オダチカの戯言日記

東京地検の井内顕策特捜部長の発言



マスコミが無闇 に事件関係者に取材したり、特捜部が誰を呼びだして取り調べたとか、捜索をしたとかの捜査状況の報道をしたり、逮捕や捜索の強制捜査のいわゆる前打ち報道をしたりすることによって、事件関係者に捜査機関の動きや捜査の進展具合を察知され、事件関係者が否認や黙秘に転じたり、その口が固くなって供述が後退したり進展しなくなったり、証拠隠滅工作がなされたり、関係者の逃亡やあげくの果てには自殺に至るということが少なくありません。

そのような報道や取材は、まさに、捜査を妨害し、事件を潰して刑事責任を負うべき者や組織にそれを免れさせ、社会正義の実現を妨げ、犯罪者及び犯罪組織を支援している以外の何物でもありません。それは、同時にマスコミが犯罪者そのものに成り下がっていることの現れであるといって少しも過言ではありません。
私は、常々、記者らに、そのような取材や報道に何の社会的意味があるのか、彼らは犯罪支援をしていて恥じないのかと言っているのですが、まともな反論を聞いたことがありません。
私の指摘が正鵠を得ているが故に有効な反論をし得ず、逃げているだけなのです。
その上、マスコミは、無責任に捜査をあおるだけあおっておいて、結果があおった通りにならないと、一転して手の平を返すごとく捜査を揶揄したり皮肉ったりするのが常套手段です。
しかも間違ったあるいは捜査妨害の報道や取材をしても、謝罪するどころか、理論をすり替えて他に責任を転嫁するのが彼らのこれ又常套手段です。この世の中で、マスコミほどいい加減で無責任な組織はないというのが、私が特捜検事を長くして
きた経験に基づく実感です。
そして、そのような取材や報道をする記者達の動機は、社会正義の実現などという崇高なものでは決してありません。自分がマスコミの社内で高く評価されるための功名心、あるいはそれと裏腹の自分が低く評価されて左遷などされないための自己
保身以外の何物でもないのです。
実際に、数は少ないのですが、それでも多少でも心ある記者は、私に内々そのような動機に基づく取材や報道であることを認めています。
以前に、法の華三法行という組織の犯罪について強制捜査(これ自体は警視庁が担当したものですが、本質は何も変わりません)の前打ち報道をしたことが原因となって証拠隠滅がなされたことがあり、読者からその前打ち報道について批判されたことがありました。
その批判に対して、その社の記者は、「捜査の進展を把握し、正確かつできるだけ迅速に伝えることは、報道機関の責務であり、捜査機関をチェックするうえでも必要なことだとも考えている」旨の弁明記事を掲載しました。
しかし、 これは、私に言わせれば詭弁の最たるものです。どこに捜査の進展を把握し、正確かつできるだけ迅速に伝えることによって事件が潰れ、犯罪者がその罪を免れて良いと考える国民がいるでしょうか。少なくとも良識のある国民はそんなことは一つも望んでいません。
しかも正確な報道どころか、誤った報道が多いのですからこの弁明は噴飯ものです。また、そもそも捜査機関のチェックをすることによって事件を潰してしまったら元も子もないはずです。
それ以上に捜査機関のチェックができるだけの見識と良識を持った記者に今までついぞお目にかかったことがありませんし、本当に捜査機関のチェックをするというなら捜査後でなければし得ないはずです。
そのような意味で、マスコミは、やくざ者より始末に終えない悪辣な存在です。少なくともやくざ者は、自分たちが社会から嫌われ、また社会にとって有害な存在であることを自覚し、自認しています。
ところが、マスコミは表面的には社会正義の実現などというきれい事を標榜しながら、実際はそのような卑しい薄汚い動機に基づいて捜査を妨害し、社会正義の実現を妨げ、犯罪支援を行っているのです。厚顔無恥も甚だしいものがあります。まさに百年河清をまつ思いです。
そのようにマスコミは本当に有害無益な存在です。マスコミに気づかれずに強制捜査に着手できれば、その捜査はほとんど成功したといっても過言ではありません。例えば、先に触れた金丸信自由民主党幹事長らによる脱税事件、元建設大臣中尾栄
一らによる受託収賄事件、中央社会保険医療協議会をめぐる贈収賄事件などがその典型例であり、マスコミに気づかれずに捜査を進めることができたことが一因となって、金丸や中尾あるいは中央社会保健医療協議会関係者の自白も得られたのです。
逆に捜査がマスコミの取材や報道に巻き込まれ、妨害されて、困難を来したり、事件が潰れたり、事件が伸びずに末端の者の摘発だけで終わって本来摘発されるべき者が摘発されなかったという例は枚挙にいとまがないのです。
そのため、いかにマスコミに気づかれずに隠密裡に捜査を進めていくかについて神経をすり減らす毎日です。


http://www.rondan.co.jp/html/kisha/0501/050127-sub.html

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