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青銀狼の一匹劇場
第35話 優しい心
玉乗り6兄弟の物語
第三十五話 優しい心
辺りに静けさがもどった。頭の中でエルドラがどうなったのか気になりながら、三匹と一頭は上空を飛び交っていた。気づけば白の空間から橙の空間へと風景が変わっていた。
「どうなったんだろう・・・。」
「大丈夫ですレッシュ。エルドラはきっと生きているです。」
レッシュが励ますように言った。そうだよ、あれだけ心配するなって言っていたのだから。でも、真相が先に分かっていたら・・・。
「ねぇ、貰ったこの袋、開けてみない?」
そういえば集落から離れる前にエルドラから貰った白い袋があった。
「それもあったね。開けてみよう。」
エルムが紐を解くと良い匂いが漂ってきた。中身を見てみると、綺麗に焼きあがったパンが入っていた。
「うわぁ、おいしそうです!」
「でも、どうやって作ったのだろう・・・。」
エルムが疑問に思った。言われてみれば本当にどうやって作ったのか気になる。
「とにかく食べようよ。ちょうどお腹も空いてきたところだし。」
「それもそうです。」
三匹はエルドラから貰ったパンを頬張ることにした。パリッとした食感があって美味しかった。エルドラに感謝しなければ。
「グルルル・・・・。」
と、ユフィルが小さく唸り声をあげた。
「あ、ごめんね。ユフィルもお腹が空いていたんだね。」
エルムはヒョイっとパンを空中に投げると、それをユフィルが口でキャッチした。よく味わうとユフィルも満足そうな顔をした。
暫くすると、少し遠くの方に明かりが見えてきた。それに海も見える。
「街よ!」
「本当だ!あそこにご主人と仲間が居れば。」
そこは、すぐ近くが海に面した港町だった。ここにご主人と残りの兄弟が居れば。三匹は信じるしかなかった。
街の近くまで来て地面に降り立つと、他人に気づかれない場所にユフィルを置いて街の中へ入る。辺りを見てみると、壊れた家がいくつかあり重々しい雰囲気が漂っていた。これもあのドラゴンが世界を変えたのと関係があるのだろうか。三匹の幸運種にはそうとしか思えなかった。ゆっくり歩いていると水路が見えてきた。流れていく方向に辿りながら三匹は進んでいく。と、ここで予想もしていなかった光景が目に入ってくる。
「ねぇ、あれってアクシス兄さんじゃないかな?」
と、桟橋の方へダンボールを運んでいく一匹の幸運種が居た。色は紫色をしている。それに気づいたアクリュが言った。
「え…?でも…お兄ちゃんは確かあのときに。」
そう、確かにあのとき闇最強種に殺されたはず。それは三匹にも分かっていた。
「うわぁっ!」
と、闇幸運種がこけてしまった。
「何やってやがる!早く運べ!」
「ご、ごめんなさい!」
急いでダンボールをまた持ち運ぶ。それは船に運ばれていった。
「もしかしたらアクシス兄さんかもしれないです。気づかれないように船に乗り込むです!」
「でも見張り役が居るわ。あの状況で乗り込むのは困難だわ…。」
船の乗り口には船員が2人見張っていた。エルムの言うとおりあの状況からしたら乗り込むのは難しい。と、ここでアクリュが口を開く。
「あ!僕にいい方法があるよ!」
と、アクリュを主導に三匹は囲まって話し始める。いったいどうやって忍び込もうというのだろうか。
「ここにある箱を使うんだよ。」
気づけばすぐそばに幸運種が二匹入りそうな空箱があった。これで、誰かが入り後をつける作なのか。でも、二匹だけじゃ一匹余ってしまう。
「でも、それじゃ一匹余ってしまうです。」
それに気づいたレッシュが言った。
「そう慌てない。エルム、頼みがあるんだけど…。」
アクリュがエルムに小声で話す。
「うん…そういうことね。わかったわ。」
さて、アクリュが思いついた作戦とはいったい…。そして箱に入ることになったのはアクリュとレッシュに。
「すみません!」
エルムが桟橋に居る一人の見張り役に言う。
「あぁ、何だよ。」
「あの箱を忘れていたの。私じゃ重くて運べなくて…お願いだから運んで。」
自分も船に乗る仲間のように主張して言った。
「ちっ、ったくしかたねぇな。」
面倒くさそうに見張っていた人は箱を持ち上げて船に運んでいく。
「よし、これで全部だな。出航だ!」
桟橋から船が離れていく。ところでこの船、いったいどこへ向かうのか。
「お待たせユフィル。さぁ出発するわよ!」
ユフィルに乗って上空へと羽ばたいて行く。このときエルムは、密かに船に乗ったアクリュ・レッシュを上空から追うことになったのだ。万が一のことがあればホーリーシュートで撃退だ。一先ずは二手に分かれて追跡する作戦だ。
「気づかれないようにね。」
一方箱に入った二匹は。
「なるほど、そういうことだったですか!」
アクリュの作戦にレッシュは感激していた。
「何かあった場合、エルムに助けに来てもらうことにしたんだ。でも…さすがに暗くて何も見えないね…。」
言われてみればここは狭い空間。灯りなんて一つもない。
「それだったら僕に任せるです。」
と、レッシュは指に小さな電撃を作ると、箱の側面に小さく円を描くようになぞりだした。ちょっと焦げ臭い臭いが漂うが、数秒すると小さな穴ができ光が射し込んできた。
「そういうことだったんだ。さすがレッシュ!」
「誉められるほどじゃないですよ。それじゃ早速外を見てみるです。」
まずはレッシュが様子を見ることに。どんな光景が伺えるのか。すると、数メートル離れたところに紫色の身体をした幸運種が居た。
「アクシス兄さんだ!」
「ちょっと見せて…あ、本当だ。何しているんだろう。」
既にあの幸運種がアクシスだと確信を持っていた。本当にあれがアクシス兄さんなら。
と、約一時間ぐらいしてか、船の動きが停まった。どうやら目的地に着いたみたいだ。すると箱の外から話声が聞こえてくる。
「この祠に海溝のペンダントが眠っている。皆の者、くまなく探して絶対に見つけるのだ!」
祠。ペンダント。どうやらこの船に乗っている人たちはお宝探しに来たに違いない。そういえば兄弟達のご主人もペンダントを付けていたはず。何かあるのだろうか。
「チビ、お前はここに残って船の見張りだ。何かあったら承知しないからな。」
「分かっています…。」
「さあ行くぞ!」
船員は紫色の幸運種を船に残して行くことにした。これはチャンスだ。上空から監視をしていたエルムにも伺えた。
そして誰も居なくなったのを見計らって、アクリュとレッシュが箱のふたを開ける。カタカタ!と小刻みに揺れる音がした。と、それに紫色の幸運種が気づく。
「だ…誰?…誰なの?」
少し怖がりながら様子を見る。
「うぅん…よいしょ!っと。ふぅ。」
箱から二匹の幸運種の顔が出てきた。
「うわぁあ!た、助けてー!」
と、紫色の幸運種はビックリしてうずくまってしまった。
「アクシス兄さん僕たちだよ。アクリュとレッシュだよ。」
「え…?…あぅ…アクリュ、レッシュ…うわぁぁん!」
どうやらアクシスに間違いない。よほど一人で居て寂しかったのか、アクリュとレッシュに寄り添った。
「泣かないでください。無事にアクシス兄さんと再会できてよかったです。」
「やっぱりお兄ちゃんだったんだね。よかったわ。」
「エルム!」
と、上空から様子を見ていたエルムも降りてきた。これで兄弟四匹が揃った。残りはあと二匹だ。
「でも、あの時死神の鎌で切り裂かれて、アクシス兄さんは・・・。」
皆が離れ離れになる前にのことだった。確かにあの時ジュノンの死神を喰らってアクシスは息を引取った。
「それが・・・僕にもよく分からないんだ。気づいたら何故か元に戻ってたよ。」
自分でもよく分からない。アクシスは笑みを浮かべて応えた。
「それよりアクシス兄さん、この船で何をしているの?」
隠れて船員の話を聞いていたアクリュがアクシスに問う。
「あ…それは…。」
「どうしたの?隠さずに喋ってよ。」
何かまずいことでもあるのか。兄弟なんだから喋ってとエルムが言う。
「実は…僕騙されてずっとこの船で働いているんだ…。」
「それって、この船に乗っていた人たちって、みんな悪いやつなのですか?」
「まぁ…そうなるかなぁ。あははは。いい仕事だと思ったんだけどなぁ…。」
アクシスは食料など自分が生きていくために必要な資金を稼ぐため、この船で働くことになったようだ。しかし、雇ってきた人間がいい人に見えたのか、それか何かに吊られてここに。
「こんなところに居ちゃだめよ。一刻も早くこの船から逃げないといけないわ。」
アクシスの話を聞いたと分かって、早くここから去らねば。いつ人間が戻ってくるか分からないし、戻ってきたら何かしてくるに違いない。
「で、でも僕、ここから離れることはできないよ。」
「何言ってるですか、アクシス兄さんも一緒に行くです!」
「そうだよアクシス兄さん。他の仲間も捜さないといけないんだよ。」
アクリュとレッシュも同じことを言う。ここに居るより別のところに行ったほうがいい。それに残りの仲間も捜さなければいけない。でも、アクシスは・・・。
「やっぱり無理だよ。僕ここにいるよ。皆は先に行ってていいよ。」
と、そのときだった。バシッ!
エルムがアクシスの頬を思いっきり平手打ちをした。
「え・・・?」
「バカ!どうしていつも悪い方向に決めつけるのよ。やってみないと分からないじゃない!すぐに諦めるの、昔からお兄ちゃんの悪い癖よ!もう知らない!」
エルムは祠があるほうへ走って行ってしまった。
「エルムがアクシス兄さんを・・・。」
「打ったところ初めて見たです・・・。」
思いもよらぬことにアクリュとレッシュは驚いていた。
「エルム・・・。」
第35話「優しい心」おわり
いやぁ・・・頭の中ではイメージできているのですが、どうも
文章が浮かびません。弱点がそこにあるからなのでしょうか^^;
色々と悩んだりしています。
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