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青銀狼の一匹劇場
第32話 濃霧
玉乗り6兄弟の物語
第三十二話 濃霧
「う~ん…でも困ったわ…まだ卵が一つ残っているし…。」
まだ祠には卵が一つ残っていた。むやみに運んだりしている時に敵に襲われたりしたら大変なことになってしまう。
「あ、いいところがあるよ!」
「いいところって?」
「とりあえず祠に戻って、卵を運んでいこう。僕が案内するから。」
アクリュの言われた通りエルムは行動する。まずは祠に戻ることに。
次に祠から卵を運び出す。そしてこれをユフィルの足を使って運んでいこうというわけだ。
「落とさないように気をつけてね。」
エルムが一声かけてあげた。承知したとユフィルはうなずいた。
「それじゃ出発するわよ。」
卵を足で掴んで、更にアクリュとエルムを乗せて羽ばたいた。アクリュが言ったいいところとはいったい何処なのでしょうか。数十分ぐらいしたときだった。と、一軒の家が見えてきた。アクリュが言ったいいところはもしかして。そして家のドアの前まできた。
ドアを開ける音がする。家からお爺さんが出てきた。
「おぉ!この前のドラゴンか!どうしたんじゃ?」
少し驚いた表情だ。
「ちょっとお願いがあって戻ってきたのですが…。」
困った顔をしてアクリュは言った。
「この子の面倒をしばらくの間見てもらえないかと思って…。」
アクリュに続いてエルムも卵を指して言った。本当にしばらくの間だけでも。
「そういうことか。なぁに全然心配はいらんぞい。わしと婆さんに任せてくれ。」
「本当ですか!?よかったねエルム!」
「助かったわ。」
何とか卵を預けてもらうことができた。ここに戻って来るのはいつになるかはわからないが。
「いつでも待ってるからの。」
「ありがとうございます!」
二匹はユフィルに乗って羽ばたいて行く。他のみんなはどこに居るのか。少し不安を抱えて、アクリュとエルムは一先ず町や村を探すことにした。こういうところに行けば情報も入りやすい。
「早くみんなを捜さないと。」
「きっと心配しているわ。」
すると前方から何かが飛んでくる。にしてもかなり早い。間違いなくドラゴンであろう。と、アクリュとエルムの前に立ちはだかる姿は最強種の姿をしていた。属性からして雷だ。
「おいお前ら、ここらで炎最強種を見なかったか?」
雷最強種はいきなり炎最強種の居場所を聞いてきた。
「炎最強種?(もしかしてバローゼのことかなぁ。何かあるかもしれない…。)知らないよ。」
何を思ったのか。アクリュはあえて知らないふりをした。
「ちっ…ここも駄目か…もし右腕に傷がある炎最強種に会ったら、次は逃げられるなと伝えろ。じゃあな。」
「ちょっと待って!」
その場から立ち去ろうとする雷最強種をエルムが呼び止める。
「貴方の名前をまだ聞いていないわ。」
「貴様等に教える価値はない。俺は急いでいるんだよ。」
そういうと雷最強種は去って行った。
「エルム、あれはレッシュじゃないよ。最初は僕もそう思ったけど、雰囲気が違うよ。」
「やっぱりそうよね。でも、よく分かったわね私が思ったことが。」
「あははは、何となくだよ。それよりエルム、今すぐ僕からのお願いだけど、あの雷最強種が去って行った方に向かってくれる?」
さっきの雷最強種が言ったことが気になったのか、アクリュはエルムに頼んだ。
「いいわよ、私も気になっていたところだし。追いかけてみましょ。ユフィル、さっきのドラゴンを追いかけて。」
二匹は雷最強種の後をつけることにした。このときアクリュはバローゼの居場所が気になった。もちろん他の兄弟が居るかもしれないとも思った。このことはエルムも同じだった。何か手がかりを掴めるかもしれないと。
雲行きが少しずつ怪しくなってきた。目の前に少し濃い霧が立ちこめてきた。気がつくとそこは山岳地帯の集落付近に来ていた。上空から見下ろすと、壊れた家々がいくつかあった。雰囲気からして誰も住んでいないようだ。とりあえず降りてみることにした。多少殺気を感じるがただ風が吹き抜けるだけだった。
「さっきのドラゴンどこに行ったんだろう…。」
「確かにこっちに来たはずだけど…もしかしたら既に頂上付近までに行ったのかもしれないわ。」
辺りを見渡す限り先ほどの雷最強種の姿は見当たらないようだ。すると霧の中から何かがこちらにやって来る。
「そこに居るのは誰だ。」
若干唸り声も混じった声だ。
「誰なの?」
エルムが問い質す。
「俺の名はエルドラ、炎基本種濃だ。」
炎基本種濃。体つきからして燃えさかる溶岩流の色をしている。その背中には溶岩が固まった岩石を背負っているように見える。指一本身体に触れただけで火だるまになりそうだ。
「それより、ここに雷最強種のドラゴンが来なかった?」
アクリュが雷最強種のことを尋ねる。
「…ルミナードのことか…やつならここには来ていない。」
アクリュたちが追っていた雷最強種はルミナードと言うらしい。名前を知っているということは何か関係でもあるのだろうか。
「ルミナードって言うんだ。さっきのドラゴン。それで、そのルミナードを追ってここに来たんだけど、途中で見失っちゃって…。」
「お前らやつを追っているのか。やめておけ。」
エルドラが忠告した。いったい何故追ってはいけないのか。
「え…?どうして追いかけちゃいけないの?」
「やつはネルヴァの手下。下手に接せれば命はない。簡単に言えば殺されるということだ。 」
あの骨の身体をしたドラゴンの手下。そう、これを聞いてから世界が無と闇で徐々に支配されていることが分かった。
「あの骨のドラゴンの手下…。」
「そのようすからすれば、お前らもネルヴァに会ったようだな。ふっ、こうして生きてる俺が不思議のようだ…。」
「何かあったの?」
「ちょっと長くなるが、話してやるか。ここは元々俺たちが住処としていた集落だった。」
『くそっ…もう逃げることはできん。』
一頭の炎ドラゴンが言う。
『仕方ない…みんな体制を整えろ!』
そういうと他の炎のドラゴンたちも身構える。
『どんな手を使おうが同じこと。ルミナード、このドラゴンたちは貴方の獲物。好きにするがよい。』
『承知しましたネルヴァ様。』
上空にいた一頭の骨のドラゴンは姿を消し、雷最強種だけとなった。
『今だ!放て!!』
身構えていたドラゴンたちが一斉に燃えさかる火炎弾を放った。炎の魔法技ファイアテンペスト以上の威力だ。
『愚か者共が。そんな技が俺に通用するとでも思ったか。いかづちの裁きを受けるがいい。』
ルミナードはシールドを張った。と、火炎弾を打ち消したそのときだった。
『な…何!……ぐあぁああ!!』
一頭のドラゴンに強大な稲妻が落とされた。
『大丈夫か!…ぐあぁあ!!』
更にもう一頭のドラゴンにも稲妻が落とされた。
『まとめてあの世へ送ってやるよ!グォアアア!!』
と、両手にため込んだ電撃を一つにまとめ、陸地で身構えているドラゴンたちに放った。
SEドーン!!ものすごい音が響いた。あちこちにドラゴンは吹き飛ばされ全滅した。
『弱いな。次の場所で期待するか。』
と、ルミナードは上空から去って行った。辺りに霧が立ちこめてきた。
『うぅ…何なんだあのドラゴン……。』
すると瓦礫のなかから一頭のドラゴンが出てきた。このドラゴンがエルドラだった。
「なんとか俺は自力で守り抜くことができたが、他の仲間は全滅した…。」
「それでここの集落が…。」
今ではこの有様。何も手がつけようのない状態だ。
「やつは強大な能力の持ち主だ。分かったなら辞めておくことだな。」
確かに追うのは辞めておいたほうが身のため。エルドラの言うとおりにしたほうがいいかもしれない。
「あとここに私たちと同じようなドラゴンを見なかった?」
エルムが他の兄弟の居場所を聞く。
「お前たちと同じ種族のドラゴンか。確かやたら語尾に『です』を付けるチビと会ったが。」
~です。この口癖はあの幸運種しかいない。
「レッシュだわ。それでどこにいるの?」
更にエルムは居場所を聞いた。
「まだ居るか分からないが、少し山道を登った小さな湖の畔に行くといいかもしれん。」
「そこにレッシュが居るんだね。じゃあ早く行こう!」
「待ってアクリュ。この天気じゃユフィルに乗っていくことはできないわ。」
辺りにはまだ濃い霧が立ちこめている。空からの探索じゃ何処に湖があるのかも分かりにくい。
「それじゃ・・・。」
「ユフィルはここにおいて行くしかないわ。ごめんねユフィル、しばらくここで待ってて。」
ユフィルは頷いた。どれくらいかかるかは分からないが、一刻も早くレッシュを見つけ出さなければ。
「気をつけろよ。山中には魔物が居る。」
「分かっているわ。それより、ユフィルを食べたりしないでよ。」
「フンッ、誰が食うかよ。」
そして二匹は濃い霧の中へと消えていった。
「無事に還ってこれるといいが・・・。」
第32話「濃霧」おわり
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