘に入所は君のためになるし、同時に国家のために
もなると荘長の北川は言った。金は少し要るが、だが、エデ
ン荘にも資金はあると言った。
 エデン荘の敷地がつかめた頃に畑村は荘長を誘った。二
人はコーヒーを飲みながら小さな声でしゃべった。
 このコーヒースタンドは、近くのゴルフ練習場内にあり、
練習場では多くの客がドライバーでかっ飛ばしている。カキ
ーン、カキーンという、弾ける音の中で二人は話をする。
 『趣味というか研究の方はどうだい』と荘長が言う。
 「君こそ、どうだい?」と畑村が問い返す。
『趣味の前に、エデン荘を軌道に乗せないとねえ』
「まだ乗ってないとでも?」
『資金はあるけれども、もっと資金がいるもので』
 練習場の緑の芝生は、多くの玉で雪色になろうとしている。
『一番遠い所が250メートルだな』
「え?・・何だよ。ゴルフの話かい。ここ、何坪ぐらい?」
『2町』
「エデン荘と同じじゃないか!」
 荘長は目くばせをしながら『ここはエデン荘で吸収する』
と言った。
 どうやってと、畑村は驚いた。
「入所頭金が900万円といったところで、存命期間が20年
とすれば施設の耐用年数に近いし、年金の7割では大半が
生活費に消えるように思えるのである。とても、このような
所を買収するような費用は生まないように思うのだが。また、
自分の研究は・・まあ少なくとも、直ちに金を生むことはな
いしなあ」
 荘長は、フンフンと聞いていたが、水を含んで、夕日の金峰
山の方向を見ながら言った。





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最終更新日  2012.01.30 20:50:25
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