青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第38話 絶対零度



玉乗り6兄弟の物語

第三十八話 絶対零度

「決まっているだろ。その湖に眠るペンダントを貰いに来たのだよ。世界は我々が手に入れる時がすぐそこまで来ているのだからな。」
「何が何でもペンダントは渡さぬ!立ち去るがよい!」
ゴルドが追い返そうとするが、ルミナードは退く様子もない。
「ならば力ずくで奪うまでよ。ん?」
「こ…ここから先は通さないぞ!」
ルミナードが湖の方へ歩いて行こうとする前に、アクシスが立ちはだかる。
「チビか。そこを退いてもらおうか。」
ギロリと鋭い赤い目でアクシスを睨みつける。ところが、アクシスは一歩も退こうとはしなかった。頭の中でさっきエルムに言ったことを思い出していた。
アクシス「だ…誰が退くものか!絶対に通さないぞ!」
「身の程知らずが。では一つ聞こうか。俺に殺されたいか?」
強気な口調でアクシスは言い返すと、ルミナードは自分にかなう者は居ないかのように、アクシスに質問する。
「うぅ…だ、ダークブレス!」
と、気持ちが抑えきれなかったせいか。アクシスがダークブレスを放ってしまった。無論、そんなちっぽけな攻撃がルミナードに効くはずがなかった。
「もう一度聞こうか。死にたいか?それとも死にたくないか?」
と、いつの間にかアクシスの頭を鷲掴みにして持ち上げていた。一瞬のできごとで、何がどうなったのか分からなかった。
「はい…死にたくないです!死にたくないです!」
間近で雷最強種の赤く鋭い目を見て怖くなったのか。アクシスはおとなしく降伏してしまった。するとルミナードはアクシスに攻撃をせず、ゆっくりと下に降ろした。
「うぅ…やぁっ!」
ザクッ!ルミナードがアクシスを降ろした瞬間だった。見ていたアクリュが、剣を使ってルミナードの足に切りかかった。だが、足を斬りつけたあとすぐ、剣が折れてしまった。
「う…うそ…僕のソードが…。」
「ほぅ。貴様は俺に殺されたいらしいな。」
と、指一つでルミナードは電撃を溜め込む。ボルトストームだ。金属性は対雷属性とは弱点になる。アクリュが危ない!
「そのまま消え失せるがいい!ボルトストーム!」
ルミナードがアクリュにボルトストームを放った。
「シールド!…うぅ…うわぁああ!!」
ギリギリのところでシールドを張ったが、相手の魔法力が増さっていたため、アクリュのシールドが壊されてしまった。
「アクリュ!」
「うぅ…。」
相当な電撃を浴びたせいか、一撃でアクリュは気絶してしまった。
「愚か者が。さぁ、おとなしくペンダントを渡してもらおうか。」
残ったエルムとレッシュはルミナードの近くから離れた。相手は最強種。さっきの攻撃を見てかなう相手ではないと確信した。
「むぅ…。」
「どうしても渡さないというなら、お前も俺の電撃を食らってもいいんだぜ?」
既に右手に電撃をため込んでいる。と、ゴルドから予想外な言葉が飛び出す。
「わかった…ペンダントを渡そう。」
「え…!」
それを聞いた幸運種たちが耳を疑った。
「分かればいいんだ。さぁ、ペンダントを渡せ。」
「暫し待つがいい…。」
ゴルドが湖の方を向く。すると、胸にある宝珠が青く光り出すと、湖が真っ二つに割れ滝のように流れると、一本の道が表れた。その先を見ると宝箱があった。あの中に海溝のペンダントが。このままルミナードに奪われてしまうのか…。
「あの中にペンダントが入っている。」
「ずいぶんと素直だな。では頂いていくぞ。」
ルミナードが一歩、一歩とゆっくり歩いていく。そして、宝箱の前にたどり着き、持ち抱えた次だった。
「地底の湖に眠るがよい!」
二つに分かれていた湖の滝が、道をふさぐと動じにルミナードを呑み込んだ。
「ダイアモンドダスト!」
ゴルドが氷の魔法技を放つと、湖が氷のフィールドへと姿を変えた。
「やったです!あの雷最強種を封じ込めたです!」
これで雷最強種を倒した。誰もがそう思った。
ミシミシ!と、氷にヒビが入る音がした。こんなところでそう簡単に死ぬはずがなかった。
バリーン!!ものすごく氷が砕け散った。真ん中の方に大きな穴が開くと、体中電気を走らせるルミナードが出てきた。
「少しは考えたみたいだが、こんなことで俺を倒せると思ったか?笑わせてくれるぜ、ふはははは!」
「我のダイアモンドダストが効かぬとは…くっ…。」
湖を凍らせてルミナードを殺る作戦だったが、見事に打ち破られてしまった。普通の竜なら凍死してもおかしくはないはずなのに…ルミナードだけは違っていた。
「もう貴様等に用はない。ペンダントはこの俺が手に入れた。ここが貴様等の墓場となるがいい!グォアアア!サンダーシュート!」
片手を振り払うだけで、ものすごい電撃を作り出した。と、それはゴルドの方へと飛んでいく。バリッ!何度か弾ける音がしたが、ゴルドはシールドを張ることに成功した。しかし、やはりこの技も魔法力を大きく上回り、跳ね返すことができず防ぐことしかできなかった。
「ふっ、では次で消えてもらおうか。」
ルミナードがまた電撃を溜め込む。今度は片方だけではなく、両方の手に電撃を溜め込む。まさか、この技雷最強のわざとも言われている、サンダーボルテージなのか。と、そのままゴルドに放つかと思いきや、ルミナードは頂点にめがけて電撃を放った。この祠ごと吹き飛ばすつもりだった。
ドーン!と大きな音がすると、上から瓦礫が落ちてくる。
「ターンエンドだ。もがき苦しみながら死んでいくんだな。ふはははは!」
と、ルミナードは瞬時に消え去っていった。海溝のペンダントが奪われてしまった。
「このままじゃ僕たち、瓦礫の下敷きになって死んでしまうです。」
「諦めてはならぬ。幸運種たちよ、我の背に乗るのだ!」
ゴルドが幸運種たちに自分の背に乗るように言った。それを聞いて幸運種たちはゴルドの背中に乗る。
「アクリュ、しっかりして。」
「うぅ…。」
何とかアクリュも兄弟たちに支えられながら、ゴルドの背中に乗った。まだ、怪我がひどいようだ。
「絶対に放すでないぞ!」
と、ゴルドは壁に向かって突進する。何をしようというのか。氷塊を纏って体当たりをすると、壁が壊れた。と、そこへ下に続く道があり、下の方へ急ぐと水があった。勢いよく飛び込むと、今度は周りに強い幕を作り出し幸運種たちを包み込み、息ができるようにした。
「うわぁぁ!僕たちどうなっちゃうの…。」
「大丈夫ですよアクシス兄さん。もうすぐで地上に出られるです。」
不安がったアクシスをレッシュが励ます。
暫くすると、明るいところへ抜け出た。でも、まだここは水の中。上を見上げると、射してくる明かりがあった。このときみんなは、さっきの湖から海へと出てきたのだ。いわば非常口を通ってきたと言ってもいいだろう。そして、地上へと上がると、近くに船がある場所に上がってきた。
陸地に寄って、まずは怪我がひどいアクリュから、一匹一匹と上がっていく。と、体力を使いきってかアクリュは倒れ込んでしまった。それを見たエルムがひとときのいやしをかけてあげる。両手に青白い光の球体を作り出し、アクリュにかけてあげる。
「ごめんなさい…私たちのせいでペンダントが奪われてしまって…。」
エルムはゴルドに謝罪した。大切な一品を悪いドラゴンに奪われてしまったことを、自分たちのせいにした。
「いや、謝るのは我にもある。争いにそなたたちを巻き込んでしまい、怪我までさせてしまった…。あのときに守っていればと…。」
どちらもどっちだった。でも、本当に悪いのはあのドラゴンだ。ペンダントを奪った結え、祠まで壊されてしまったのだから…。
「グルルル…。」
すると船の陰から弱った唸り声が聞こえてきた。
「ユフィルです!」
だが、様子がおかしい。かなりヨロヨロとしながらこちらに歩み寄ってくる。よく見てみると、翼の根から出血しており、体中傷だらけになっていた。ユフィルもその場で倒れ込んでしまった。
「ユフィル!…ユフィルしっかりして!今すぐ治してあげるから!」
慌ててエルムがユフィルの下に駆け寄る。
「グルルル…。」
意識はまだしっかりしている。傷口のところに青白い光を当てる。
「き、きっと、あの黄色いドラゴンがやったんだよ。」
こんなことをするのはもうあのドラゴンしかいない。アクシスが言った。ルミナードが祠に侵入するまえに、ユフィルが見つけて追い払おうとしたところを襲撃されたに違いない。知らないうちに、こんなことになっていたなんて思ってもいなかった。
「ルミナード…絶対に許さないわ…。」
内心エルムに怒りがこみ上げてきた。こんなことをされて、黙っておくわけにはいかない。
「やつの動きを一刻も早く突き止めなければなるまい。このままでは大変なことになってしまう・・・。」

第38話「絶対零度」おわり

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