第08話-L



翌日・・6日目

変わった事は特にない

・・あるとすれば、ガンマの色が青から黒に変わった事くらいだろう


「・・なんでやねん」


シードが突っ込むのはこれで朝から何度目だろうか

一応理由は聞いたのだが、トリコロールだったのがいきなりモノクロカラーリングになってしまっては・・

・・そりゃ、違和感があるだろう


「理由については以下をどうぞ↓」


シュウは誰に言うでもなく言って、回想を始める

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「・・シュウ様」

「なんだい、ガンマくん?」


シュウは以前より晴れやかになったその微笑みで、ガンマの呼びかけに答える

データの解析はあらかた終わっている

・・断片的ではあるが、確かに彼のブラックボックスからはその情報が得られていた

・・ロディ達が得たのと同じ、こちらでは 「終末の記録」 と呼ばれていたもの

だから、シュウ達はロディから話を聞いても、今更驚く事はなかった

サクラは上に上がって、恐らくシャワーでも浴びている事だろう

シュウも上に上がって一息つこうと思っていたのだが・・


「・・私のブラックボックス解析の際に気付かれたのでしょう?」

「君の「本当の」剣だね?」


シュウはお見通しであるかのように、ガンマの言葉の先を突いた


「炎皇・雹星とは守護者の刃」

「そう、そして 「光氷・闇炎」 「目覚めた者」 の刃」


ガンマは数歩歩くと・・背中から炎皇と雹星・・二本の剣を引き抜き、水平に構えた


「真の刃に刀身は要らず、全ては無の境地・・「零」にあり」


炎皇、雹星はそれぞれに地面に向かって振り下ろされ・・特殊な素材であるそれぞれの刀身が衝突し、衝撃であっさりと砕け散った

破片がガンマの身体を貫き、傷つけ・・ばちばちという電気のショートする音が地下に響く


「・・これが真の姿、「光氷(かがやきのひょうが)」と「闇炎(くらやみのほむら)」


刀身の折れた炎皇、雹星は握りだけになってしまったが・・その中から溢れた光が、破片で壊れたガンマの身体を包み込む


・・今まで「青」かった装甲が「黒」に変わる

白と青のカラーリングから白と黒のモノトーンカラーになり、外装の一部が変化する


「私はご主人を守るためならば、自分を作った文明でも敵に回しましょう・・・忠義を尽くすは私の宿命・・」


その時が来た

・・「真の姿」になったガンマは決意を固め、シュウの後について皆のいる事務所へと戻っていった


彼はもちろん、自分もガーディアンだからと言って敵に回るつもりは毛頭無い

あと数日の後に「終末」が訪れようが、何を相手にしてでも、命を捨ててでも彼女を守らなくてはならない

ガンマの心は、今までと変わりはなかった


メイを守る・・いや、半分不死の存在である彼女の代わりに、彼女の居場所と仲間を守る事

彼女を取り巻く全てを守る事、ガンマの決意は固かった

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「・・ってな事がありまして」

「・・何独り言つぶやいとんや、シュウ?」

「・・・イヤ、少々電波が・・」


シードとネスが数歩、退いた


・・ところで・・この事務所にいるのはシュウ、ネス、シード、ガンマ、詩亞だけだったりする

そして日本へ一度戻ったサクラ以外はフィアと共にメインターミナル周辺へ出かけていた

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「・・へ~・・鉄道も開通したんだ?」

「ああ、結構税金使ったらしいけど(笑)」


メインターミナルの上層部、展望台にいるフィアとロディ

辺りには観光目的の集団やら、暇つぶしや休憩目的の連中やらがざわめいている

・・セラがメイと買い物に行ったので、ロディはせっかくだから・・とここに彼女を招いていた

・・もちろん、普段は死んでも来るような所ではない(笑)


「・・でも、あと4日で・・」

「フィ・・・か、母さん?・・・」


急に曇ってしまうフィアの表情

ロディがフィアと共に遊びに来たというのはもちろん、崩壊のリミットを忘れたがためではない

これから派手にやらかすなら、最後に一度でも楽しんでおきたい、それが彼の願いだったのだ


「・・母さん、今日だけでいいんだ・・・ゆっくり楽しんでくれよな」

「ロディ?」

「母さんが気に病むのもわかるけどさ・・ 俺がどうにかする って言っただろ?・・せめてセラの奴だけには、そんな顔見せないで欲しいんだ」


ロディは声を震わせながら、苦笑いではあったが笑って見せた

・・フィアははにかむように返して笑う


「・・そうだね・・・なーんか君ならどうにかしてくれそうな気がしてきたよ、ロディ♪」


フィアは我が子を抱きしめた

ロディの顔は一瞬で真っ赤になり、わたわたと大慌てなリアクションをする


「・・なんかさぁ」


いつの間にかそこにいて、その様子を少し離れた位置から見ていたメイは、隣にいるセラにつぶやいた


「ロディとフィアさん・・ 恋人 みたいだね?」

えぇぇっ!? ・・・う・・うん、確かに・・・・」


何をいきなり、とは思うものの・・確かにそう見えてしまう

10年という月日と、元々20代であるという母の年齢

・・さらに血がつながっていないという事を考えれば、そういう風にも見えてしまうだろう


「・・・本当なら私も同じくらいなのに・・」


セラは残念そうにつぶやいて、しかし頬を赤くして二人の様子を見ていた

メイが首を傾げる


「・・???」

「なんでもないよ!・・さ、お姉ちゃん・・行こっ!」

「う、うん」


メイは彼女の言葉の意味が飲み込めないでいたが、セラはにこにこと笑いながらメイの手を引いて駆けだしていた


・・私だって、お兄ちゃん大好きだもん・・

・・どんなにガサツでも、頭悪くても、後先考えなくても、熱血バカでも、ヘンでも・・


妹にここまで言われて・・・大丈夫か、バカ兄よ

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・・帰ってくると、事務所は久しぶりに全員集合の夜を迎える事となった

定番のどんちゃん騒ぎがあった後・・皆はそれぞれ、思い思いの場所で睡眠をとった

・・明日から、いよいよ本格的な行動を開始しなくてはならない

世界の終わりだのなんだの、そういう事でこの時間が終わってしまうのはイヤだ

・・せっかく集まった8人のメンバーだというのに

・・せっかく目的が達成できたというのに

・・せっかく皆で日々を過ごせると思ったのに


あと4日・・3日

この宇宙が終わってしまう事を、ようやく人々が知ろうとしていた

リィズも、ラルフも、レオネも驚愕した・・S.Gにリークされた情報は、そのまま宇宙中を駆けめぐった

・・全てはたった「3日」の間に決着させねばならない

ガンマのデータと遺跡の記録、全てが導き出した結果は一つ

「ロストテクノロジィの鳴動・・ガーディアンの起動が始まってから一斉オーバーロードするまでに、マスターシステムを破壊・停止すること」


これが達成できねば、宇宙は確実に滅ぶ

存在の因果律そのものが狂い、宇宙どころかこの「次元」自体が崩壊してしまうかもしれない

だが、何気なく頼ってきたロストテクノロジィが実は人類の終末を引き起こす物だったとは誰も予想ができなかったのだから・・


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ロディ、メイ、セラは屋上で夜風に当たっていた

・・異常気象のせいか、それとも空白の10日間の影響か・・、珍しく暖かい夜


「・・きっとさ、あっちやこっちで大騒ぎなんだろうな」

「そうだね・・仕方ないけど・・」

「うんうん、テレビは大騒ぎしてたよ?」


そうは言うものの、すでに情報が行き届いているハズのセルムラント市街は驚くほど静かだった

・・すでに住民が無駄だとわかりつつも避難したのかもしれない

・・あるいは、ここがそんな時でも動じない人々の国なのかもしれない


どちらでも良い事は放っておいて、ロディは思いっきり深呼吸をした


「・・なんかさ、俺って今・・滅茶苦茶気分がいいんだ」

「ボクもね~・・なーんか変な感じ・・楽しいよ♪」

「えへへへ・・・私も・・」


三人は目を閉じて、互いの方向を向き合った


「ボクは・・ロディが大好きだからね!」

「私も・・・・・絶対、お兄ちゃんが大好きだから!」

「何だよ・・まるでこれから何かあるみてーじゃねぇか・・(汗)」


顔を真っ赤にしながら照れまくるロディ

・・つーか、何かあるからそういう事を言っているのだ、察しろ・・大バカ


「ありがとな」


メイとセラの肩を寄せ、ロディは顔をきゅっと引き締めた


「ふぇっ・・」

「お、お兄ちゃん・・??」


今度は、二人が真っ赤になる

・・今まで見たこともない・・本当に、真の意味で真面目な顔の兄。

なぁなぁで暴走するだけの熱血バカではない

事をごまかして突っ切った突出野郎でもない

甲斐性なしの、心配かけ放題のバカ兄でもない


決意に満ちた表情は、確実に彼が成長した事も物語っていた


「・・俺はお前達も、シュウもサクラもシードもガンマもネスも、俺の知ってる全部を守ってやる」


・・二人は黙って、その言葉を聞いた


「ンで・・・・宇宙を救ってたんまり 礼金 もらったら、ぷわぁ~っとやろうぜ♪」

「・・・・・」

「・・・ふぇ~・・」


一瞬にして冷めてしまう安心感。

・・ま、こういう方がお兄ちゃんらしいな・・

・・やっぱりロディ・・


二人の妹はそれぞれに思ったが・・大笑いする彼にあわせ、しばらく楽しい時間を過ごすのだった。

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7日目の朝・・

ロディは珍しい時間に目を覚ますと、すっ・・と上着に手を通した

・・静かだ、街は静まりかえっている

・・やはり、住民はどこかに避難したのだろうか?・・・逃げ場などないというのに。


上着を整えた彼は窓のブラインドを外し、外の朝焼けを見つめる

海から上る太陽・・

一日の始まり・・・・・


「・・3日もの間・・いや、たったの3日、か。」


レイノスを大空に掲げて、ロディは数発の弾丸を太陽の方角へ放った

・・それは彼の決心と、残り3日、タイムリミットへの宣戦布告の弾丸だった・・

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NEXT-SEMI・FINAL EPISORD・・

第09話「REVERSE TO 10days(後編)」




たった3日で世界が終わる

たった3日でなかった事になる


空白の10日間は俺たちの世界を終わりにしてしまう


俺は死ぬ?それとも生き残る?それより早く全部なかった事になる?

いや・・俺が消える?・・ヤツらが消える?・・みんなが消える?


・・ 2990年、12月24日


その日に俺は、ドコに立っているだろう?








・・第08話・・・終・・・・・


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