青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第31話 仲間を捜して



玉乗り6兄弟の物語

第三十一話 仲間を捜して

数時間歩いて、もうあの老夫婦が住む家も見えなくなっていた。日も沈みかけ空に星が見え始め、夜になろうとしていた。
「ふぅ…時間が経つのが早く感じるなぁ。これ以上進むと危険だから、あそこに登って休もう。」
僕は少し丘になっているところを見つけ、そこで体を休めることにした。星空を眺めながら…いつの間にか月も見えていた。
(みんな…絶対に生きててよ!僕はみんなのこと信じているんだからね…!)
目が潤んできた。みんな生きているんだ。思いは変わらなかった。
「グルルルル。」
背後から威嚇するうなり声が聞こえてきた。ふっと後ろを振り向く。ドラゴンだろうか、二匹の黒い魔物が待ち構えていた。
「な…何?ぼ、僕を食べる気でいるんじゃないよね…。」
いかにもお腹を空かせているように見える。と、そのときだった。
「グガァアア!!」
一匹が僕に襲いかかってきた。
「うわっ!うぅ、戦うというなら相手になってやる!」
アクリュは片手にダガーを出して身構える。こんなところで食べられてたまるか。しかし、相手は二匹。明らかにこちらが不利な状況だ。するとダガーを見てほんろうしてか、もう一匹がアクリュに飛びかかる。
「アピアダガー!!」
アクリュのアピアダガー!数本の小刀が舞い魔物に当たった。その魔物は遠くへ吹き飛ばされてしまった。やった、うまくいった。そう見えたが、さっきの一匹が背後から突進してきた。
「うわぁっ!!」
アクリュは吹っ飛ばされてしまう。と、その魔物は前足でアクリュを押さえつける。
「うぅ…くそぉ。まだだ。」
しかし、もがいても足は離れようとはしない。
「ホーリーシュート!!」
「グガァッ!」
と、どこからか眩いレーザーが飛んできた。それを喰らった魔物は警戒したのか、アクリュに乗せていた足を退け立ち去っていった。

「大丈夫?」
「いたたた…その声はエルム!」
「アクリュ!よかった無事だったんだね。」
突然のことだった。なんと助けてくれたのは、兄弟の一匹エルムだった。でも、よく見てみるとエルムは卵の殻をかぶったドラゴンに乗っていた。
「エルムこそ無事でよかったよ。それよりそのドラゴンは?」
アクリュは卵の殻をかぶったドラゴンについて質問した。
「この子はユフィルて言うの。今私が育てるドラゴンなの。ここじゃ危ないから、ユフィルに乗って安全な場所に行きましょ。」
エルムに言われたとおりアクリュはユフィルに乗った。そして、夜空へ羽ばたいて行った。


「まずはエルムかぁ。他のみんなは大丈夫かなぁ。」
ユフィルに乗りながら話をする。
「きっと大丈夫よ…きっと…。」
少し重々しい口調で言った。
「確かジュノンを倒した後に、僕たちはあの骨のドラゴンにやられたんだよね。」
「うん…そうよ。」
「あいつのせいで世界がこんな風になって僕は許せない。エルム、あの骨のドラゴン、みんなを捜して倒しに行こう!」
しかし、エルムからでた答えは思いもよらなかった。
「ごめんアクリュ…私、もう戦えないわ。」
戦えない…いったいどういうことなのか。
「え…?どうして?どうして戦えないのエルム。」
エルムの言ったことに理解を示すことができなかった。
「もう少し待ってて。その答えが分かるから…。」
しばらくすると、アクリュたちはとある祠に着いた。そこで見たものは…。
「こ、これって…。」
奥の方に自分より一回り大きい卵があった。
「わかったでしょ。私が戦えない理由が…。」
そう、知らない間にエルムは卵から孵るドラゴンを育てていたのだ。思わずアクリュはこう口にした。
「これ・・・エルムが産んだの…?」
「そんなわけないでしょ!!」
ホーリーシュートを放つ構えをとった。
「きゅ~!!」
「あ、ごめんね、いまご飯の用意をするからね。」
ユフィルの鳴き声でエルムは晩ご飯の支度を始めた。
まえに出されたものは魚が3匹。この近辺の川で捕ってきた魚だろう。
「でもどうして…。どうしてこの子たちを…?」
再びアクリュがエルムに聞く。
「分からないわ…自分でも分からないの…。気づいたらこの子たちが目の前にいて、助けなくちゃいけない。そう感じて育てることにしたの。」
気づいたらこの子たちが目の前にいた。自分でも何がどうなったかすら記憶になかった。
「みんなも心配してるし、捜してあの骨のドラゴンを倒しに…。」
「この子たちを放って行けっていうの?そんなことできないわよ!…アクリュ…もう私…戦うのいやなの…これ以上みんなが傷つくところを見たくないの!」
「エルム…。」
何か言葉をかけなくては。でも、見つからなかった。
「ごめんね…明日になったらここから出ていって。私はここに残ることにするから…。」
「・・・分かったよ…そこまで言うなら仕方ないよ…。でも、これだけは忘れないでよ。僕たちは仲間であり、兄弟であること。そして、僕たちを育ててくれたテイマーのことを。戦えないとか言ったけど、未来は僕たちで変えなきゃ意味がないんだよ。そこのところを考えてみてよエルム…僕は信じているから…。」
「……。」
と、アクリュは外へ出ていった。今夜は星空を眺めながら寝ようと決めたのだろう。アクリュの言ったことにエルムは沈黙した。アクリュの思いは伝わったのでしょうか。

次の日の朝だった。耳にザーッという音が入ってくる。雨が降っていた。エルムは祠から出てきて辺りを見回す。しかし、そこにアクリュの姿はなかった。
(………本当に…行ってしまったのね…。)
このとき何を思ったのだろうか。むしろ感じ取ったと言ってもいいかもしれない。
「ユフィル!」


(どうしちゃったんだろう…もう戦う気力がないのかなぁ…。それともやっぱりあの卵を育てるために。)
深い林の中を、考えごとをしながら歩くアクリュ。自分としてはどうしてもエルムについて来てもらいたかった。また一人になってしまった。心の中で水漏れしたような感じがした。
「昨日はよくもやってくれたな。」
「まさかあいつがおまえの仲間だったってことは驚いたぜ。」
「お前たちは昨日の!」
と、アクリュの前と後ろに昨日戦った黒い魔物がまた現れた。よりによって挟み撃ちでくるとは。アクリュはダガーを持って身構えた。
「昨日は助かったが今日はそういかないぜ!」
一匹がアクリュに襲いかかる。
「うぅ……うわぁっ!!」
一匹の攻撃は避けることに成功した。しかし、もう一匹の早い攻撃は避けることができなかった。地面を滑ると泥まみれになってしまった。
「うぅ…前が見えない…うわぁっ!!」
泥が目に入っのか、怯んでいる隙を見逃すことなく、二匹の攻撃が襲いかかる。
「どうしたんだ?ちゃんと守らないと怪我するぞ!」
「うわぁっ!!・・・・あぐっ!!・・・けほっ!けほっ!」
アクリュは地面に倒れこんでしまった。と、地面に倒れたアクリュを一匹が踏みつける。
「ふっ、何だ。意外と呆気ないじゃないか。」
「くっ……。」
「ジ・エンドだな。死ね!」
このままではアクリュが。もはやこれまでかと思った時だった。
「きゅ~!!」
何かが黒い魔物にめがけてぶつかってくる。
「ぐあぁっ!!」
アクリュを押さえつけていた魔物が吹っ飛んだ。
「アクリュ大丈夫?」
ユフィルの背中にはエルムが乗っていた。
「エルム!どうして僕のところに?」
突然のことにアクリュは驚いた。
「私、考え直してみたの。やっぱり捜さなくちゃいけないって。それに、忘れてはいけないこともあるし…アクリュ、私も手伝うわ!」
「エルム…ありがとう!」
エルムも加わって戦うことに。
「くっ、まだ終わっちゃいねぇぜ!」
「グォアアア!!」
今度は二匹同時に襲いかかる。ターゲットはエルムとユフィルだ。
「ユフィル!貴方の力を見せてあげて!」
「きゅ~!!」
エルムがかけ声をだすと、ユフィルは気合いが入ったような鳴き声で応えた。二匹の魔物が襲いかかってきた。と、ユフィルは二匹の攻撃を巧みにかわしたではありませんか。
「何!」
「俺たちの攻撃が!」
そして、眩い光がエルムとユフィルを包み込む。
「きゅ~!!」
一つは光の極太のレーザー、ホーリークルセイドに。もう一つは自ら包み込む神秘な光、神羅烈風で攻撃する。
「うっ!グァアアアア!!」
「この…俺たちが…グァアアアア!!」
黒い魔物は神秘なる光によって浄化された。エルムとユフィルの技で。
さっきまで降っていた雨が止んだ。
「きゅ~…。」
ユフィルが低く鳴いた。と、そのときだった。ユフィルの身体全体から眩い光が放たれた。いったい何が起こったというのか。逆に今度は光が包み込む。そして…。
「グォアアア!!」
「し、進化した…。」
「これが至竜の姿…よかったわ無事に成長して。」
さっきの戦いで経験値を得たのか、卵の殻をかぶった姿から、大きな白い翼を持つ姿へと変わった。そのことに見とれているアクリュの下にエルムが寄る。
「それにしてもずいぶん汚れたわねアクリュ。ちょっと待ってて、私がきれいにするから。」
エルムは泥まみれになっているアクリュの汚れを落とそうとする。でも、拭くものなんて何もない。エルムは素手でアクリュの身体に付いている泥を落とすことにした。
「でも、エルムまで汚れちゃうよ…。」
アクリュは気遣うように言った。
「いいのよ。気にしないで。それに…(本当に私って馬鹿よね…。もっと自分を見直さなくちゃ。)」
「どうかしたの?」
「ううん、何でもないわ。とりあえず私について来て。」
エルムの言われたとおりアクリュはユフィルに乗ってついて行くことに。
「うん、分かったエルム。」

第31話「仲間を捜して」おわり

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