西宮市立図書館の上ヶ原分館が近くにあってよくそこに行くのですが、児童書のコーナーにおいてあった本です。
以前にも『兵士ピースフル』が置いてあり、借りて読んで感想を書きました。
今回もアタリでした。いい本が置いてあるのは助かります。
デンマークにおける反ナチスの活動を描いた児童文学です。
なんともうかつであったのは、デンマークという国がどのような反ナチ活動を行ってきたかについて積極的に調べてみようとしてこなかった事です。
その焦点は、ナチスドイツによって占領された祖国を救おうというレジスタンスにあるのですが、その活動の重要な部分をなしていたのが、国内のユダヤ人たちをスウェーデンへ無事に逃すという取り組みです。
物語は、少年の視点で語られます。お父さんは画家、お母さんは有名な女優、お姉さん、お兄さん、五人家族です。
お父さんは分別ある大人として、抵抗の不可能さを説き聞かせようとしますが、お兄さんは正義感、そして祖国愛から納得はしません。そのうち、お姉さんはドイツ人の兵士と恋をするようになります。
「ぼく」にはユダヤ人の友人がいます。
占領され、目覚しい抵抗も行わないデンマークは他国から「ヒットラーのカナリヤ」と侮蔑され、お兄さんは抵抗運動に身を投じ、「ぼく」もまずできる事から始めようとします。
そんな一家のところへ、伯父さん(お父さんの兄)がやってきます。ユダヤ人は追い出さねばならないと主張し、ナチに対して親近感を持つ伯父さんは煙たい存在ですが、お父さんにとっては大切なお兄さんでした。
状況はきびしさを増し、お父さんも伯父さんも今までのようなわけには行かなくなります。もちろんお姉さんも。
みんながそれぞれのやり方で変っていきます。この変り方が物語の緊迫感を強めます。
そしてクライマックス。家にユダヤ人狩りのグループが踏み込んでくるという情報が入ります。知人のユダヤ人数人をかくまっていた一家はどうやってこの危機を切り抜けるのか。女優のお母さんの大活躍が始まります。
デンマークはヨーロッパ諸国のなかで最も早くユダヤ人もデンマーク人と平等と宣言した国です(知らなかった!)。
デンマークという小国での知力を尽くしての抵抗運動の様々が紹介されます。それは、デンマーク人が誇りとしていることに依拠して進められます。
最後に、この本の最後に書いてあることを少しばかり紹介します。
7220人のデンマーク系ユダヤ人、そして680人の非ユダヤ人をスウェーデンに移送するために300隻あまりの漁船が使われた。
1944年には、デンマークの警官隊全員が逮捕され、デンマーク警察はデンマークのヒルフスポリツァィ、そして、ナチスの非常に攻撃的な補助部隊であるHIPOに取って代わられた。デンマークの警官の多くはダッカウ(ダッハウ)やブッケンバール(ブーヘンバルト)などの強制収容所に連行された。
悲しい事に、最も反ユダヤ人運動に熱心だったのは、占領軍に対して手を貸す立場にあったデンマークのナチスだった。
自分の国の暗部にもきちんと眼をむける強さ。そんな強さの欠片もない人たちが、NHKの「JAPANデビュー」にイチャモンをつけています。酔態を晒して世界に日本の恥をばらまいた中川などを担いで。
Comments