青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第36話 捜し物



玉乗り6兄弟の物語

第三十六話 捜し物

『うわぁあん!やめてよぉ!』
と、一匹の紫色の身体をした幸運種が二匹のドラゴンに囲まれている。アクシスだ。一匹は雷亜種の幼竜、もう一匹は氷基本の成竜だ。
『何だよこいつ。全然弱いじゃん。』
『大したことないな。』
二匹はアクシスにひっかいたり、ちょっかいをかけている。
『ボディブロー!』
ドスッ!誰かが雷幼竜に体当たりをした。
『うわぁっ!いててて…何するんだよ!』
『お兄ちゃんから離れて!』
体当たりをしたのは光幸運種、エルムだった。自分の兄がまたいじめられているところを偶然にも見かけ助けに来た。
『くっ…お、覚えていろよ!』
エルムの迫力に圧倒されてか、二匹はその場から立ち去った。
『うぅぅ…エルム…。』
『また怪我しているわ。もう…じっとしてて。』
呆れながらエルムはアクシスにひとときのいやしをかけてあげる。
『あ…ありがとう。』
『お兄ちゃんの弱虫!』
『あ、エルム!…。』
ひとときのいやしをかけてあげた後、すぐにエルムは去っていった。また、お兄ちゃんが。アクシスは攻める気持ちをあまり持てなかった。少しはしっかりしてほしい。いつも軟弱で反抗することができなかった。そんなアクシスを見るのをエルムは嫌っていた。アクシスはエルムの世話になってばっかりだった。もっと強くなってよ。そんなのお兄ちゃんじゃない。でも、本当はアクシスのことを心配していた。

「昔からエルムに世話をやいてばかりいてさ…今でもこんな感じだよ…。」
アクシスは橙色の空を見上げて言った。
「でも、僕はそう思わないです。以前のアクシス兄さんより変わった気がするです。」
レッシュはアクシスが思ってることを否定した。まだ、自分でも気づいていないことや、分からないことがレッシュには分かったのだろう。
「そうかなぁ、だといいんだけど…。」
「もっと自信を持ってよアクシス兄さん。多分そこがアクシス兄さんの悪い癖だと僕は思うよ。」
アクリュも思ったことをアクシスにぶつけた。
「・・・そうだね。もっと自信を持たないといけないよね。よし、エルムを捜して脱出だ!」
「その調子です。」
「お~!」
アクシスに元気が戻った。自分でも分からないことが、二匹が言ってくれたことで分かった気がした。もっと強くなってほしい。エルムもきっとこのことを望んでいるに違いないだろう。
三匹は祠の方へ走って行ったエルムのところに行く。数分後、エルムが居た。と、そこは大きな穴が開いた場所。祠の入り口の岩に寄っかかって顔を隠すように座っていた。
「アクシス兄さん、僕とアクリュはここで待ってるです。あとはアクシス兄さんで何とかしてみせるです。」
レッシュとアクリュはちょっと離れたところから様子を見ることにした。
「うん、わかった。」
と、気を引き締めアクシスはエルムのところに行く。一言ごめんと言うだけでもいいんだ。

「エルム。」
アクシスが呼ぶ。その声に気づいてエルムは顔を少し上げる。
「お兄ちゃん…。」
「ごめん。いっつも世話をやいてばかりいて…。さっきいろいろと考えたんだけど…確かにあれは僕の悪い癖だよ。でも、その答えが見つかったよ。アクリュとレッシュも話してくれたし、これからその癖を少しずつ治していくことにするよ。もう軟弱者なんて言われないようにするからさ。」
今の心境を真剣な表情でアクシスは言った。一気に治すのは難しいから、少しずつ治していくとエルムに伝えた。もっと強くなってみせるよ。と…。
「お兄ちゃん…ありがとう…私もお兄ちゃんを打ったりしてごめんね…。」
「あ、いいんだよ別に。全然気にしていないから。」
さっきのことは気にしなくていいよ。アクシスは笑みを浮かべて言った。これでアクシスの気持ちがエルムに伝わった。かのように見えたが。
「あと…今気づいたんだけど、アクリュはどこなの?」
すると、レッシュのところに居るはずのアクリュが居なくなっていた。いつの間に。どこへ行ったのか。アクシスがレッシュの方を見ると、レッシュはアクシスの方を指さしている。いや、アクシスではない。祠を指さしているのだ。ふっとアクシスが祠の方に目を向けるとアクリュの姿が。気楽な性格は相変わらずだった…。
ツルッ!と、アクリュが滑った。するとアクリュが消えてしまった。
「アクリュ!」
何が起こったのか。三匹も穴の付近に近づく。と、そこには下の方につながる氷の滑り台があった。アクリュが落ちた原因がわかった。地面の表面に氷が張られていて、これに滑って落ちたのだろう。
「ごめんです。つい目を離していたら…。」
「それより早くアクリュを助けないと。」
下の方は暗くてよく見えなくて、どうなっているのかも分からない。
「えぇ…ここを降りるの?僕嫌だよ。」
と、次の瞬間だった。ゲシッ!
「この軟弱者ー!さっき私に何て言ったのよ!このバカ兄貴!」
エルムが背後に回ってアクシスを蹴り飛ばした。エルムに言ったことをもうド忘れしてしまったアクシス。ついつい思わず言ってしまった。これからアクシスの癖は治るのでしょうか。と、蹴られた反動でアクシスが滑ってしまった。
「あわわ!うわぁぁああ!」
アクシスも滑り台を下ってしまった。と、それを見ていたレッシュは。
「あ・・・あははは。ぼ、僕先に船に戻ってるです~・・・。」
「レッシュぅ?」
こっそり去ろうとしたレッシュをエルムは見逃さなかった。
そして…。
「うわぁぁあ!何で僕もこうなるですかぁ!」
レッシュは強引に滑り台を降りることになってしまった。
「全くもう。もっとしっかりしてよね。」
エルムも後を追って滑り台を下って行く。頭の中で凍える吹雪が浮かんできたような気がした。

「痛たたぁ・・・何も後ろから蹴らなくても・・・。あ!そうだ、アクリュは?アクリュ!」
アクシスが辺りを見回してアクリュを捜す。すると、前方に一匹の幸運種が立ちすくんでいた。アクリュだ。良かった、無事だったんだね。でも、何か様子がおかしい。アクシスがアクリュの下に駆け寄る。
「アクリュ!怪我は無い?アク・・・・・・こ、これは・・・。」
「アクシス兄さん・・・この人達さっきの・・・。」
そこで見たもの。それは船に乗っていた船員たち、そしてドラゴンまでもが氷付けにされている姿があった。これはいったい・・・。と、後ろからエルムとレッシュも駆けつけてきた。
「どうしたの?」
「こ、これは・・・!何かあったですか?」
二匹も目の前にある光景に驚いた。
「よく分からないけど、降りた後少し前に進んだら見つけたんだ。氷ドラゴンの仕業の可能性がいちばん高いと僕は思う。」
最初に見つけたアクリュだが、どうやらこの船員たちはアクリュが来る前に、何者かが氷付けにしたのだろう。この仕業をアクリュは氷属性のドラゴンの仕業だと見た。他の兄弟も、これは氷のドラゴンがやったんだと思った。
「途中で強いドラゴンに襲われたに違いないよ。」
何か危険な匂いが漂ってきた。こんなに氷付けにしたドラゴンがどんな竜なのか。兄弟達は気になった。
「少しひんやりしてて寒気を感じるわ。」
辺りを見回すと至る所に氷が張られていた。もしかすると本当に、この祠には氷のドラゴンが住んでいるのかもしれない。すると、レッシュが何かを発見する。
「みんな、見てくださいです。壁に何か文字が書いてあるです。」
他の兄弟達もレッシュが居る場所の壁を見る。
「え~っと…過去の時代より遡り、この世界に時の振り子が現れた。しかし、それは災いをもたらす驚愕の品。呪いを説かぬ限りは三つのペンダントと一頭の竜が必要となる。大地を支え、水面は穏やかに、空は健やかに…。あれ…この文章どこかで聞いたような…。」
すらすらとテンポよくアクシスが読み上げた。しかし、アクシスは気づいた。以前にこの文章と似たような文をどこかで読んだことがある。どこで…。

第36話「捜し物」おわり

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