こんなところに、ラボ・パーティの小さな公園がある

こんなところに、ラボ・パーティの小さな公園がある

C.W.ニコル


ニコルさんがなぜ黒姫山麓に住むようになったか・・・
ラボ・ライブラリー『国生み』制作の時の話も出てきます

http://www.shinano-machi.com/0207/cwnicol.html


文 C・W・ニコル
訳    森 洋子
「この22年間、私は「黒姫」という土地について何百回となく書いてきた。」
「「黒姫」という名は、優美さと、力強さ、そして神秘的な響きとを併せ持つ。私は旅から帰ったときや、これから旅に出ようというときはいつも、この気高い山に目をやるのだ。
 私が初めて黒姫を訪れたのは、今を遡る1978年。歴史小説執筆を期して、再び日本にやって来たときのことだ。当時は、取材のため和歌山県の太地で暮らしていたが、我が畏友にして恩師でもある故・谷川雁氏がこちらに家を建てたので、挨拶に寄ったのだ。
 私が金に困っていることを知っていた「雁(がん)さん」(私は彼のことをそう呼んでいた)は、子ども向けに『古事記』を英訳する仕事を手伝う気はないかと声をかけてくれた。そんなわけで、数週間ごとに黒姫へ通う生活が始まった。ラボランドの「鴻来坊」に寝起きしながら、歩いて雁さんの家へ出かけ、雁さんと西藤さんという女性と一緒に翻訳に取り組んだ。
鴻来坊には、私ひとり。雪が大地を覆い、満月が銀の光を降り注ぐ夜は、クロスカントリー用のスキーで静けさにつつまれた森や野を滑ったものだ。」

「1980年1月、私は日本の捕鯨船団に同行して南氷洋(南極海)へ向かい、戻ってきたのは4月だった。その年の7月、人生の節目ともいうべき40歳を迎えた私は、腰を落ち着けるべき時が来た、と悟った。既に、心は決まっていたのだ、これからの一生を日本で過ごしたいと。だが、どこに?
沖縄も、北海道も大好きだ。日本全国、好きな土地はたくさんある。迷う私の背を押したのは、雁さんだった。子ども向けのお話を書いてみないか、宮沢賢治の作品の英訳も一緒にやろう、そう誘ってくれたのだ。その後まもなく、私は「六月」という村に古いわら葺き屋根の家を借りて、引っ越した。これが黒姫での暮らしの始まり、1980年10月のことだ。」

「以来、何千回となく訊かれてきた、「なぜ黒姫なのか」と。雁さんが、その答えだ。美しい山々に抱かれた広い大地。野尻湖。近くには戸隠もある。豊かな自然に、すばらしき人々。狩野先生、加藤三男、風間義雄を初めとする、またとは得がたい友。」

「いまの私は、62歳の〃日本人〃だ。信濃町の役場には、私の戸籍謄本が保管されている。
なんと恵まれた半生――ことに、こちらへ移り住んでからの日々は最高だった。ありがとう。すべての人々にお礼を言いたい。そして、気高く美しい黒姫山にも!」

2002年8月1日  C・W・ニコル


C.W.ニコルの紹介
 1940年、イギリスの南ウェールズに生まれる。
 17才で、高校卒業と同時に恩師に同行してカナダへ渡り、北極地域の野生生物調査を行う。19才でイギリスへ戻り大学へ進学するが、北極への思いを断ち切れず、20才で退学。以後、カナダ政府の漁業調査局、環境局の技官として12回に及ぶ北極地域の調査を行う。この間、1962年に来日、2年半のあいだ日本で空手の修行をする。
 1969年に日本語修得のため再び来日、東京日本語学校・日本大学等で2年間学ぶ。
 1967年から2年間、エチオピア政府の依頼により、国立公園建設のための技術顧問としてエチオピア・シミアン高原へ渡り、その後、革命によって計画が中断されてカナダへ戻るまで公園長として22名のレインジャーを率いて活躍した。この間に、「ティキシィ」、「アフリカの屋根から」、「ムービング・ゼン」等の著作を行い、アメリカ、イギリス、カナダ、メキシコ等で出版される。
 1975年、沖縄海洋博にカナダ館副館長として来日。その後、1978年にカナダ政府技官の職を辞して小説家として来日して以来日本に定住し、1980年からは長野県・黒姫山の麓に住んで、自然とのかかわりを大切にしながら様々な文化活動、執筆活動を行ってきた。その在日期間は通算29年(2002.5現在)に及ぶ。
 1994年からは、わが国初の環境問題専門学校「東洋工学専門学校」の副校長としてフィールド・ワークを中心に直接学生たちの指導に当たる一方、内閣官房「21世紀地球環境懇話会」のメンバーとしてもその経験と知識を環境保護に活かすべく精力的に活動。
 1995年7月10日念願の日本国籍を取得し、新日本人として創作活動と環境保護活動に新たな意欲を燃やしている。
 2000年夏にはブエナ・ヴィスタ配給による長編ファンタジーアニメ「風を見た少年」が全国公開され、近々「風を見た少年」につづく日本語書き下ろしファンタジー小説第二作目を発表の予定。2002年5月には長年育てた『アファンの森』が財団として認可され初代理事長として、新たに森づくりに意欲を燃やしている。

主な著作

「ティキシィ」、「冒険家の食卓」、「バーナード・リーチの日時計」 角川書店
「北極探険十二回」 潮出版社
「C・W・ニコルの青春記」「野性の呼び声」「ぼくのワイルド・ライフ」集英社
「C・W・ニコルの自然記」「帰ってきたTANUKI」 実業之日本社
「白い雄鹿」、「北極カラスの物語」、「魔女の森」「風を見た少年」他 講談社
「MOGUS」小学館、など、出版点数は90点を超える。
「勇魚」、「白河馬物語」「盟約(上下)」「遭敵海域」 文藝春秋


信濃町観光協会 TEL(026)255-3114/信濃町観光案内所

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