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青銀狼の一匹劇場
第21話 消えない傷『後』
玉乗り6兄弟の物語
第二十一話 消えない傷『後』
(くっ・・・もうどうしようもないのか・・・!)
思わず目を瞑ってしまう。俺の命はもう終わった・・・諦めて殺されるのを待っていたが、何も襲ってくる気配がなかった。恐る恐る目を開けると、目の前にルクの手があった。
『ぐぅっ・・・リュシフル・・・早く俺に着いてる首輪を・・・うがぁっ!』
一時的に本来の意識が元に戻った。しかし、すぐにまた闇の能力によって支配されてしまう。再び腕を振り下ろそうとした時だった。
バシッ!バローゼが割って入り左腕で押さえた。まだ右腕の出血が酷い。このままじゃバローゼの命も危ない。何とかしなければ・・・。
『俺の背中に乗れ!』
と、怪我をしている右腕を差し出す。何かいい作でも浮かんだのか。リュシフルは戸惑った。
『で、でも・・・。』
『いいから乗れ!焼き殺されたいのか!・・・うぐっ!早くしろ!』
言われた通りリュシフルはバローゼの背中に乗った。炎最強種の背中に乗ったのは初めてでもあり、少々慣れていなかった。と、ルクの腕を振り払い距離をおく。
『いいか、チャンスは一度だけだ。俺があいつに真正面からぶつかって動きを止める。その隙に飛び移って、その短剣であのカオスリングという首輪を破壊しろ。』
『わかった。』
装備していた短剣を抜いた。自分でできるのだろうか・・・不安があった。
『うぉああああ!!』
身体中が真っ赤に燃え上がる。でも、熱さが感じなかった。どうして熱くないのかと不思議で思っていた。
気づいたらルクと組み合いになっていた。
『何をしている!早くしろ!』
リュシフルはルクに飛び移った。上手く肩のところに乗ったが暴れ始めた。必死で毛皮を掴んで振り落とされないようにした。バローゼもルクの動きを抑える。
『邪悪なる者よ、今浄化し消え去るがいい!』
バリーン!剣を刺し黒い首輪が砕け散る。何とかカオスリングを破壊することに成功した。と、我に返ったとたんにルクは地面に膝をつき座り込んでしまい、息も荒れていた。
『はあ・・・はあ・・・くっ、どうやら・・・元に戻ったみたいだな・・・。』
少し意識が朦朧としていた。だが、ルクだけではない。バローゼの意識も途絶えようとしていた。
『ルク、あの炎最強種を助けてあげて。』
『あぁ・・・分かった。』
そしてルクがバローゼの下に寄る。
『腕を見せてみろ。』
『ちっ・・・やられたお前に・・・傷を治してもらうとはな・・・ったく、情けねぇぜ・・・うぐっ!』
言われるまもなく素直に腕を見せる。少し拒んでいるように見えた。
『すまなかった・・・俺のせいでこんな傷を負わせてしまって。』
『・・・・・・・・・・・・・・・。』
バローゼは沈黙した。言い返す言葉が見つからなかったのだろうか。ルクの手から青白い光が表れバローゼの右腕に当てる。傷口が少しずつ治っていく。
数十秒ぐらいしたときだった。
『もういいぞ。手を退けろ。』
『何言ってるんだよ、まだ完全に治っていないよ!』
リュシフルが言った。まだ回復している途中なのに。止血はしたものの、まだ完全に治ってはいない。
『俺に指図するんじゃねぇ!あとは自分で何とかする。』
バローゼは立ち上がり離れて行こうとする。
『でも、まだ・・・。』
『焼き殺されたいか?・・・死にたくなければここから失せろ!』
このとき感じた。これは脅しではない。本当にこれ以上喋ると殺されると思った。徐々にバローゼの姿が小さくなっていく。
『あいつ・・・俺の精神がかなり消耗していることを知っててわざと・・・。』
『え・・・?』
ルクが口を開く。そのことにちょっと分からなかった。
『「奇跡のいやし」をかけていたのが分かっていたようだ。俺の身体に気を遣ったのだろう。』
このまま続ければルクが倒れてしまう。そう思ってバローゼは、あえて回復を途中で止めさせたのだろう。
『すまなかったなリュシフル・・・俺のせいでがっかりさせるような思いをさせて・・・。』
ルクがリュシフルに謝った。唯一ドラゴンが大好きであるリュシフルに、相手に傷を負わせてしまったから・・・。
『ううん、別に気にしていないからいいよ。何か今日はいろいろ勉強になったし、危なかったけど・・・それにルクが無事に居てくれればそれだけでいいからね。』
そこまで気にせず笑みを浮かべ応える。野生のドラゴンにこんなドラゴンも居るってことが分かった。でも、内心最後まで傷を治していけばいいのにと思っていた。
そして数日が経過した日、ルクに内緒でまたファンドル火山へ向かった。あの後ちゃんと傷が治っているかどうか気になっていた。光基本種淡に乗って・・・。
『会えるかな・・・バローゼに。』
リュシフルは自分の乗ってきたドラゴンに問い質す。そのドラゴンも理解したのか小さくうなずいた。暫く10分ぐらい待ったか、炎最強種が此方に向かって歩いてくる。
『・・・ん?・・・貴様あの時の。何のようだ。』
ちょっと怒っているように見えた。何も隠すこともない。自分の思っていることを素直に話す。
『あの後、ちゃんと傷が治ったかなぁって、気になってここに来たんだよ。』
『ただそれだけのためにか。ちゃんと傷は治っている。』
と、バローゼはリュシフルに右腕を見せる。よく見てみると、やはり完治しておらず、縦に太い線が入るように傷跡がしっかり残っていた。
『俺もそろそろここを離れねぇとな。』
『離れるって、どこか行くの?』
『ふっ、貴様には関係ねぇ。ここらじゃやもう俺以上に強い奴はいねぇってことだ。』
何となく分かった気がした。バローゼもより強いドラゴンと戦うために旅に出るってことが。
『待って!』
と、バローゼを呼び止める。
『あぁ?何だ、話したいことがあるなら早くしろ。』
『あぁ・・・いや、その・・・また会えるといいよね。』
言い出す言葉が上手く言えず、こう口にしてみた。でも、そんなに甘くはなかった。
『バカか貴様。そう簡単に会えるわけねぇだろ。』
返ってきた言葉は厳しかった。でも、また会ってみたかった。バローゼには心の奥深くで何かを抱えているように見えた。
『リュシフル・・・とか言ったな。俺は昔からテイマーが嫌いなんだ。だが、お前だけは違う。そのドラゴンに対する思いやりが俺には感じた。まぁ関係ねぇことだな。』
リュシフルに褒め言葉を投げ返す。竜に対する思いやり。分かってくれたんだと。
『ありがとう。何かそう言ってもらえると嬉しいよ。』
『勘違いするな。まだ足りねぇって言ってるんだよ。(こいつが居ると何か心が余計に熱くなってしまうぜ。)じゃあ俺はそろそろ行くぜ。』
そう言うとバローゼは背を向ける
『また会えるといいなリュシフル・・・。じゃあな。』
灼熱の翼を広げ大空へ羽ばたいていった。紅に染まる赤き竜よ・・・。
「そしてまた偶然に会ったわけかぁ。」
バローゼ「ふっ、偶然にも程が過ぎるぜ。」
二人は緑が豊かな丘に座って話をしていた。まさかこんな形で再会するとは思ってもいなかったし、リュシフルにしては嬉しい気持ちがあった。
バローゼ「そういえば、お前の光最強種ルクはどうしてんだ?」
話を変えてルクのことを聞かれた。
「あ・・・・・・・・・。」
リュシフルは言葉が詰まって沈黙した。
バローゼ「どうした、何かあったのか?」
このことはあまり言いたくなかった。
「ルクは・・・もうここには居ないよ・・・。」
バローゼ「居ない?どうしてだ。」
リュシフルは説明する。
「兄弟達に聞いたんだ・・・。俺が修行に出ている間に、竜堂院に闇最強種のジュノン・カオスデスっていうドラゴンが現れて襲いかかってきたらしい。兄弟達と竜堂院を守るため、戦って命を落としたんだ・・・。詳しい状況は分からないけど・・・俺のせいで・・・。」
重々しい口調でバローゼに言った。あまりこのことは話したくなかった。
バローゼ「そうか・・・そのドラゴンに・・・。もう一度ルクと交えてみたかったが、仕方ねぇか・・・。」
本当はもう一度交えてみたかった。バローゼから本音が零れ落ちる。
「さあ、そろそろ戻らないと。カフェで皆が待っているしね。また頼むよ。」
「分かったよ。」
再びバローゼの背中に乗って兄弟達が居るカフェに戻ることに。そして・・・。
「どうしても行くのか。」
バローゼ「あぁ、やはり俺も見つけなければいけないものがあるからな。それに自分自身でしか探すことしかできないものかもしれないしな。」
せっかくまた会えたのに、リュシフルは一緒に旅をしないかと誘ったが、バローゼ自身探すものがあるから無理だった。でも、止める気はあまりなかった。
「そう・・・それなら俺は止めないよ。バローゼがそれでいいなら、それでいいと思う。いつかまた。」
バローゼ「あぁ、今度はそう簡単にいかないかもしれなが・・・来世な。」
最後に言った来世。少し気になったがあえて口にしなかった。
バローゼ「じゃあなリュシフル。しっかりやれよ。」
紅き翼を拡げ大空へと羽ばたいていった。本当に来世になるのか。いつかまた・・・。
「あ、リュシフルさん帰っていらしたのですか。」
カフェからサリカが出てきた。
「サリカさん。あ、兄弟達は大丈夫でしたか?」
「えぇ、大丈夫でしたよ。」
そう言ってカフェの中に入る。と、そこには兄弟達がぐっすりと眠っている姿があった。
(今日も1日ゆっくり休んでいくか。明日に備える必要もあるし。)
思わず笑みが表れる。心の中がいやされた。そんな感じがした。今日もこのカフェで宿を取ることにして、明日には北西の森に向かって、そしてデスドレイク城を目指して・・・。
第21話「消えない傷(後)」おわり
さて、今回は前・後編に分けて書いたのですがいかがでしたか?
まだまだ未熟な場面もありますが、辛口のコメントをお待ちしております。
いろいろと、ドンクロをするとネタも浮かぶところもありますが、
唯一電車の中でゆっくり座って景色を眺めている時でも浮かぶ時も
少々ありますf^_^;
次回はイルートの街を離れ、再び森の中に入っていくわけですが、
あのドラゴンが登場します。どうぞお楽しみにm(_ _)m
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