山田正紀

『氷雨』  山田正紀 

昨夜はすっかり眠りに入るタイミングを逸してしまった
小説を何冊か同時に読み進める癖があって
台所の隅っこには、読みかけの本が何冊も積んどく状態
せっかくなので、山田正紀の『氷雨』を手にとり読みはじめる
彼の作品は時間さえあればどんどん惹き込まれていく
どちらかというと、山田氏の作品ではSF大作の方が好きなのだけど
ミステリーも、謎がややSFチック
あるいはファンタジックな雰囲気を漂わせているものが多く
ひとつひとつのストーリーも独創的なので気に入っている
『氷雨』はすこしだけハードボイルド系なサスペンスミステリー

父から受け継いだ町工場を倒産させ、借金に追われ
野良犬的逃亡生活に落ち込んだ主人公の元に届く、妻娘の事故の知らせ
ほんの短い間あわただしくしか、ともに過ごしていない妻と幼い娘
ふたりとは、二年も会っていない
ひき逃げにあった妻娘は、駆けつけるのを待たずに他界してしまい
主人公は、謎の多いその事件の真相を探るべく動き出す
登場人物の描き方がとても良い
妻の妹夫婦、所轄各課の刑事たち、倒産した町工場の元従業員父息子
悪徳金融の取立て屋たち、債務代行を請け負う金融コンサルタント
現場近くのコンビニ店員、諸々の過去を背負うホームレスの面々
駅前に集うタクシードライバー、ホテルのフロント係
それぞれの人物像を掘り下げたら
実に面白い新しいストーリーが生まれるだろう
ただし、それにはこの作品のボリュームというものがややもの足りない
その事件の真相はいかにっ!!!
と期待させる割には、あれっ?それだけ?という思いもないではない
このストーリーがつまらないという意味ではない
一気に最後まで読み進めたくらいだから
意外といえば意外な展開なのだけど
結局誰が悪いのか?これで主人公は野良犬的な生活から抜け出せるのか?

…なんか、山田正紀らしくない、いまいちキレが甘いような
  好きだからこそ、多くを望みすぎるのかなぁ

   2003年9月記

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