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青銀狼の一匹劇場
第33話 いかづちの帝王
玉乗り6兄弟の物語
第三十三話 いかづちの帝王
目の前は白の世界。近くに見えるものといえば、辛うじて地面が見えるだけ。足下も注意して歩いていかなければならなかった。少しずつ進むにつれて、風が冷たくなってきた。
「ちょっと寒くなってきたような…。」
身体が少し寒く感じたのか、アクリュが言った。
「何か現れそうな予感がするわ。」
エルムが予知するかのように言った。その予感がするが、当に的中するかのように敵が現れようとは思ってもいなかった。
どこからか地面がこすれる音がしてきた。と、そのときだった。
「え…?…うわぁああ!!」
「アクリュ!!」
シュルシュル、パシッ!と縄で縛り付ける音がした。と、アクリュがいつの間にか木の上で捕獲されている。その木の上にも影が見える。エルドラが言っていた魔物か。
「ウヒャヒャヒャ!まさか俺っちの罠にかかってくれるとは。こいつはラッキーだぜ。」
「誰!姿を現しなさい!」
「それはできねぇなぁ。ま、とりあえずこいつは頂いていくぜ!あばよ!」
瞬時にその影はアクリュをさらって行こうとした。
「うわぁああ!」
「アクリュ!逃がさないんだから!」
それを見たエルムは影を追いかける。相手は忍者みたいな感じで木を悠々と飛び移っていく。こんなところで大事な兄弟一匹を奪われるわけにはいかない。それにしても、あの影は以前アクリュに襲いかかった黒い魔物と何か関係があるのだろうか。
「ケッ、しつこい野郎だなぁ。こいつでも喰らえ!」
黒い影は紫色のブレスを放った。ダークブレスだ。でも、エルムは詠んでいたかシールドを張った。
「そんな攻撃、私には通用しないわ!」
エルムの周りを光が包み込む。いやしの盾だ。
「ふっ、引っかかったな。」
シールドを張ったあと一歩足を踏み入れた時だった。
「きゃあっ!」
「エルム!」
突然エルムの姿が消えてしまった。何が起こったのか。
「そこで暫くおねむの時間を過ごしておくんだな。あばよ!」
「うわぁああ!」
アクリュがさらわれてしまった。エルムはどうなったのか。すると、地面に大きな穴が開いていた。どうやら落とし穴にかかったようだ。
「痛たぁ…こんな時に不幸の予感なんて…。」
少しの間座って上を見上げて考えた。落とし穴は予想以上に深く、自力ではい上がれる状態ではなかった。
「(困ったわ…このままじゃここで一夜を過ごすことになってしまうわ。)誰か助けて!」
試しに大声で助けを呼んでみることにした。
「誰か居るですか?」
すると返事が返ってきた。誰かが通りかかったところ、エルムの声が聞こえたのか。
「お願い助けて!罠にかかって上がれなくなったの。」
もう一度救いの声を言ってみる。
「わかったです!ちょっと待っててくださいです!」
聞こえてくる声の言うとおりにエルムは待ってみる。2分ほどして、上から一本の長い蔓が降りてきた。
「これに捕まってくださいです!」
「わかったわ!」
エルムは蔓をしっかり握りしめる。少しずつ、少しずつ引っ張られていく。そして…。
「う~ん!…あと少し…ふぅ!」
「助けてくれてあり……レッシュ!」
待っていた光景、なんとエルムを助けてくれたのは兄弟の一匹レッシュだった。
「エルム!どうしてここにいるですか!」
レッシュも助け出したのがエルムだったことに驚いた。
「そっちこそ。それより無事でよかったわ。レッシュも生きていて。」
いつものレッシュより更に元気が増してるように見えた。
「何言ってるですか。僕はこの通りピンピンしてるです。にしてもエルム、少し重くなったんじゃないですか?。」
ぎゅぅうう!エルムがレッシュの頬を両手で摘む。
「何か言ったぁ?レッシュぅ。」
「ご、ごめんでふ…冗談でふ・・・。」
「あ、こんなことしてる場合じゃないわ。レッシュ、アクリュを探すの手伝って。私が罠にかかった後黒い魔物にさらわれていったの。」
話を戻して、アクリュのことを話す。
「アクリュも一緒だったですか。それで、その魔物とアクリュはどっちに行ったですか?」
「…わからないわ…でも何か、アクリュを餌にするような予感がしたわ。」
どこへ行ったかはわからない。ただ、雰囲気がそんな感じだったことはエルムには把握していた。
「餌にする……!山の山頂です!急がないとアクリュが生贄にされる可能性があるです。かつてこの山には金最強種を一撃の魔法技で倒したドラゴンが居るという噂があるです…。その他にも100頭以上のドラゴンを倒したこともあるみたいで…。名前は確かライオウショウと言って、僕と同じ雷属性で亜種濃だったはずです。」
エルムの言った状況にピンときたレッシュは、アクリュがさらわれていった場所が山の山頂だと確信した。名はライオウショウ。いかにもいかづちの帝王を誇るような名前だ。噂によれば、そのドラゴンは相当な能力の持ち主らしい。
「ち…ちょっと、それって…アクリュが一瞬で丸呑みされてもおかしくないってこと…?」
「そういうことです…。一先ずは山頂に向かうです。」
二匹は急いで山頂に向かうことに。そんなドラゴンがここにいるなんて…無事にアクリュを助けることができるのだろうか。
「さぁて着いた着いた。」
「放せー!」
縄で縛られていながらも必死で抵抗するアクリュ。この後自分がどうなるかも分からずに。
「あぁうるせぇな、少し黙ってろ。」
「むぅ…(あ!今思えば僕、縄で縛られているんだっけ。ここは気づかれないように…。)」
逃げる方法が思いついたのだろうか。アクリュはあのとき、海賊船で捕まったことを思い出し冷静に考えた。と、こっそりと一本のダガーを握っている。苦戦しながらも気づかれないよう縄に刃をこすりつける。
「お前はここの主の生贄となるのだ。そして俺っちはたんまりと褒美をもらうのだ!ウヒャヒャヒャ!さて、早いうちに呼び出しておくか。」
魔物は一本の角らしいものを取り出した。もしかして、いわゆる角笛というものだろうか。
「(もう少し……やった!縄が切れた!)」
縛られていた縄を上手く切断することに成功した。
「いかづちの帝王よ、いざ降臨せよ!」
笛を吹こうとしたその時だった。ザクッ!
「ぐはぁっ!…な…なんだと…!」
「鋼斧の能力、思い知ったか!こう見えても僕は鋼の戦士なんだぞ!」
いや、鋼のドラゴンと言ったほうが正しいかもしれない。魔物の背中には斧が刺さっていた。縄を切断した後、すぐに呪文を唱えブーメランアクスを使ったのだ。しかし、相手も簡単に喰らってしまうとは・・・。
「そう…だったのか…ぐぅ…小癪な手を…!」
相手に与えたダメージも大きいみたいだ。
「次の攻撃でお前を倒す!」
今度は一本の剣を手に持った。最後はアピアソードで決めるつもりだ。
「バカめ、もう俺っちの体力は限界点…。お前も道連れにしてやる!」
最後の力で魔物は角笛を吹いた。低い音だが、辺りに広く響き渡った。
「うぅ!何この音…!」
「いかづちのドラゴンに食われるがいい…全てはネルヴァ様のために…。」
魔物は粒子となって消えていった。やはり何者かが影を操っているのだろうか。
しばらくすると霧の中からアクリュの目の前に大きな影が現れた。少しずつ霧が晴れてくると、その影の正体がはっきりと伺えた。身体の色は山吹色に青紫色の模様が入ってる。一瞬だが所々電気が走って見える。このドラゴン、雷属性のドラゴンに違いない。
「我が名はライオウショウ、この俺を喚んだのは貴様か?」
赤く透き通った目でアクリュを睨みつける。
「(ど…どうしよう…喚んだの僕じゃないよ…。)ぼ、僕喚んだりなんかしてないよ!」
アクリュは正直に応えた。しかし…。
「喚んでいないだと?では質問するぞ。そこに落ちている角笛は何だ?」
ライオウショウは角笛に目を向ける。それは知らないうちにアクリュの足下に落ちていた。
「あ!…いや、こ…これは…。」
本当のことを言おうとするがなかなか上手く言い出せない。
「愚か者が。喚んでおいてそれか。どうやら貴様、死にに来たようだな。」
「ち、違うよ!僕はただ・・・。」
若干怯えながら反抗するように言った。ライオウショウも何か機嫌が悪そうに見える。
ザッ!アクリュが後退りしようとした。
「うわぁっ!」
何が起きたのか。アクリュの足下から煙が出ている。
「逃がしはせんぞ。金属性である貴様はこの俺が粉砕してやる。」
もしかしてライオウショウが目に見えない技を放ったのか。
「うぅ・・・(このままじゃ僕・・・殺されちゃうよ・・・エルム、早く来て!)」
手が震えながらダガーを握り締める。相手は弱点である雷属性。しばらく我慢するしかない。
第33話「いかづちの帝王」おわり
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