こんなところに、ラボ・パーティの小さな公園がある

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小説『コレクター』


小説『コレクター』、The Collector by John Fowlese 1963 より抜き書き


コレクターに囚われた女子画学生が 尊敬している画家を想い出し、
彼の言葉 を書いている・・・・

p7
1 真の芸術家ならば、全存在を芸術に捧げなければならない。
その点でいささかでも不足がある人物は芸術家ではない。

2 こけおどしはいけない。出来合いの作品、出来合いの思想。

3 政治的には左翼でなければならぬ。
社会主義者はいろいろまちがいをやるけれども、
無関心ではない唯一の人々だから。 かれらには感受性がある。
世界を変えようとしている。

4 いつも創らねばならぬ。何かを信ずるなら行動しなければいけない。
行動について語るだけで満足することは、
まだ描いていない絵の自慢をするようなものだ。

5 何かを深く感じた場合その感情を表に表わすのを恥じてはいけない。

6 イギリス人であることを受け入れるべし。

7 自分の過去と妥協してはいけない。
創り手としての自分の前に立ちふさがる過去の自分を切り捨てるべし。

8 政治的ナショナリズムを憎まねばならない。
政治でも、芸術でも、ほかのあらゆる分野においても、
にせもの、浅薄なもの、不必要なものはすべて憎まなければいけない。
些細な下らないことに費やす時間はない。まじめに生きるべし。

ここからは気になったところの書き写し

p15
ことばというもの。その不完全さ。
絵でならば描ける。彼の顔や表情を描ける。
でもことばはどれもこれも擦り切れている。
ほかの物や人のために使われすぎている。


ことばはデッサンや、油絵や、彫刻とくらべれば、たいそう粗雑で、
恐ろしくプリミチブだ。 乱雑な絵そっくり。折れた鉛筆でデッサンするみたい。

あの絵を見ながらぼくが考えるのは、
ぼくが一生かかって掴もうとしている凄い技術があの絵にあらわれているということだ。
一生かかっても恐らく掴めない技術がね。
きみは若い。理解はできても、まだ感じることはできないはずだ。
ぼくらの年齢まで背伸びしちゃいけないよ。

きみは6フィートの塀のむこうを覗こうとしているこどもだ。

きみ自身については、語っていない。きみはカメラを使っているんだ。
……きみは他人のスタイルで描いたんだ。これはみんな写真ですよ。
それだけのこと

p50
あの人は、<物事を徹底的に考える>ことをしない人間を憎み、
自分はそれを実行している。厳しすぎるほどに。

p57
あの人は近作のデッサンを私にくれた。
それは仕事机の上のコーヒー沸かしと、茶碗2個のデッサンだった。
とても簡潔で気負いや混乱のない、美しい絵だった。



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